ショートショート作品集

リウノコ

猿と檻

 檻の外側で、俺はあぐらをかいていた。

 鉄格子を隔てた向こうでは、猿どもが笑いながら歩いている。意味のわからない、汚い声を出しながら、足音を無闇にドタドタ鳴らしている。

 俺は睨み付ける。しかし、猿どもはそれに気付かない。

 どんなに自分たちの方が偉いと思っているのだろうか。獣臭さとその傲慢さに顔をしかめるしかない。

 猿どもは俺を指さし、歯をむき出しにして鳴く。バカにしているのだろう。

 ーー奴ら、どっちが外でどっちが内側かもわからないのか。 

 俺を檻に閉じ込めたと思っているらしいが、実際は逆だ。

 どうして食料が減らないのか、食っても食っても補充されるのか、奴らは不思議に思わない。俺が毎日、餌の補充をしていることに、猿どもは気付かない。お山の大将を気取って、自分たちが檻に入っている方だとは考えもしないのだ。

 バカだな、と俺は奴らを見下す。


 ーー今日も、減らない食料を食べながら。

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