応援は誰がために

貴方は、「ロッキー・ホラー・ショー」という映画をご存知でしょうか?


ミュージカル仕立てのイギリス映画(1975年)で、とてもマニア好みの作品です。

10代の頃、池袋にあった名画座にて、私はこの映画を鑑賞しました。

そして……そのとき初めて「応援上映」に遭遇したのです。


「応援上映(要検索ググ)」とは、映画館側の特別な計らいで、観客がアクティブな応援をする上映です。大声で声援をあげたり、突っ込みしたり、サイリウムを振ったりする、ファンには楽しい先鋭的イベントと言えるでしょう。

「ロッキー・ホラー・ショー」は、観客がそのような過激な応援をする「参加型映画」の元祖だったのでした。


若かった私はそのとき、何も知りませんでした。

映画の大まかな内容は知人から聞いていましたが、その知人も劇場で実物を見てはいませんでした。情報誌も映画館も、何もコメントしていませんでした。厳密に言うと、それは「公式に認められた応援上映」ではなく、その過激な応援はマニアックな観客が勝手にしている習慣だったのです。多少の黙認はしていたと思いますが。


想像して見てください。

貴方が普通に映画を見ていたら、他の観客がいきなりライターの火を掲げるとか、歌を合唱したり、紙吹雪を撒いたりしたら、どう思いますか?

怒る? 帰る? それとも周りに合わせて応援する?


そのときの私は、陽キャのパーティに紛れ込んだ陰キャのごとく、ただただ戸惑ったまま、紙切れを頭にくっつけたまま、苛立ちを抑えて映画に集中することに必死になるだけでした。ノッていた他の観客たちにとって私は、空気の読めない奴に見えたかも知れません。

ずっと後になってから、少しは周りに合わせて応援するほうが楽しかったよなあ、そして、映画の主人公たちが置かれた状況と奇妙にシンクロしてたなあ、と思ったものです。

ネットのない時代は、そういう新鮮な体験(ほめ言葉)に溢れていました。



さて。

カクヨムユーザーの中には、応援システムについて複雑な感情を持っているかたがおられると思います。

「読者」としては、ホントに応援したいときもあれば、強制されているような気がして素直に応援できないとか、気難しそうな作者さんなので迷ってしまうとか、かと言って応援しないほど気に入らないと思われたくもない、と言った色々な事情があると思います。

また、「作者」としては、応援が少ないから面白いと思われていないのかなあと不安になったり、これは応援のふりをしてバカにしているのかと怒ったり、やはり色々と考えてしまうことがあると思います。


今回は、そんな「応援ハート」の有る無しがどうしても気になっちゃうかたに向けたテキストです。別にああしろとかこうしろとか言うのではなくて、「私」はこう思うことにしている、という事実を語りたいと思います。

参考にしていただけたら幸いです。



まずは「読者の事情」を。


私は、本当に面白い長編作品には逆に応援ハートを付けにくいことがあります。なぜなら、物語に没入しているときに、いちいち「ハートを押す」のは煩わしいからです。職場の昼休みなど、少しでも読む時間が欲しいときも押しません。応援コメントも同様です。


私がハートを付けない場合、ハード的な理由もあります。

私はタブレットを持っていますが、その通信環境については無料Wifiを使用しています。それでカクヨム作品を読むときは、オンライン時にアプリ(カクヨムアプリではありません)でまとめて取込み、オフライン時に読んでいます。当然、読んだときの応援はしたくてもできません。


また、よくあることですが、他の作品を追っかけるのに夢中になって、応援していた作品を読むことを中断してしまうと、再開したとしても心情的に応援しにくくなります。自分勝手すぎるような気がするのです。


上記のような事情でも、後から応援をすることは可能ですが、義務感で仕方なく応援するように感じて結局個々のエピソードは応援しないケースが多いのです。

レビューは後からでもしますが。


そして、内容はとても面白いのだけれども、個人的には友だちになりたくないタイプの作者さんとか、他の読者さんが山のように応援している作品には、やはり応援はしにくく感じます。その必要性を感じないからです。これはレビューも同様です。


だからと言って、応援イコール良い評価、とは限りません。

私は、どうしても「突っ込み」や「野次」として短いコメントを入れたくなる作品があります。私としてはそれは「読者にエモーションを与えた作品」として、ほめ言葉の一種のつもりなのですが、作者さんによっては悪口に捉えるかたもいるはずです。


また、貴方はそんなことをしたことがないと思いますが、私も数回ことがありますが、応援コメントを非難に利用する場合があります。

また、現在は対策が取られていると思いますが、不正なボットを使って応援するケースもあったという噂も耳にしています。


また、私がごく最近、経験した(というか迷惑かけたというか)ケースで、私のコメントに、な問いかけやな自分語りが含まれているとして非常に気分を害されたらしいかたがいます。私は「応援コメントは(本レビや返信もまた)自分の作品である」という信念で書いているので、人によってはカンに触ることもあると思うのです。謝罪(らしきもの)はしましたが。

まあ、私はその作品の最初の本レビも書いていて、そちらは作者さんの反応があった時点では、削除されずにさらに作者さんの「いいね!」も貰えたので、私のスタイルを全否定されたのではないようです。


付け加えるなら、あくまでも想像ですが「応援はリアル拍手と同じもの」と考えて、礼儀として必ず「ハートを押す」という素晴らしい読者さんもおられると思います。

また、積極的に応援することは、自分の中の「盛り上がり」を高めることであり、より作品を楽しむことに通じるのではないでしょうか。


あとは、そう……何もできなくなるようなアクシデントは、いつでも誰にでも起きる可能性があります。

こんなご時勢、みなさまもご自愛ください。



次は「作者の事情」。


作者さんの中には、「ランキングやコンテストに影響しないから(未検証)」応援を軽視する人がいるようですが、私自身は自作品をぜひ応援していただきたい、と常々思っております。


また、どれだけ否定的な応援コメントを付けられたとしても、私は今まで一度も削除も無視もしたことはありません。それが物理的に可能な程度の「人気者(笑)」と言ってしまえばそれまでですが、「枯れ木も山の賑わい」だと思うし、返信を考えるのも楽しいのです。

ただし、明らかなネタバレやシャレにならない個人情報を書き込まれたときは削除しようと思っています。


ああ、返信してみたら、向うから消してきた、というケースは結構ありますよ。

そのかたは、私の拙い反論に、めんどくさくなったのか、呆れたのだと思いますが。


作者さんによっては、応援コメントや本レビのうち、否定的に感じたものを、片っ端から削除する人がいます。当然、そのかたの作品ページには、お花畑のように美辞麗句しか並びません。


まあ、「盛り上げる応援」が欲しい気持ちは判ります。

歌舞伎の「〇〇屋っ!」とか言う声かけもそういう応援の一種ですね。

重要文化財クラスのプライドがある作者さんには、必要なものだと思います。

なお私自身は、「自分に都合の悪いことを隠蔽する人と」ことのほうがプライドが傷つく(ウソつきのくせに)タイプです。


「突っ込み」や「野次」と感じるレベルの応援コメントを貰ったら、私はそれは「ほめ言葉」として捉えることが多いのですが、すべての作者さんがそうであるわけはありません。何かの逆鱗に触れてしまい、怒声のような返信を返される(返したくなる)なんてこともあるでしょう。

応援コメントを許可する設定ならば、ある程度の行き違いはリスクのうちだ、と私は思っています。映画の興行会社がヒットとファンの暴走を計りにかけて応援上映をするように。


そして、私はリアル知人に投稿していることをアピールしているのですが、彼らのほとんどはカクヨムに登録しません。マジョリティである彼らは、カクヨムを得体の知れないサイトのひとつだと思っているからです。

読んでくれてはいても、口頭で面白いと言ってくれてはいても、システム的に彼らは応援のしようがありません。


また、検索の結果としてカクヨム外部から作品にたどりつき、登録せずに読む人もいるでしょう。とある実用ノウハウエッセイで、PV数が合計約38万個もあるのに、応援数は約300個、レビュー数が40数個というアンバランスな作品を私は見たことがあります。この作品は、テーマ別の話数ごとにPV数の極端なバラツキがあるために、誰かの不正操作イタズラは考えにくく、38万の読者のかなりのかたがたが「ゲスト」であると推察できます。



以上の事実から見えてくることは、以下のようなことです。


※ご注意 すべて私の単なる意見に過ぎませんよ!


読者として。

応援コメントは作者さんの応援になるとは限らない。

だから、応援は結局自分のためにしか過ぎないので、してもしなくてもよい。

また、応援が多い作品でも、自分に合うとは限らない。


作者として。

応援が無くても、つまらないと思われているとは限らない。

また、いままで応援してくれていた読者さんが応援しなくなっても、見捨てられたとは限らない。

応援されても、応援されているとは限らない。


要は、応援と面白さはそれほど関係がないので、深刻に考えないで、テキトーに応援したり応援されたりすればよい、と私は思っているということです。

「応援上映」も良し、ひとり静かに楽しむもよし。どちらも、読者として、そして作者として、好きなようにすれば良い、と思うのです。


でも……


どう考えても、ライターに火をつけるのはです!

「炎上」には気をつけたほうがいいですよ!


さて、次回は。

カクヨムにて「ハズレを引かない方法」について、参考になるかも知れないことを語りたいと思います。


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