四月 日暮

そう言いながら。泣いていた。

先生は、そうか、と言い俺の肩を優しく叩き、体育館をゆっくりと出て行った。

俯いていた俺は、先生の表情を見る事は出来なかった。

俺は、チャイムを2回聞き、目を擦り、深呼吸して。

「失礼しました。」

誰もいない静かな体育館に声が響き、

浅く礼をしてから、ゆっくり歩き出した。

教室に戻ると、教卓の前に先生はいなくて、先生が配ったのであろうプリントが俺の机の上はあった。

みんなはそれを半分程解いていて、終わった人もいたようだった。

俺はそのプリントを机の中にしまい、机の上で腕を組み、頭をそこに乗せた。

問題を解く気になんてなれやしなかった。

そのうち先生が後ろのドアから俺を呼んだ。

廊下に出ると先生は俺に言ってくれた。

「今日はとりあえずこのまま授業だそうだ。次、音楽だろう?俺、暇だからさ。

一緒に教室残ってようぜ。」

友達のように。授業を抜け出すかのように。

先生はしゃがんで、俺と目線を合わせて。

歯を見せて、まさににかっと笑った。

それから、クラスメイトはみんな音楽室に移動していった。

俺と先生は教室で窓際の椅子に座っていた。

先生は窓の外をずっと見ていた。

俺はその先生をずっと見ていた。

教室の電気は消えていて、外からの光が先生の横顔を照らしていた。

ずっと外を見ていた先生が急に俺を見て、口角を少しだけ上げて、一文字ずつ丁寧に言葉にしてくれた。

「ほんとうに腹が立つよ。」


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