【恋愛】晴れのち雨のち宇宙猫

お題「宇宙」「告白」「雲」「コタツ」+「猫」

ジャンル指定は無し


五題噺になってしまいましたが、こちらに載せます。

日常ファンタジー&学生同士の恋愛。

――――――



 新種の宇宙猫が発見されました。


 今朝のニュースで、そんなことを言っていた。

 見た目は普通の猫と変わらないけれど、コタツの中で温めると空気のように軽くなるのだという。

 どうりで最近、空に猫が浮かんでいるわけだ。


 今日の天気予報は、晴れのち猫雲のち小雨。

 空にはたくさんの猫たちが浮かんでいる。

 学校の渡り廊下からぼんやり空を眺めていると、同じクラスの男子に声をかけられた。


「猫雲が好きなの?」

「うん。可愛いし」

「そっか。俺も好き」


 それだけ言うと、彼は私のとなりに並んで猫雲を見上げた。

 青空の中、猫たちは大きなあくびをしたり、念入りに毛づくろいをしたり、のんびり寝そべったりしている。


 ところが、西の空から押し寄せた雨雲が一気に広がり、小雨がぱらぱらと降り始めた。

 宇宙猫は水に弱い。

 雨に濡れて重くなり、一匹、また一匹と、地上に降ってくる。


「あーあ、落ちてきちゃう」


 空から降ってくる「にゃー」という鳴き声を聞きながら、溜息ためいき混じりに言う。

 次の瞬間、一緒に空を見上げていた男子が走り出した。


「よっ、と」


 なにをしているの、と問う暇もなく、彼は器用に一匹の猫をキャッチした。

 その腕の中に落ちてきたのは、毛並みの美しい白猫だった。

 彼がそっと手を伸ばすと、白猫は嬉しそうに目を細め、てのひらに額をこすりつけた。


「その子、どうするの」

「しばらく家で面倒を見ようかな。このままだと野良猫になっちゃうし。また晴れの日に空へ帰すよ」

「えっ? 家にコタツがあるの!?」

 食い気味に尋ねる私に、彼は一瞬ぽかんとして、それから楽しそうに笑った。

「うん。よかったら遊びに来る?」




 その二日後。

 しとしと降り続いた雨がようやくみ、約束通り私は彼の家へ遊びに行った。


 コタツをめくると、白猫はするりとその中に入った。

 そして綿菓子のようにふわふわと膨らんでゆく。タイミングを見計らってコタツを持ち上げれば、白猫はふわりと宙に浮かんだ。

 そのまま、大きく開け放った窓からゆっくり外へ出て、青空へ吸い込まれるように高く昇っていった。


 私たちは、その様子をいつまでも眺めていた。




 それから何度も、私たちは猫を空へと帰した。

 猫たちに名前をつけるうちに、顔見知りの猫も増えた。空を見上げながら「今日はあそこにしらたまがいるね」なんて話す。

 そんな他愛もない日々が楽しかった。


 そして、最初の猫をキャッチしてから一ヶ月後。


 私は彼から告白されることになる。

 その様子を語るにも宇宙猫の存在が欠かせないのだけれど、それはまた別の機会に話そうと思う。

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