終わりなき後の祭り

土萌真

プロローグ 新・生活

 新しい一年を迎える時に誓った。もう二度と……グレたりしないって。


「ちょっと、何ニヤけてんの!? 気持ち悪い」

 新・生活部の教室で二人の女の子が何やら遊んでいた。


「ふっふふふ、我の勝ちだな。食らえ、マナをチャージして『ブロンズ・ドライブ』、召還!」

 と勢い良く、カードを出す。

「……何! えっと、これ何の効果があるの?」

「ふっふふ、ただのマナを増やすだけ」

「なっ、何よそれ!」

 二人の女の子はカードゲームに夢中になっていた。

 どうしてこんな事になったのか、俺達は『新・生活部』と言う部活で、人から依頼された事をこなして行く部活。

 さらに、場に馴染めない人を馴染めさせる目的も部活の一環。

「一時が……おい二人共、授業が始まるぞ!」

「えー! まだ始まったばかりなのに~」

「ほら、つかさ! 行くよ」

「むーっ! めぐみの真面目星人!」

「誰が、星人よ!」


 富崎めぐみと亜久刃あくばつかさ。この二人は『新・生活部』の部員である。

 この二人と部活を立ち上げてから半年、もう慣れ染めて来た。

 そのまま平和であるようにと願うばかりだ。


 『英龍会』のいざこざはまだ続いているが、どうにかしないとな。


 半年前はこんな事をするなんて……微塵も思っていなかった。


「ちょっと……何しているの!」

「あっ、今行くよ」

 全く少しは先輩を敬えよ。

 本当……マイペースだな。

 初めて会った時は……失礼千万だった。

 富崎めぐみ、この上なく、人を見下す。そう言う奴だった。


 半年も経てば印象も変わるか。



「先生にお願いがあります!」


「何だ……藪から棒に」

 職員室で大きく叫んだ生徒に驚いた先生。

「すいません……新しい部活を作りたいんですけど……良いでしょうか?」

「何だ、そんな事か。ビックリした。てっきり、また暴力事件を起こしたんだと思った」

「あはは……」

 そんな事もあった。

「しかし、お前が部活か……どう言う風の吹き回しか」

「もう良いじゃないですか。一年も経てば変わるもんですから……でっ、どうなんですか?」

「うん、何が?」

 微笑みながら応えた。

「だから、新しい部活を作るって言う話ですよ。ちゃんと聞いています」

「あーそれは。別に構わないが。一体何の部活だ?」

 先生は頬を掻いて問い掛けた。

 流石の先生だ。話が分かる。

「人の為になる部活。それが『新・生活部』です!」

「……」

 先生は固まった。

 意味も分からないのか、首を傾げた。

「あの先生……」

「いや、はっははは! すまない、意味が良く分からないのだが……」

「そうですよね。じゃ具体的に言うと、場に馴染めない生徒を場に馴染めさせる部活です」

「ほう~つまりコミュニケーションを高めようとする部活か」

「はい、平たく言えばそうです」

「ふん、お前がね」

 先生は不敵に笑った。

「あの素行の悪い生徒が、人の為にね~一体何があったのやら~」

「……そこは、先生を見習って」

「ふん~まぁ良いけどさ。部活の申請をするには最低でも三人以上居ないと部は作れないぞ。そこんとこ、分かってるのか」

「はい、分かっています。これから捜して行きます」

「やるからには投げ出さない事、良いな。そして中途半端も駄目だ、良いな」

 手厳しく言う。

「分かっています」

「しかし……もう直ぐ入学式だ。まぁ良い時期だ。まさかと思うが……この日に合うように言った、って事かな」

「そうですね。新しい季節に新しい一年。これから頑張ろうかと」

 もうあの頃に戻りたくないから。

「そうか、じゃ部は『同好会』として上に通して置く。さっきも言ったが、部員は三人以上必要。これを忘れるな」

「はい、お願いします」

 これでやっと。

 嬉しそうにガッツポーズを取る。

「嬉しいのは分かるが、まずは部員だ。ったく、気が早いのは変わらんな、お前は」

「すいません、つい。浮かれて」

「部が出来た時の顧問は私だから」

「えー!」

 先生は高笑いをし、「頑張れよ」と言った。

「夜神」

「はい!」

「青春は一度っきりだ。悔いのないように頑張れ」

 先生はナイスガイポーズを決めた。

「はい、ありがとうございます!」

 夜神聖夜は頭を下げた。そして職員室を出た。


 東京にある一高校。明日は入学式だ。

 富士美高校、学校生活始まって以来の大忙しだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る