兵器を知らぬ生き物達

緋色 刹那

「戦闘機のように飛びたい小鳥」

 小鳥はずっと夢見ていた。

 あっという間に空を飛んでいく、名も知らぬあの大きな鳥のように飛びたかった。


 仲間達は

「あれは鳥じゃない。戦闘機だ」

「あんなに速く飛ぶのは不可能だ」

と言ったが、小鳥は戦闘機が鳥だと信じ続けた。

 小鳥にとって、翼を持っている生き物は全て鳥だった。


 小鳥は今日も飛び続ける。

 その身がどれだけ傷つこうとも、決して翼を止めない。


 遠くから轟音が聞こえた。

 小鳥が音のした方を見ると、あの名も知らぬ鳥の一羽が回転しながら地面へ落下していくのが見えた。

 戦闘機は直撃した瞬間に爆散し、炎を上げて燃えていた。


 その様子を空から見ていた小鳥は、「死が近づくと自ら炎に包まれ、灰の中から復活する鳥」のことを思い出し、戦闘機の正体がその鳥なのだと思った。

「あいつは不死鳥だったんだ! だからあんなに飛んでも、ちっとも体が壊れなかったんだ!」


 小鳥は落下した戦闘機の近くに生えている木の枝へ降り立ち、戦闘機が蘇る瞬間を待った。

 しかし戦闘機を燃やしていた炎が消え、機体が灰に変わっても、戦闘機が元の姿に戻ることはなかった。


 待っていた小鳥も、今までの無謀な飛行が祟って、日に日に弱っていった。

 小鳥は最後の力を振り絞って、灰になった戦闘機のそばへ降り立った。戦闘機の機体は風雨に晒され、ボロボロに朽ちていた。

「ねぇ、僕も君と一緒に灰に包まっていれば、不死鳥になって生まれ変われるかな? もし僕も不死鳥になれたら、一緒に飛んでくれる?」

 戦闘機は何も答えなかった。それでも小鳥は満足だった。


 まぶたを閉じると、自分も戦闘機と同じ大きな翼を広げ、力強く大空を駆ける姿が思い浮かんだ。

 隣には、元のピカピカの姿で灰から蘇った戦闘機が並走していた。


(終わり)

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