第三話

 シキ。わたしたち四人で作ったロボット。四人の名前に季節が入っていることから、名前を四季シキにした。

 シキの中にはオリジナルのAIが入っていて、本当に子供のように色々なことを学習させていた。そして、ウイルスに感染する直前には、完全に人と区別が着かないほどにまで成長をしてくれた。

 だから、あの日、突然暴れだし、自らを壊してしまったシキにわたしは心を痛めていた。たぶん、他の皆もそうだったんだと思う。

 これでまた、五人一緒に……


「ハジ、メ、マシ、テ。ワ、タシ、ノナ、マ、エ、ハシ、キデ、ス」


 けれど、シキの途切れ途切れの、感情の籠っていないその言葉にわたしもフユも、言葉を失った。


「その、ゴメン!あの、ね。本当はちゃんと直すつもりだったんだよ?でも、身体はできても、中はバックアップを取ってなかったから……。アキ、本当にごめん!」


「でも、一からまた育てれば同じようになると、思うし」


 ナツとハルの言葉は途中からわたしの耳には届いていなかった。だって、そんなこと、どうでもいいから。今、ここにシキがいる。それだけで十分だったから。だから、


「二人とも、ありがとう」


 笑顔でお礼を言った。


「……先祖返り」


「へ?」


「……データの保存などをしておらず、古いバージョンのものになることを先祖返りと言うらしい」


「セン、ゾガ、エ、リ。フ、ルイ……」


 フユが聞きなれなかった言葉の説明をし、シキがおうむ返しのようにその言葉を繰り返す。本当に昔に戻ったみたいだった。


「じゃぁ、その、先祖返り?しちゃったシキと一緒にこれからまた、みんなで色んなことをしよー!」


 ナツが元気に言うと、皆が笑顔になった。けれど、その直後、シキに異変が生じた。


「……データ、解凍。オンライン、接続。ダウンロード、開始。データ解析、完了。修復、開始。、完了。アップロード、拡散、完了まで後、二十、十九、」


 急に流暢に話し、不穏な言葉を連ね、カウントダウンを始めた。その原因を即座に理解したのはフユだった。


「先祖返りではない!蘇りだ!シキの中にはまだ、あの時のウイルスが残っている!そして、今、それを改悪したものを全世界にばらまこうとしている!今すぐ、シキをこw……」


 きっと、壊せ、そう言いたかったんだと思う。でも、自分達の子供を二度、失うことはわたしたちには耐えられず、誰一人それを理解しながらもできなかった。そして……


「三、二、一、完了」


 全てが完了してしまった。

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