第27話 二人目の狐横丁

 高坂君がカフェオレを飲んでいる時に、

「信太さん高坂君も此処に来られる様に出来ないの?」

「そうね直ぐにと言う訳には行かないけど出来る様に進めるわ、ただ神様に会ったとか見たとか誰にも言わない事、キメラが神様と会っていることも」


 高坂君すごく緊張してコクコクうなずく。

「信太さんわたしお母さんに神様に会ったって言っちゃった」

「キメラのお母さんは良いのよ神も仏もよく理解されてるでしょ、お社が有ったころはよく遊びに来ていた、覚えているわ」

「えー、あっ神様は年齢は人と違うもんね、興津おきつ姫なんて幼女の時も有るもんね」


 信太さんは自分のお腹をポンと叩いてから、

「でも私は他の神とは違うの、どっちかって言うと妖し、おふだが戻って来ると他の神みたいにこの体から抜け出せると思ったけどどうも違うみたい、元々私はこの体で生まれた様な気がするの、体を持って生まれてくるって普通なら妖しなのよ、人が何百年と生きてたらもはや人でもないしね」


 高坂君はポカンと口を開けて固まった。

 軽く肩を叩いてみる。

「えっと、人でなし?」

「コラそんないい方したら悪い人みたいじゃない、私の人生の恩人なんだから変な風に言わないで」

「あっで、でも人じゃ無いって???」

「言ってなかったっけ神様なの」

「かか神様!」 


 信太さんちょっとイラッかな、眉がピクピク。

「そんなに驚かない、私なんて大した神じゃないんだから、そんな事で驚くようじゃここに入れないのよ」


 高坂君しょぼん。


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 商店街への出口、高坂君を置いてけぼりにしない様しっかり腕を掴む。

 もしここではぐれたりしたら取り残された高坂君はどうなるのか想像が付かない、今度信太さんに聞いておかねば。


「手を離しちゃだめだからね」

「う、うん」


 ゆっくりと足を踏み出す、一歩二歩、無事二人揃って商店街へ。

「五來さん、、、」


 高坂君が腕を引き抜いた、同じ中学の上級生たちがこっちをちらっと見て通り過ぎて行った。


 私はそんなに気にしてないが(恋愛感情未発達)高坂君は気になるらしい。

「あっ一緒に出てこないと心配だから力入っちゃった」

「う、うんゴメン」

「ともかくお社再建の話が有ったら賛成するように言っておいて、それから今日の事は誰にも言わないで、言ったところで高坂君が面倒な事に成るだけだから」

「そうだねそんな暇が有ったら勉強しなさいって事に絶対なる、姉妹にもバカにされるし」

「そうだよ、言いたいことが有ったらお寺に来て、大抵人は居ないから」

「それはそれで、、、」


(私にはお墓が不気味とか一切思いもつかないので<二人だけ>が気になるのかと思った)

「五來さんは、、、お墓が怖いとか思った事は無いの」

「うん無いけど」

「ぼ、僕は何だか薄気味悪くって、、、」

「ああ霊とか、考え過ぎまず出会わないね、お墓って言うのは基本残された人のための物なの、天国から見守って下さいとか、何とかやっていくからとか、中には親不孝子不幸してごめんなさいとか、お参りする人が心安らぐための物なの、だってさあ霊とかがほんとに宿るなら野ざらしに出来る?お盆とお彼岸さえお参りしたら安らかに眠ってくれると思う、それなら家に置いておく方がよっぽどいいと思わない」

「あ、ああ確かに」

「家に仏壇も無くて外に居てください、何て考えないでしょ、『心の中に居てください』これで良いの、でも形あるものに手を合わせたいって気持ちも有ってね、それが位牌だったり仏壇だったり、無ければ形見でもなんでも良いのよ、ご先祖様に感謝します、生まれて来てくれた子供に感謝します、それで良いの」


 高坂君は少し黙ってから、

「ご先祖様に感謝か、そう言う事考えないからおかしな事考えちゃうんだ」

「あっゴメンいつの間にか仏教伝道師みたいになってた、やっぱり私は尼さん確定だね」

「えっお寺を継ぐって事?」

「多分ね、だって私しかいないから」

「そうなんだ、僕なんてまだ何にも考えてない」

「それが普通でしょ、家業を継ぐって事が普通じゃないだけ、それとね『葛の葉』でも働くの」

「あっそれで手伝ってるのか」

「うん、信太さんて体が有るのが無理な様な気がするの」

「えっ???」

「ああ今の無し、とにかくお店を頼まれてるし、やりたいんだ」

「う、うん僕も何時でも行ける様になりたい」


 分かれ道でサヨナラした途端急に不安になった、信太さんは直ぐには何も変わらないと言ったけど、もしかしたら本来の神の姿に戻ってしまわないだろうか、そして喫茶店を止めてしまわないだろうか。


 そんな事を考えてたら足が止まった、振り返って駆けだしていた。

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