#3 流行りの帽子

ピンクのリボンがついた麦わら帽子を

その子は嬉しそうに被っていた


夏風に靡くピンクが映えて

みんな「似合う」と褒めていた


ある日その子は隣街で流行りの帽子と出会った

誰もが羨むその帽子に

心震えて目を奪われた


その子は自慢の麦わら帽子を質に入れて

流行りの帽子を被った


「かっこいい帽子だね」

街のみんなも最初は褒めていた

でもどこか、あの麦わら帽子が恋しかった


その子はさらに次の街で稀少な帽子を見かけた

すると流行りの帽子を振り落として

高貴な婦人から帽子を奪ってしまった


稀少な帽子はサイズが合わなくて

その子は少し不恰好に思った

そして不意にあの麦わら帽子を思い出した


その子が稀少な帽子を被って自分の街に帰った頃

街はすっかり姿を変え

みんなどこかにいなくなってしまった


(過去作:2019/04頃作成)

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