第7話 山賊討伐

 僕は山賊のいる場所に着ていた。

 沢山の村人達が集められている。

 山賊達はにやにやしながら、その右手には剣を左手には盾を構えている。

 ざっと数えると30名くらいいるだろう、この村には30名もいないのに、圧倒的な力で制圧しようとしている。


 3つ子の女性達が引っ張られていく。


「この3人はもらうぞ、頭の慰めものになってもらう」


 山賊達はにやにや笑いながら、それぞれ気に入った女性にひどいことをしようとしているみたいだ。


 僕は悠然と堂々と歩く、山賊が3つ子を離すと3つ子は逃げていく。


 もちろん村人の群衆の中に隠れる。


「なんだぁ? 貴様、山賊30人を相手にするか」

「ああ、皆殺しだ。そう、皆殺し」


 僕は人を殺した事がない、なぜならそのような世界にいたわけではない、現実世界にも外国では戦争が起きている。

 その戦争で沢山の人々が殺されている。そして殺しているのだ。


 ここは異世界、異世界とはつまり戦国時代のようなもの、人の命を奪いたくないから殺さないでは成り立たない、もしここにいる山賊達を逃せば次はさらに増えてやってくる。

 最悪王国の耳に入って、そんなに強い人がいるならと徴兵してくるだろう。


 1人も残すな、そんな事が出来るのか? 

 僕は一般的な人間だ。

 すごく弱い、この鉄の剣と緑のローブに全てを賭ける。

 最後に暴走しない事を祈って右腕を大切に握る。


 地面を蹴った。


 僕は剣道をやっていた訳でも、空手をやっていた訳でもない、ただ普通の文学少年だ。


 だが文学少年には戦闘シーンをイメージできる能力がある。

 どのようなシーンでどのような戦闘をするのか、剣をどこに当てて、どこに持っていき、次に蹴りを入れるのか。


 全ては計算していたはずだった。

 顔面を殴られるまでは、後ろに後退しながら、地面に転がる。


「ぎゃはっはは、滅茶苦茶よえーぞ」


 地面に転がりながら、顔面から鼻血が流れて、僕って僕ってすごく弱すぎた。


「この生意気なんだよ、殺されてーんだろ、いま殺してやるよ、だけど苦しませてからだ。村人さんたちよお、ちゃんとみろおおお」


「やめなさい」


 何度も腹を蹴られて、顔面を蹴られて、それでも僕はなぜか恐怖を抱く事はなかった。

 なぜだろうか?


「だからやめなさい」


 ネンネが叫んでいた。

 山賊たちはにやりと笑って。


「おお、上物じゃねーか、いい事思い付いちゃったー村人たちの前で公開しながら犯してやるよ」


 すると山賊達がネンネを押さえつけると、衣服を脱がそうとした。


 彼女はびくびくと震えており、


 いつしか亡霊のようにそこに立っていたのは僕だった。


「その手を放せ、だから、その手をはなせえええええええ」


 右腕が暴走する。

 そこにあった右腕は魔物のそれ、

 または魔人のそれだった。


 山賊達は犯す事に夢中だ。

 まだ衣服は脱がされていない。

 薙ぎ払う、巨大な魔族の手で、ぶんと薙ぎ払っただけで、山賊3名が粉々になるように引きちぎられる。

 3人の山賊がぐちゃぐちゃになり肉の塊になっている。

 山賊たちはその光景を唖然とみている。


 村長のネンネは鼻水と涙を流しながら必死で震えている。


「彼女を苦しめるものは、僕が許さない、お前達は皆殺しだ。苦しんで苦しんで死ね」


「化け物め、野郎どもこいつを殺すぞ」


 山賊27名が走りだす。

 四方を囲まれた10名に確実にやられる。

 左手に握られた鉄の剣が輝く。


「あ、あれは」


 ネンネはこちらを見ている。


 僕の左手に握られていたのは、ダイヤモンドのような剣だった。しかも伸びたり縮んだり、まるで生き物のようだった。

 左利きでもないのに、左でうまく操作できる。

 構えて回転させる。


 10名の山賊の首がごとりと落下して転がる。

 17名の山賊は尻もちをついて恐怖の祝詞をささやく。


 そして立ちあがって逃げようとする。


 次に緑のローブが輝いた。

 緑から草色になり、草色の所から沢山の花が出現する。

 その花の数は数百を超えており、花の口から種が乱射される。

 まるでマシンガンのそれは、山賊17名の頭を正確に貫いていた。


 まるで人形のようにうごめきあった後にそこにぶっ倒れる。

 その中に山賊の頭もいた。


 村人達は唖然とこちらを見ている。

 そしてすべての村人たちが頭をさげる。1人1人が土下座をしている。


 ネンネが決意の証を示す。


「ここはヒロスケ様の村でございます。わたしはヒロスケ様の配下となりましょう」

「わたしもだ」

「ぼくも」

「俺も」

「おいらも」


 村人達は君主の証を立てていく。

 僕はとほほと笑いながら、いっこうに止まらない鼻血をなでると。


「あ、できれば、鼻血とめて」


 と言いながらそこにぶっ倒れて頭を岩にぶつけるも、いっそのこと気絶させてくれと思いながら、空を見上げていた。


 それを見下すように村人達がやってきて胴上げするものだから、僕は笑い声をあげていた。


「ああ、人殺しちゃったよ」


 今頃後悔していた。


 空には相変わらず沢山のドラゴン達が自由に飛んでいる。

 僕の配下に村人たち数十人が加わった。

 だからと言って国を攻めるとかをするつもりはない。


 僕の中でこの村を国そのものにしてしまい、独自の流通をつかめればよいのだ。


 この国の王国はどうやらダメとまではいかないが、信用ならないだろう。


 いつかは国王と直談判したいが、殺されるだろうけど、ダイヤモンドの剣と草花のローブと右腕があればなんとかなるだろう。


 って思うんだ。


 

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