第3話 村開拓

「まずはこの肥料を土に混ぜてください」


 

 僕は現在がりがりの村人たち数十人を集めて作物を作ろうとしている。

 もちろん農作業の知識はないので本屋で購入した農作物関係の参考書を見ながらでの話だ。


 思ったより畑は広かったので、肥料が足りなくなってしまった。

 近くには森があるが、確かこの項目にはと。


「何名かで森から土を運んできてください、この布袋を貸しますので」


「ですがここら辺の土と何が違うのですか? えと、ヒロスケ殿」

「あなたは、ネッティーさんですね、説明しますと、土の中には栄養源となる微生物など色々な物質がある事を知っていますか?」

「え? それはどういうものなんですか?」


「そうですね、あなたはなぜ土の中に動物のフンを混ぜるのか考えたことは?」

「それは儀式的なものですよね? 動物のフンを神様に提供するという」

「実はそれは儀式でもなんでもないのです。フンと土が混ざることにより発酵などをします。すると野菜にとっての栄養源が沢山出現するのです」


「な、なんと、そのような技術、さすが神様」

「だから僕は神様ではありません、あなた達から言う所の異世界人のようなものです」


 ネッティーは感動したように目を潤ませながら、頭ばかりを下げている。


 どうやらこの世界の農業水準はあまり高くないのだろう。

 これは村を開拓する必要がある。

 人を助けたいという気持ちと、なんとなく楽しそうだからという興味本位。


 それが僕を突き動かしていた。


 村人数名が布袋をもって森にいなくなると、持ってきた肥料でできる範囲だけ、種を植える事に、本来なら土と肥料が混ざるのを待っていたいがその時間はないので、スピード命でいく。


 ネンネさんはこちらに来ると頭を下げるだけの挨拶をして。


「なぜ森の中にある土なのですか?」

「それは森には沢山の木の葉が舞い散るでしょう? その木の葉はどうなります?」

「えと」

「分解されて土となるでしょう、そしたらその土はどうなります?」

「えと」

「その土に含まれる微生物は沢山になり、作物の栄養となります。と本に書かれてありますけど、この本結構古いからなぁ、今の時代だったら違う恐れが、ま、いっか」


「ヒロスケ殿はすごく頭がよいのですね、異世界にいる人々はそれくらいの知識が当たり前なのですか?」

「えと、僕は知識がないほうなんだと思います。ただ本で応用しているだけです。ですけど僕の世界ではこのような事を学習する場所があるのです」


「学び舎みたいな所でしょうか?」

「そのような感じですよ」


 そう呟くとポケットに何かが入っている。

 それはゲーム機だ。


 携帯ゲーム機が入れっぱなしになっている事に気付かず、あと充電切れのはずの携帯ゲームをみると、充電ケージがずっと充電されている状態になっている。


 大勢の人々は僕が神様道具みたいなものを取り出すものだから真っ青になっている。


「これは、そういう事か、この異世界の空間では充電とか電池が必要ないのだろう、ってことは家電をもってこれるな、よし、まずは」


「ヒロスケ殿、あの、ちょっといいですか、先程トマトの苗を植えた所からものすごいスピードで芽が出てきたのですが」


 ネンネが教えてくれるまでそれに気づかなかった。


 肥料をまいた所に植えた種が1秒事にぐんぐんと成長していく、そのありえない成長のスピードに、村人達は唖然と口を開いている。


 そりゃこっちだって唖然としてるよ。


 僕の目の前で10分が経過した。


 トマト、ナス、ジャガイモ、枝豆とその他の作物がありえないスピードで成長すると、普通の実よりも2倍は大きい実になっている。トマトなんてスイカ並の大きさだ。


 村人達は歓喜している。


「3人娘を呼んでちょうだい」


 みんなはすぐにでも生で食べたいという顔をしているが、

 ネンネ村長はとても冷静に命令していた。


 3人娘が表れると、男性諸君の目つきがかわる。それはとても大事にしている女子が来たぞという感じだった。


 1人を黄色い髪の毛のネチャ

 1人を緑の髪の毛のミチャ

 1人を赤い髪の毛のルチャ


 ネチャは自分の事をうちと呼び、三つ子の中でアタックがすごい。

 ミチャはすごく痩せている。

 ルチャはこの餓死状態の村でもぽっちゃりしている。


 3人の顔はすごくそっくりで、

 ネンネがさらに教えてくれる。


「あの子達は3つ子なんです。とても料理を作るのが上手いので、呼びました。皆のもの家で餓死寸前の者達を集めろ、皆に食事だ」


 村人達の目には隈があり、顔やお腹がガリガリに痩せている。

 子供達などアバラの骨が見えているくらいだった。


 大勢の人々が集まると20人より少し多いくらいだ。

 出稼ぎに行っている人達もいるので、正確な村人の人数はわからない。

 

 だけど僕が用意した種があっという間に成長した原理を考えている。

 皆は必至でお腹の中に野菜スープを流し込む。

 ネンネは皆が食べるのを見ないと食べないようで、僕はネンネのために器に野菜スープを入れて渡す。

 彼女は目を真っ赤にしながら、涙を流しながら嗚咽をあげていた。


 村人達も1人また1人と涙を流し、盛大に嗚咽をあげていた。


「ヒロスケ殿、あなたのおかげでこの村は滅びる事はありませんでした。なので、今後もこの村を開拓してくれませんか、あなたの知識で」

「それはもちろんだけど、僕もなぜこのように作物が急激に成長したのかがわからないんだ。土の中に僕が知らない物質があるのかもしれない、色々と調べたい、どこか空き部屋があるといいんだけど」

「それなら父さんの部屋を使ってください、父さんはこの村の村長でしたが、飢えで苦しむ人々のために王国に直談判に行きました。それから戻ってきておらず、戻ってきたのは首だけでした」


 ネンネの顔が真っ青になっていく、つまり王国は文句を言うなと釘を刺したのだろう。


「そういう王国があるのか」


 日本とまたっく違う、

 それも戦国時代の日本そのものなのかもしれない。

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