日々之好日/『             』


ぷあーん。ぷあーん。


電車の走る音。


雲一つない青い空。


「わー!遅刻遅刻―!」


そんな中を私は走る。

ざり、ざりざりざり。

ざ、ざざざざ。

ざりざりざりざり。

「うわーっ!遅れる遅れる―!」


すたたたたー。

何時もだったら一度や二度は他人とぶつかっている私だが、今日は全然ぶつからない。

これなら始業に間に合うかも!


「うお~っ!だっしゅだーっしゅ!」

そのまま私は走り去った。

何があったのかも気づかずに。


/


「…………はあ、全く。」


それを見ていた女性が二人。


「時間遡行――それと歴史改変、何とか上手く行ったわね」

何やらくるくると空中に文様が描かれている。


「しかし、手伝った私が言うのもなんだが、本当にいいのかい」

こちらは物騒な剣を持ってお茶を飲んでいた。


「……いいのよ、『私とあの子は出会わなかった』、それでいいの」

文様を消す。自分の未練ごと。


「……まあ、理解はできるけどね、私にだって。まあ有り難くこれ文様はもらっていくけども…なかなか便利だねこれ」

剣で空中に文様を描く。


「ええ、あの子と…私で作ったのよ」


「…そう、じゃあ。もう会うことはないと思うけど、御達者で」

その台詞を最後に片方の女性は文様の中に消えた。


「…………」

それを見送り、彼女は溜息ごと、残っていたお茶を飲んだ。



日々之好日、おきらくごくらく。

――あの子がそう生きられるなら、私はそれで良かったの。

私は一人になったけど。

それでもしっかり笑って見せる。

だから一緒にご唱和ください。


『あの子と私は出会わなかった』。

だから、この話はここでおしまい。


始まる前に終わってしまった、二人の少女のお話は。

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