ロボット・コンバット

「うおおりゃぁぁぁぁ!!」

「ああ、壊れる壊れる」


 アカナの操縦するロボット、グランダーはシュラフと善戦していた。

 いやほんと、初めての善戦。

 今までは瞬殺か、クサビが一発で吹き飛ばした隙に逃げるかだったからなぁ。

 初めてまともに戦っている。

 が、少々荒っぽくて暴走気味だ。

 自爆スイッチなんてベタなものは搭載していないが、自壊しかねん。


 シュラフの繰り出した拳を両腕の装甲で受け止め、背面からミサイル。

 ヒーローは即座に距離を取り、ミサイルを全て蹴り落とす。

 しかしその隙だらけの体に目からビームを発射。

 が、瞬間的にその場に伏せて回避。


 まさに一進一退。

 街を守るために出てきたところで、シュラフもあの巨体で戦えば街への被害は甚大。

 更にこちらは同時にクサビを派遣しているので、遅滞戦闘は望むところだ。

 シュラフを倒すことが出来ればそれが一番だが、この戦いにおいては倒されさえしなければこちらの勝ちだ。


 今回こそは、いける!


「あっ」


 嫌な声が聞こえてきた。


「アカナ?」

「いや、大丈夫です、ちょっとミスっただけ。すぐにリカバリーできます」

「あー、でも」

「大丈夫大丈夫大丈夫です、すぐすぐすぐ、どうにでも、でも……」


 足を狙われバランスを崩したところに打撃を叩き込まれている。

 攻撃を受けるアカナは、ひたすらコントローラーをガチャガチャといわせているだけで、なんら有効な抵抗が出来ていない。

 相手の打撃と入力の煩雑さで身動きひとつ取れないグランダー。

 うーむ、一気にまずいことになった。


「アカナ、変わろう」

「いりません、いけます、いけますから」

「いや、これはもう」

「やりますから! 私、これ以外できないですから!!」


 そう叫んだアカナは、既に顔を伏せ、画面を見てはいなかった。

 ただ虚しく指だけを動かすが、押し倒されたグランダーはもはや一切反応していない。

 彼女の細い肩が、ただ震えている。


「別に責められる訳じゃないだろ」

「そういうのじゃないんですよ。私が嫌なんです」

「実績がどうとか、そういうもんじゃないだろ」


 既にコントローラーは動かず、画面の中のグランダーはただの屍状態。

 シュラフは攻撃の手を止めているが、様子を伺っているのか、いつでも追撃できるように油断なく構えている。

 そしてこちらの部屋も、時間が止まったようで。

 コントローラーを胸に抱くアカナ。

 そして画面の中では、勝負ありと見たか、グランダーの体から一歩離れるシュラフ。


「今だ、アカナ!」

「え!?」


 そんなことをいきなり言われても反応できる訳がない。

 訳がないのに、離れた場所で戦っているグランダーが、シュラフの顎を強かに打ち据えた。




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