そして次の作戦へ

「どうも、只今戻りました」

「お、お、おう。おかえり」


 またしても外を確認せずにドアを開けると、またまた怪獣が立っていた。

 昨日、ヒーローことシュラフに何処かへと吹き飛ばされたはずのクリメラJrが。


「生きていたのか」

「丈夫ですから」


 そういう問題だろうか、と思いながら前回と同じように部屋の中に招き入れる。


「ただいま、お母さん」

「ん」


 声を掛けられたジキは、さっきから作業中で、背中を向けたまま無愛想に返事をしただけだった。

 やれやれ、クリメラの方では自分を作ったジキを母と慕っているのに。

 行方不明の息子が無事に帰って来たのににこりともしない。そもそもジキが笑った所など見たこと無いが。


「ちょうどいいな! 今次の作戦考えてたんだよ、クリメラ行ってくれるか?」

「はい、行けます!」


 ヒーローに吹っ飛ばされ、たった今帰って来たばかりだというのにクサビの提案にもやる気満々で応える健気な怪獣。

 が、即座に


「それはダメ」


 母親から物言いが入った。


「なんでだよ、ジキ」

「クリメラは連戦してる。体の大きな変化も会った所だし負担が大きい」

「僕、行けますよ!」

「再生とサイズダウンだけでも信じられないほど大きな負荷がかかってる。しばらくは大人しく修行でもしてて」


 怪獣さえ黙らせるほどの圧で言い切って、ジキはまた作業に戻った。

 淡白な割にモンスターペアレントらしい。

 普段一言ずつしか話さないくせに饒舌だし。


「まあ、次に関してはクリメラの力を借りなくても実行できるからな。今回はゆっくり休んでてくれ」

「分かりました。あの、次の作戦は?」

「ロボットだ」


 俺の答えに、クリメラが目を剥く。

 怪獣のびっくりした顔というのも珍しい。


「ロボットで何を?」

「基本はクリメラと同じ、破壊活動だな。そしてクサビが同時に街で暴れ回る」

「同時に?」

「そう。前回あのシュラフとかいうヒーローが巨大にも人間大にもなれることが分かったからな。だが分身までは出来ないはずだ。どちらかを対応している間は、どちらかは自由に動いていられる」

「そんなこと言ってると、次は分身してきますよ」


 今まで黙ってゲームをしていたアカナが、余計な口を挟んでくる。


「なんで鉄板のフラグ立てちゃうんですか」

「お前らはどうしていつもその辺の文化の吸収が異様に速いんだよ」

「外国人がアニメで日本語覚えるやつと同じだと思ってください」

「だからそういうのだって」


 まあそんなツッコミも今更なので、ほどほどで置いておく。


「今回をもって単純な破壊活動は終わりとする。一通りこちらの武力を誇示した後は、搦め手も使いながら侵略を進めていく。今回は綺麗に成功させるぞ」

「武力のアピール全くできてなくない?」

「本当に侵略進むんですかね?」

「……この子を鉄くずにはしないで」

「なんで俺だけがやる気満々でお前らが仕方なく付き合ってやってるみたいになってるんだよ」


 お前らの地球侵略だろうが!

 聞く耳持たれないのは分かっているのでこれ以上は何も言わないが。

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