諦めずに頑張ろう

 我々は次の侵略作戦を考えていた。


 え?

 怪獣?

 クリメラ?

 前回の続きはどうしたって?


 プロローグのアレだよ。二度は語らない。

 あれ以上語ることも無いからな。


「聞いてないぞ、あんなのがいるなんて」

「私たちも知らないぞ。なんだアレは!」

「この星の者でないことは確かなんですけど」

「どっかで見たことある気はする」


 大怪獣クリメラが降り立った街に突如現れ、クリメラを瞬殺してどこかへと消えていった謎の巨人。

 丁度さっきテレビをつけたら、誰が撮ったのか昨日の映像が一部始終ニュースで流されていた。いや、すぐにテレビの電源を消したので一部始終かどうかは分からないが、一瞬の出来事だったのでほぼノーカット放映されていることだろう。


 今朝のニュースサイトは怪獣の話題ばかりで、我々の侵略作戦の効果の大きさを実感させる。

 侵略作戦第一号は見事に大失敗し、今後怪獣を作っても同じように倒されてしまうことが予想される。


 より強い怪獣を作ってヒーローを倒せって?

 持てる技術の全てを作ったのだ、そう簡単にさらに強い怪獣なんぞ作れるか。

 つまるところ、我々は、完全に行き詰まっていた。


「多分、宇宙人だよな」

「うん。私たちも地球にあんなのがいるなんてデータは持っていない」

「問題はアレの目的だが……」

「地球を侵略から守るために出てきたのか、自分が地球侵略をする為に私たちの邪魔をしているのか、ですね」

「?」


 話について来られずジキが脱落した。

 だんだん分かって来たが、彼女は想像以上に技術系以外はからっきしらしい。


「まあとやかく言っていても始まらない。次の作戦を考えよう」

「そうですね、何かいい案はありますか?」

「人間大の怪人を作る」


 分かりやすく白けた空気になった。


「またそのパターンか特撮オタクめ!!」

「私も路線変更した方がいいかと思うんですが……」

「いや、人間大ならあの大きさの宇宙人は戦いづらいだろ?」

「大きさを合わせてきたらどうする!」

「人間サイズなら作るのは楽でいい」

「ジルは黙っていてください!」


 前回と違って非難轟々。

 まあ仕方がないか。


「悪い悪い、冗談冗談。他の作戦を考えるよ」


 趣味だし、言ってみただけだし、とっとと別の案を捻出するかー……と、思ったところで。


 ピンポーン。

 引っ越してから初めて聞く音が部屋中に響いた。


 へぇ、ここの呼び鈴はこんな音なのかー、と特に関心もなく関心しつつ廊下を歩き、玄関の重いドアを開ける。

 誰が来たのかを確かめもせずにドアを開けるなど不用心だが、宇宙人が三人もいる部屋の中の方がよっぽど危険で怖いので警戒心が麻痺している。


 まあ、なんと言うか。

 ドアを開けてみてから、ちゃんと確認はした方がいいなぁと思ってしまった。


「あ、どうもこんにちは。暖人さんとお母さんと、えー……クサビさん、アカナさん、のお宅はこちらでよろしいですか?」


 開けたドアの前には、人間より少し背が高いくらいのサイズの、怪獣が立っていた。


 いや待て、理解が追いつかんぞ。

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