追放魔王様は冒険者となり這い上がる~無一文の魔王は億万長者を目指す~

パーマ太郎

第1話 魔王様は追放される

「魔王を全財産没収の上で国外追放処分とする!!」




法廷で宣言されたその言葉に我はショックのあまり膝から崩れ落ちた。


ついでに涙と鼻水を大量に流した。




どうしてこうなったのだ。我はこれからいったいどうすれば・・・・・・・










かつて世界を恐怖に陥れた『魔王』がいた。だが、それも過去の話。




「あ~宝くじ当たらねかな~」




魔王である我は昼間の日差しが温かい草原で、そんなこと言いながらゴロゴロ寝そべっていた。


魔王であった我は今やる気をなくしている。理由はそう、あれだ。




大魔王率いる帝国は、くそ勇者率いるカス王国軍と戦争になった。


三年に及ぶ戦争の結果、ゴミ共和国との仲介の元、講和条約が締結された。


結果的には我々は勇者率いる王国軍に惜しくも敗北


3000㎢の面積を誇るニライト島という森林資源豊かな島を割譲することになり


その上、我は敗戦の責任押し付けられ国外追放処分が下ったのだ。




そしてつい先日、戦後処理が終わり用無しになった我は国から追い出され今に至るのだ。


ちなみにここは、講和を仲介したクソ共和国・・・・・・・じゃないやアンリ共和国の町のはずれの草原だ。




ちなみに我の名前はアバドン、歴代最強の魔王だ


流石に世界中に顔が割れているため、今は仮面をつけさらに紫色の髪を黒く染めている。


しかしなんで俺がこんなコソコソしなくちゃならんのだ。そうだ勇者のせいだ。




くそ勇者め!!やつがいなかったら。ラント攻勢だって王都奇襲だって帝都防衛戦だってうまくいったのだ!!




「うわあああああああ」




我は地面に何度も頭を打ち付けた。でも痛いので地面につく刹那の瞬間、勢いを殺した上でだ。




「落ち着きましょう魔王様!」




そう言って我を止めようとするのは我の秘書アルシエルである。


こいつはエルフと魔族のハーフで、腰まで伸びた銀色の長髪と金色の


瞳が美しいまさに我にふさわしい秘書だ。




「うむ、取り乱して悪かったな」




流石に秘書に止められて我は平静を取り戻した。


しかしひどいものだ。『俺も魔王様についていきます!!』とか言ってついてくる部下が


もうちょっといてもよくないか? なんで秘書しかついてこないの?




四天王の奴らは、二人が死んで一人が重症、もう一人が行方不明だから仕方がない


にしても、八将軍の奴ら五人も存命だろ? 何してんのついてこいよ、おかしいだろ?




それだけじゃない、八将軍の奴ら俺に全部責任押し付けやがって。




戦争裁判で八将軍の一人アンダガはこういった。




『王都奇襲の際、非人道的行為があったことは事実であるが、作戦指揮権は魔王が握っており


先の非人道的行為も、魔王の命令で致し方がなく行なった。


魔王の暴走を止められなかったことは誠に申し訳ないと思っている』




とか抜かしやがった。は? 王都奇襲作戦とか我は指揮とってないんだけど?


確かに作戦の認可を出したのは我だがな。




さらに帝国国境沿いにある王国のアンリ村での虐殺行為に言及された


八将軍ナーガはこう言った。




「魔王様は恐ろしいお方であった、命令を無視すれば


家族共々粛清するののが常であった。故に今回の虐殺命令にも


我々将兵は逆らうことができなかった」




だとよ。これについてはアレなんですよ。




アンリ村攻撃するなんて聞いてすらいないんだが? 王都奇襲作戦は我が認可出したし少しは非があるよ?


これについてはおかしくね? 攻撃許可どころか『アンリ村とは交友があるから攻撃は避けろ』。


と我は命令したぜ? それに粛清とかしたことあったか? ないわ、一回もないわ




そして八将軍の生き残りの他三人は裁判直前どこかへ雲隠れした。


おそらく賄賂でも渡したんだろうな。死ねばいいのに


なぜ我が責任を……








......いやなんにしろ我の責任か。


八将軍を御せなかったのは我だし。任命したのも我だ。




それはそれとして魔族ってマジで忠誠心とかないよな、人間とか獣人とかエルフとかと比べると本当に忠誠心がない


本当にどなってんだよ魔族はよ......まあ我も魔族だけど。




まあその忠誠心のなさのおかげで我は軍法会議で死刑だぜ? まあ我は最強の魔王だがら魂が三個あって助かったけどね。


ちなみに今は魂は一個だ。死刑される前に勇者に殺されたからな。


しかしな皇帝を軍法会議で死刑とか聞いたことあるか? ねえよ頭をおかしいは


で、死刑の後やっとの思いで生き返ったら国外追放だと???




「しねえええええあいつらああああ」




「魔王様!?」




今度は手ごろな木が有ったのでそこに頭を打ち付けた。


三回頭を打ち付けると、木がメキメキと音を立てて倒れた。もちろん最強なので我は無傷だ。




「ふう~ふう~」




全く思い出すとイライラするぜ。俺は深呼吸して何とか平静を取り戻した。




「魔王様どうか怒りを鎮めてください、ほらお顔をが汚れていますよ」




そういってアルシエルは、懐から出した白色の手拭いで我の汚れたおでこをぬぐってくれた。




「すまない」




「いいんですよ私は魔王様のい・い・な・ず・け・なんですから~!」




「いや違うだろう」




「もう、照れないでください魔王様~」




そう言ってアリシエルは我の腕にまとわりつく。もちろん彼女は許嫁ではない。


確かに幼いころから交友はあったが、そうゆう関係ではなかった。


アリシエルは時々こういう冗談を言って我をからかうことがある。




しかしなぜ彼女は我についてきてくれたのだろうか。




「なあアルシエルは......」




「はい?」




「いやなんでもない」




いざ聞こうとすると恥ずかしくそして怖くて聞けなかった。




「? そうですか?」




「しかし無一文だな、これから金をどう稼げばいいといのだ」




「そうですね~でも、魔王様なら何とかなります!」




「そうかな、我は金もだが地位もない。それに素性すら明かすことができない今では浮浪者と変わりない


そんな我がどうやって金を稼ぐというのだ」




そう、敗戦国の王などという素性など、ばらすわけにはいかない故に、これからの金稼ぎは困難だ


最近は身分証を出せない人間なんか雇うところなどない。


それどころか顔すら隠さないといけないのだ。身分を明かせない、名前も明かせない、顔も明かせない


果たしてそんな人族を雇うものなどいるのだろうか。






「魔王様、ひとつだけありますよどんな人でもなれる職業が」




「なんだ?その職業は?」




やはりヤバイ仕事だろうか......まさか帝王たる我がそこまで落ちるとは


しかし背に腹は代えられぬ、ヤクの運び屋だろうが製造だろうなんだってやるしかない




「冒険者です」




盲点であった。確かに冒険者は底辺の人間の受け皿の役割もあったのだ。


故に名前がなかろうが、顔が明かせなかろうが冒険者になれるのだ。




しかし冒険者と聞くとゴミカス勇者を思い出す。勇者と同じ職業なんか死んでも嫌だ。




「いやだ.......勇者なんかと同じ仕事なんか、いやだいやだいやだいやだ!!」




バチン!! アリシエルのビンタが我の右頬にクリーンヒットした。




「しっかりしてくだい!! 選択肢二つです!!死ぬか、犯罪者か、冒険者になるか!!」




「三つあったような.......」




ドゴオぉぉぉぉぉ!!




「ごおおおおおおおぉぉぉ?!?!」




アリシエルの正拳突きが俺の腹にクリーンヒット。我は後方に吹っ飛んだ。




「冒険者になるますか?」




「いやしかし、なんかあれだしプライドというかなんか」




「YESかNOか!!!!」




アリシエルが我の胸倉をつかみ問い詰めた。




「YES.......」




我に選択の余地はなかった。まあでも......ヤバイ仕事よりはましか、と自分に言い聞かせた。

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