第21話 ULTRAMAN(漫画)について

 アニメ放送も近いですし、ここいらで流行りに乗っかってこれに行きましょうか。

 これまで、ウルトラマンは多くのコミカライズ、アニメなどがありました。その最新をつき走るのが今作でしょう。気が付けばソシャゲ化もしてるんですが。


 舞台は初代ウルトラマンから四十年後の未来。ウルトラマンが地球を去り、地球に平和が訪れたこの時代。科学特捜隊は解散し、怪獣も宇宙人もいなくなった世界。

 あの、ハヤタは防衛大臣となり、家庭を持ち、一人の息子をもうけます。

 息子の名は新次郎。幼い頃、新次郎は父に連れられ、かつて科学特捜隊の基地、今ではウルトラマン博物館となった場所ではしゃぎすぎて、落下事故を起こすのですが……実は、彼には秘密がありました。

 そして、同じとき、ハヤタにもとある変化が現れます。

 それは自分がかつてウルトラマンとして戦っていたという記憶を思い出すということ。


 それから高校生になった新次郎。彼は得たいのしれないパワーが宿っていました。まるでスーパーマンのような怪力に跳躍力。そこらのチンピラなんて相手にならないぐらいのパワーにどこか調子に乗り、どこか不安を抱える少年。

 そんな彼を襲う、謎の襲撃者。その名はベムラー。それはかつてウルトラマンが最初に戦った怪獣の名ですが、そこにいたベムラーはパワードスーツを身に着けた等身大の宇宙人らしき存在。

 あわやピンチの新次郎を救ったのは、同じくパワードスーツを纏った父の姿でした。

 ですが、年老いたハヤタではベムラーに太刀打ちできない。ゆえに、新次郎は、父の盟友であるイデの作り出したパワードスーツ『ウルトラマン』を身に着ける。

 彼ら親子には『ウルトラマン因子』と呼ばれるパワーが宿っていたのです。

 こうして、新次郎は等身大のウルトラマンとして運命の戦いに巻き込まれていく……というのが冒頭の展開ですね。


 ウルトラマンが去って以降の地球、その後他のウルトラ兄弟らが訪れない世界。こうなると平成セブンを思い出す世界観ですね。それと、敵がいなくなり表面上は平和な世界というのもウルトラマンとしての出だしとしてはよくあるパターンではないでしょうか。


 さて、ここで皆さん。この漫画を始めてみたとき、どう思いましたか?

 「え? ウルトラマン大きくないの?」、「パワードスーツってアイアンマンじゃん!」、「仮面ライダー?」などなど。まぁこれはどんな人でも絶対に、一度は抱く感想だと思いますよ。僕もそうだったので。

 と言っても、そんな程度の話は、ウルトラマンは長い歴史の中でとうの昔にやっているんで今更です。

 等身大での活躍もそうですが、常時等身大なウルトラマンがお下品な馬鹿ギャグを繰り広げるウルトラ忍法帖とか、パワードスーツとは違いますが、鎧を着こんでまるでドラゴンボールと聖闘士星矢を組み合わせたような超闘士シリーズとか、アンドロメロスとか、例をあげればきりがないです。

 商業的なライバル、ガンダムですら騎士や武者とかSDでおバカコメディなんてやってのけてますからね。


 なので、僕自身も等身大とかパワードスーツがどうこうって部分は正直「どうでもいい」んですよね。そこは気になるような要素じゃないってのが正直な意見です。

 ですがまぁ、ちょっと待てよ? みたいな要素もあるにはあるんです。これは例えるならラーメンで醤油味が好きか塩味か好きかみたいな程度の話なんですが、「またこの作風かぁ」ってのが脳裏をかするんですよね。


 作風というは作者の以前の作品がとかウルトラマンシリーズがではなく、近年の創作物全般に感じるノリみたいなもんでしょうか。

 言葉は悪いですが、謎をちりばめて、何かそれっぽいことをつぶやき、特定のキャラがどっか薄暗いところでにやりと笑えば話が壮大になるそんな感じです。

 主に日本の漫画界隈でよくみられる構図と言えばいいんですかね。深い物語を仕込もうとする。ただ問題はその手の話って全体的に歩みが遅くなります。これは色んな作品でもそうですが、種明かしが遅いんです。と、同時にどうにもすっきりしない話運びが続くので人によってはそれでダウンって場合もあります。

 サスペンスや謎解きを主軸にした話ではないのにいつの間にかそっちに力を割いていくといった感じ。


 多分なんですが、この漫画に対して多少なりとも批判的な感想を持つ人たちは恐らくその部分が気になってしまうんじゃないかなぁ。

 ですが、これって以前から何度か触れたことですが、「子供向け」か「大人向け」かの受け取り側の認識もあるんです。

 今作ははっきりと言えば子供向けのストーリーではないです。大人向けの作品を子供の視点で見ればそりゃあなんじゃこりゃってなるよって話ですし、それなら普通に特撮の方をみりゃいいわけですし。


 しかし、一方で面倒くさい僕なりの感想を言うと「果たして初代ウルトラマンの続編である必要はあるのか?」という点もあるにはあるんです。

 結局、セブンやエースといった歴代ウルトラマンたちもスーツとして出てきちゃってますしね。ソシャゲの方では平成組もスーツ化してますし。

 これに関しては連載が始まった当初から予想できてたことなのですが、少しもったいないと思うんですよね。

 というのも主人公である新次郎の次世代のウルトラマンとしての立場があんまり大きくないんです。

 セブンもエースも実はウルトラマン因子に起因するパワーはなくて別の技術体系、その後に出てくるジャック、タロウ、レオに関してもかなり違います。

 逆を言えばべつにウルトラマンのパワーがなくてもスーツメカニックで敵は倒せるし、ウルトラマン因子がなければ絶対に倒せない敵がいるというわけでもない。

 強敵はいるにはいるんですが、よくも悪くもかつての科学特捜隊の装備でも倒せそうな連中が多いんです。


 しかし、装備やパワーうんぬんより気になるのは、他のウルトラマンたちには一応、明確な目的があります。ようは戦う為の信念と言いましょうか。大切な人を守る為なのか、かつての苦しみを他者に与えない為なのか、友の為なのか。

 ですが新次郎には今のところ、これといった目的はないです。侵略者が地球を狙っているのでそれを阻止するために戦ってはいるという流れはあるんですけど、今一つ他人に与えられた目標だけを遂行させられてる感が強いんですよね。

 なのでこのことは本編でもちくっと突っ込まれるんです。正義感はあるので、その時の惨状を見て「こいつは許せない」とか巻き込まれた民間人を助ける為に立ち向かうとかにはなることはあるんですけど、やっぱり大本としての「俺はこうであるから戦う」と言った目的がないんですよねぇ。

 なので単行本の範囲で確認する限りだと新次郎はいまだ、大人の言うことを聞いてるだけのヨイ子ちゃんです。

 一番、ウルトラマンに近い存在ではあるのにね。 


 この漫画におけるウルトラマンとは光の巨人であると同時に自らの信念の下、巨悪に立ち向かう戦士という位置づけもあるんじゃないかなと思うんです。

 果たして、新次郎は自分だけの信念を持って、胸を張って「ウルトラマン」と名乗れる日が来るのだろうか。

 それはまぁ漫画が終わってみないとね?


 ただその答えが出るのはだいぶ先になりそうでもあるんです。

 これは書くべきかどうか迷ったところなんですが、まぁ別にいいかってことで蛇足で追加するんですが、この漫画の一連の流れには「ウルトラマンは正義か?」というテーマがあります。

 つまりは「正義の味方は正義なのか」問題です。

 といっても、これ、漫画を読めばわかるんですが、侵略者側がウルトラマンという邪魔ものにケチつけてるだけにしか見えないので「また遠回りなことやってんなぁ」というよくある感想しかないんですが、不思議とこの手のテーマを扱う作品って多いですよね。

 で、この手の展開ってどうしてもですが、「正義の味方は独善的」とか「ヒーローのやってることって冷静に考えたら~」とかまるで既存の正義を疑え、疑うことが頭いいみたな優越感に浸ってる感じが凄い鼻につくんですよね。

 一時期某検証本とか考察本が流行った時みたいな空気です。

 ポジティブなものをネガティブにとらえることでまるで世界がわかっちゃったような気分になれるんだろうか、ここまでくると言いがかりに近い感じですけど。


 じゃあこの漫画もそうなのかというと、まぁそうでしょうね。といってもそういうテーマを扱ってるんだからそうなるだろ言うもの。醤油味のラーメンを作れば醤油味になるようなもんです。

 作中でもウルトラマンの正義について疑問視するキャラはいても結構、「いや、それはねーよ」的な感じで即答されてます。そもそも言ってるのが侵略者たちですから、まさしく「お前がいうな」ってノリなので恐らく作者さんもわかってやってるなこれって部分があります。

 しかしながら、これこそ個人の好みでしょうけど、この手のテーマは何年も引っ張ってやることじゃないよなぁってのが正直な感想。

 延々と悪人たちが自分たちのやってることを棚に上げての正義批判はやっぱり見てて結構鬱陶しい。

 殺人犯や詐欺師が警察こそ悪とわめいてるようなもんですし。

 なので、実は今現在のULTRAMAN(漫画)の展開は個人的にはちょっと……となってるのが正直なところですね。

 ただこれ、やっぱ主な原因は今一つ主人公である新次郎君がぱっとしないってところもあって、そういう状況下に置かれて悩むほど、彼には信念があるように見えないって部分なんですよね。

 はっちゃけろというわけじゃないんですが、彼にはもう少し行動的な主人公になってほしいかなと。

 今のところ、他のキャラばかりが目立ってて新次郎君が一番空気なところあるので……新世代の主人公としてはもっと頑張ってほしいですねぇ。

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