第6話騎士団長(ウイリアム視点)

 私たちは今、命令により、カージナルの町から少し離れた森へと、調査をしに来ていた。

 これは定期的に行われるもので、今回は我々が選ばれた。


 私の騎士団は少し変わっている。他の騎士団は、各国から集められた者達による混合部隊だ。

 しかし我々は違う。

 私の部隊は、昔から私の家に仕えている者達で編成されている。これは代々そうしてきたものだ。

 なので、子供の頃から兄弟のように育った者達が、そのまま騎士団を組んだ。そのため、お互いのことを良く知っているため、他の騎士団よりも何倍も強い。もちろん、個人の力も相当なものだ。

 

 この森は、そんな深い森ではなく、そう、商人や旅人が気軽に通行しやすい森だ。

 しかし浅い森とはいえ、定期的な調査は必要だ。

 カージナルの街は、この世界で、まあまあの大きさの街であり、商業も盛んで、もしこの森に何かあり、商人達が来なくなってしまえば、大きな打撃を受けてしまう。つい最近も他の街で、魔獣により商業がストップしてしまう、という事件があったばかりだ。そうならないためにも、定期調査は必要だ。

 3日間の予定で調査に入り、今日が最終日だった。

 最後の調査を終え、時間も時間だからと、森の中の少し開けた所に野営することにして、準備をしていた。

 そしてそれは起こった。


 突然爆発のような音と、猛烈な風が吹き荒れた。慌ててテントを押さえて、風が収まるのを待つ。

 数分後、風がおさまったのを見計らい、我々は今の音と風の原因であるだろう、池の方角へ向かった。

 まさかそこに魔獣のトップクラス、フェンリルがいるとは思いもしなかった。

 と、ふと気づく。

 何故あんなに小さな子供が!!助けなければ!だがどうする、相手はフェンリル、我々で敵う相手ではない。

 しかし我々はここで、思わぬ現実と遭遇する事になる。


 子供は我々を止めると、あろう事かフェンリルを友達だと言って来たのだ。

 友達、フェンリルが友達だと。

 確かに子供の言う通り、フェンリルが我々を襲ってくる事はなかった、なかったが、だがしかし、友達とはどういう事だ、この子供が上位の魔獣と魔獣契約しているのか。

 混乱しながらも辺りを見渡すと、そこにはビックエアーバードの死体が横たわっていた。そうか、さっきの騒ぎは、フェンリルとビックエアーバードの戦いか。

  ん?ビックエアーバード?何故この森に?この森にこんな強い魔獣は居なかったはずだ、しかも変異種だと。

 だが、まあ良かった、人々が襲われる前に倒す事ができて。これも、この子供とフェンリルのおかげだ。


 そこからは、子供の名前や状況確認をした。

 子供の話からは、よく分からない部分もあるが、いずれにしても誰かに連れ去られ、何らかの出来事により、この森に捨てられたか、親の事情で捨てられたか、どちらかだろうという話でまとまった。


 子供は我々が保護する事になった。こんな森でよく無事でいられたものだ。まあ、フェンリルがいればそれも可能か。幸い、フェンリルはちゃんと魔獣契約が出来ているし、これなら街へ連れて行っても大丈夫だろう。

 うむ、大丈夫なはずだ。…多分。


 それにしても、とても可愛い子供だ。そのひとつひとつの仕草が、堪らないくらいに可愛い。顔のせいもあるんだろう、この国では珍しい、黒目、黒髪、とても整った顔をしていた。

 肩車をしてやれば、きゃっきゃっと喜び、ご飯を食べれば、拙い仕草で一生懸命ご飯を食べる。本当に可愛くて仕方ない。

 それに何故だか分からないが、運命的なものを感じた。理由はわからない、が、この子供を、私が守り育ててやりたいと感じた。


 フェンリルも問題だ。

 フェンリルがユーキと契約していると分かれば、良からぬもの達も寄ってくるだろう。そういうもの達からも、私が守ってやりたい。

 それには、どうしたらいいか。


 今、私の腕の中で眠るユーキを見ながら、私は、これからの事について、考えずにはいられなかった。

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