第2話 癒しの天音


「聞いたか聞いたかwあの俺たちの癒しだった天音ちゃんも手籠にしたらしいぜww」

「お、おいマジかよ?wそんなんありえねぇーぜww」

「それがさ、みっちゃんがw」

「なら、納得だなww」

「それにしてもあんなやつがなーww」

「黒崎さんに続き天音ちゃんもあいつの毒牙にかかるって人生やってけねぇーぜww」

「これから俺たちどうする?ww」

「インキャ度を極める!これに限るぜww」

「だなw今日から新しい俺で行くぜww」

「それにしても、、、なぁ?」

「そうだな...」

「「うぜぇー」」


だから、黒崎さんに続き、癒しの天音ちゃん?もしかして柚木天音さんだろうか?

いやいや、そもそも一度も話したことがないのに手籠って、そんな訳あるかよ!

噂にも、してもいいことと悪いことがあるだろ!

風評被害にも程がある!

ぼっちな俺を助けてくれる人は一人も居ないし、俺の平凡な高校生活を返して欲しい。

それに黒崎さんったら。付き合ってます宣言した後、何もなかったかのように自分の席に座っちゃうし、俺、どうしたらいいの?クラスの視線が痛すぎる。


「あははっっ。ちょーうけんだけどーwww」

「だよねーwwwまさか癒しの天音も自分のものにするとは凄すぎーww」

「それより最低ww」

「それww一人で我慢しろよwww」

「まさか二人とはwwあいつのどこにそんな魅力があんの?ww」

「知らないww矢崎行ってこれば?www」

「やだってwww流石にあんな奴を狙うくらいなら先生でもマシって感じ?www」

「それマジうけるーwww」

「もしかして天音ともヤってたりww」

「それマジあるww黒崎にも手を出してたんだし、天音にも手を出してる可能性高いwww」

「身の危険感じるwww」

「私もwwあいつ歩く性欲の塊だわww」

「歩く性欲の塊ってwwマジうけるwww」

「それにしても」

「はぁー」

「はぁー」

「「うぜぇー」」



いや、うけねーだろ。噂になってる張本人の気持ちを考えろよ。憶測を話すのは楽しいだろうけど、やられてる俺は汗が止まらないんだって。それにうぜぇーってさっきは羨ましいとか言ってたのにどうしたんだよ。これからの学校生活誰からにもうざいって思われるのか俺?流石にやだよ。

神さま仏さま天音さま、どうか俺を平凡な高校生活を送らせてください。

すると、願いが届いたのか、教室の扉が開いた。

出てきたのは癒しの天音だ。

天音が教室に入った瞬間、今までざわついていたのが嘘だったかのように静まりかえった。

そして、いち早くクラスの空気を察してか矢崎が天音に尋ねる。


「ねぇー天音?」


「どうしたの〜〜〜?矢崎ちゃん?」


天音はどこか抜けた感じでマイペースな美少女だ。ゆるふわ茶髪ロングでマイルドな笑顔に誰もがにやけてしまう。そんな空気感を持ってる少女。だけど、今回は違った。既に噂を聞いたのか気分が優れないようだ。

虚な目をしていて、全てがどうでもいいかのような表情をしていた。その豹変ぶりに矢崎は言葉を詰まらせる。


「あ、あの天音ってー。あいつと付き合ってるの?」


だから名前覚えろよ。二回目だろうが。

天音は俺から視線を戻し、矢崎と向き合うと言い放った。


「付き合ってる〜。私たち付き合ってるの〜」


「え?私の空耳?」


「聞こえなかったの〜?だったらもう一回言うね〜。私たち付き合ってるの〜」


「「「「え?」」」」


いや、だからそんなの知らねぇーって。いつ俺と天音が付き合うことになったんだよ。その張本人が何で認めてるんだよ。あー頭が痛い。意味が分からなすぎる。俺の平凡な高校生活返してくれ。

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