横暴な領主と騎士団は仲間割れをしてしまう

その日、市民達の間にて、ある噂がアップルR-12を駆け巡った事が騎士団に知らされた。

「領主が騎士達の不正を王に告発したと」と。


どういう事だ!?そう考えた騎士団の隊長ジニス・ブレイズアバドンは自身と同じく、不正にかかわっている騎士達全員を連れて領主邸に向かった。

しかし、正門に付いたところで領主邸の門番に阻まれて困惑した。


「おい!?私はラファエロ領主に用があるんだ!?」

「奇遇だな!?丁度私も貴様らに用があってな!!」

そう、怒鳴り散らしてやってきたのは、アップルR-12の領主、ラファエロ・アイスフレスベルグだった。そして、彼は息子アルガスと、娘ターニャと武装した私兵達を連れていた。


「よくも…裏切ってくれたな!?お前達が息子達のした事を王に告発したと私はメイドに聞いたぞ!?」

「何だと!?お前らが私達の不正を告発したと部下から私は聞いたぞ!?」

「何だと!?よくも、白々しいウソを!!」

「そちらこそ!!」

ラファエロとジニスの間で不毛な言い争いがしばらく続く。

やがて、ヒートアップし続けた末に、ラファエロをジニスが殴り飛ばした。

「貴様…!?ただで済むと思うなよ!?」

その結果、腐敗した騎士達と悪徳領主の私兵団の喧嘩にも似た戦闘が始まった。

その騒ぎの音は市民達の間にも聞こえて、いつの間にか領主邸にアップルR-12の市民達が大勢集まっていた。

「おい、これって…」

「領主の私兵達と、領主の横暴をどうにもしてくれなかった騎士団が…戦っている?」

「なあ!?誰か、通信の魔法が使える奴、居ないか?」

そう誰かが言い出すと、

「あの…私、使えるんですが…」

そう緑髪のメイド服を着た少女が名乗り出た。

喧嘩に似た戦闘は正午まで続き、領主とその私兵達と騎士団の双方が疲れ果てていた。

「くそっ…元はと言えば、お前達が我が子達のした事を王に告発したから…」

「いや、お前らが私達がお前らから金を受け取っている事を王に告発したから…」

その言葉を聞き逃さなかった者が居た。

「いや、どちらも本当だよ。それも、今この場でね」

ふいに、2人の耳元に若い男の声がした。

「「!?」」

困惑した表情でルファエロとジニスの両者は振り向いた。

その場にいたのは、赤みのかかった金髪の若い男…言われてみなければ王子様のような印象を与えるが、彼こそが…

「忘れていたわけではないよね?このゴールデンジューシー大陸の国王、カイン・レド・ゴールデンジューシーの顔を」

「な…何故、あなたがここに!?」

「まず、君達の風評は前々から私の耳にも届いていてね。それで、ずっと気になっていたんだけれど、そこのクルスとかいうメイド服を着た男の娘がこの騒ぎを魔法で通報してきたので私自ら出向いてきたわけさ。」

そこまで言ったカインが指をパチンとならすと、別の騎士達がカインを取り囲むように現れた。それも、アップルR-12の騎士達よりも重武装の…彼らは…。

「国王直轄の騎士団!?」

「そうだよ。ラファエロ、ジニス」

そう集まっていた市民達の群衆から現れて言い放ったのはエアルで…エアルを先頭にマーシャ、ローゼン、ヴェルデーアが群衆から出てきた。

「私のお母さまを介して、あなた達の行為を国王に告発しました。」

マーシャが言い放つ。

「そして、この戦闘を起こさせた目的は君達を仲間割れさせて国王の前で自白させるだけじゃあないよ!!」

ヴェルデーアがそう言うと、領主邸の窓が突然割れて人影が飛び出してきた。

現れたのは、エリス、ドロシーの2人で、カインの傍に降り立った。

「これが発見できた限りの、領主一家の不正と横暴、闇の職人や闇の武闘家と繋がっていた証拠全てです。」

そう言ってエリスは領主に書類の紙束などの証拠をカインに渡した。

「争っていたからね、斥候の技術に長けたあたし達なら楽に忍び込めたよ!!」

ドロシーがそう言い放つと、向こう側から走ってくる姿があった。サーシャとスズネ、サムソンだった。

「格闘家のあたしがもぬけの殻の騎士団の詰め所に空き巣みたいな真似をするのも野暮だったけれど…」

スズネがそうぼやきながらも、サムソンとサーシャと共にカインにまた騎士団の腐敗の証拠となる物を渡した。

「確かに…これだけの証拠があれば、十分だ。」

カインはそう小さくつぶやくと…

「たった今より、領主ラファエロと、騎士隊長ジニスを解任する!!」

ハッキリ、宣言するに至った。

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