雪の日に未来の勇者は旅立った
時は、エアルとマーシャが「
交易都市アップルR-12から、北へ歩いて一週間ほどの所にある小さな村で、生まれ育ったエアルは12歳になった日を境に、両親と兄と姉と2人の妹に、一通の置手紙を残して、家を出た。
絶対になると言っては、周りから笑われてきた、子供の頃からの夢だった「伝説の勇者」になる為に。
交易都市アップルR-12にやってきて「
武器も用意できておらず、腕っ節だけが取り柄のエアルは誰からもパーティを組んでもらえず、ある程度の力自慢であれば倒せるような蛮族や魔物を1人で倒して日銭を稼ぐのがやっとだった。
幸い、シルバーライトニング大陸出身で、防音拳チャックアーツを学んでいた父親から腕っ節を鍛えられていたし、都市で働く魔法使いを目指している姉の練習を見ていた事からある程度魔法は使えたので、何とかマーシャと出会う日まで生きて帰ってこれた。
そして、エアル14歳の頃、何時ものように体と技を鍛えていたエアルに、こんな事があった。
「はあ…はあ…もっと…鍛えないと…」
息切れをしていたエアル。「あの…」と、そこへ話しかける少女の声が聞こえた。
声がした方にいた少女はシスターで、法衣で頭も覆っていた。
「修行、頑張っているんですね。」
「ああ。」
少女の言葉にエアルは答えた。
「私も聖職者として神聖魔法などの修行をしているのですが、ある聖騎士団を支援している方から言われた言葉に悩んでいます。」
「何て言葉だい?」
「強さを求めて、修行を重ねても…それだけは強くなれない、と」
「え?」
「人は…大切な誰かを心から守りたいと願った時に、本当に強くなれる、って。」
「そうか…」
しんみりとした様子のシスターの少女を慰めようとしたエアルは、
「大丈夫、君にだって、そんな大切な誰かを見つけられるさ。」
「そう…でしょうか…」
シスターの少女はまだ落ち込んでいるような様子だったが…そこへ
「マーシャ?そこにいるの?」
と誰かを呼ぶ声が聞こえた。
「あ、お母…司祭様が呼んでいます。励ましてくれて、ありがとうございます。」
そういって、シスターの少女はエアルに礼を言うとそそくさと去っていった。
シスターの少女が去った後、エアルは誰に言うでもなく呟いた。
「そうだよな。大切な誰かを守れたら、それこそ勇者だ!!」
そして、これが互いの生涯のパートナーとなる相手との最初の時間だった事は、2人はまだ思い出せていない。
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