第26話

考古学者「ではみなさん、行きましょうか」


考古学者「涼しくなっていますが、溶岩には気をつけてくださいね」


勇者「分かった、気をつけよう」


魔法使い「溶岩なんて初めて見るね……こんな感じなんだー」


僧侶「……っ」


魔法使い「あ、僧侶ちゃん。だいじょ……」


ヒュー ジュッ


氷幼女「石が一瞬で消えおった……なんという火力じゃ」


考古学者「……気をつけてくださいね?」


僧侶「……うん」


魔法使い(魔法に応用出来たら強そうだな……)



魔法使い「ふぅ……ふぅ……結構歩いたね……」


僧侶「……疲れた」 


氷幼女「わらわにはまだ少々暑いのう……ふぅ」


考古学者「えっと、ここをこう行って……と」


考古学者「よし、目印通りですね。この崖です」


勇者「この崖がどうしたんだ?」


考古学者「どうやらこの崖の上に、魔王城への入り口があるようです」


魔法使い「……ここ、登るの?」


僧侶「……上が、見えない」


考古学者「他に記述は……無いようですね」


勇者「……マジ、かよ」


魔法使い「こんなとこ、どうやって登るのさ……」


僧侶「……ムリ」


氷幼女「……むぅ」チラ


勇者「なぁ、本当にここ以外道はないのか?」


考古学者「ふむ……もう少し調べてみましょうか」ペラ ペラ



氷幼女『おい、きさま』ボソ


考古学者『はい、なんでしょうか?』


氷幼女『まさか、ここを素で登れなどとは言わぬよな?』


考古学者『おや、私に何を期待しているのですか?私はしがない……』


氷幼女『……頼む』


考古学者『おや、高飛車なあなたがお願いとは……暑さで頭がやられましたか?』


氷幼女『……じろり』


考古学者『……ま、最初から手助けするつもりでここまで来たんですが』


氷幼女『なっ……!?』


考古学者『あなたの困った表情を見ていたら、少々いじめたくなりまして』


氷幼女『ぐぬぬ……』



考古学者「見つかりましたよ、登る方法が」


魔法使い「よかったー……さすがにここは登れないよ」


僧侶「……」コクコク


勇者「で、どうやって登るんだ?」


考古学者「溶岩を凍らせ、上までの道を作るのです」


勇者「溶岩を、凍らせる……?」



考古学者「はい、強い氷の魔法で溶岩を凍らせ、それを道にするらしいです」


勇者「魔法使い、出来るか?」


魔法使い「ボクの魔法は自然依存だからなぁ……火山で氷はちょっと自身ないな」


僧侶「……」じー


氷幼女「な、なんじゃ……その目は」


僧侶「……はぁ」


氷幼女「な、なんなのじゃそのため息は!バカにしおって!」


氷幼女「このぐらいの溶岩、わらわの魔力にかかれば……」


ジュッ


氷幼女「……」


氷幼女「はぁっ!むぅん!てやぁっ!」


じゅー


氷幼女「……はぁ……はぁ」


魔法使い「む、ムリしなくていいんだよ……?ボク、頑張ってみるよ」


氷幼女(くそ……魔力が、魔力が戻っておれば……)




魔法使い「むむむ……むーん……!」


魔法使い「んー……氷の柱は作れるんだけど……」


魔法使い「登れる道を作るのはちょっと無理かも」


勇者「……弱ったな」


考古学者「いやー、困りましたねぇ……」


魔法使い「やっぱり、登るしかないのかな?」


僧侶「……かな?」


勇者「まぁ、しかたねぇか……他に方法がないんじゃな」



氷幼女『……おい』


考古学者『はい、今度はなんでしょうか?』


氷幼女『……魔力を』


考古学者『うん?』


氷幼女『魔力を、くれぬか』


考古学者『あの魔法使いから貰っては?有り余っているようですし』


氷幼女『今さらとぼけるな。人間と魔族じゃ魔力の波長が合わんことくらい分かっておろうが』


考古学者「……構いませんが、分かっていますよね?私の魔力の属性を』


氷幼女『……分かっておる。それでも頼んでおるのだ』


考古学者『……そこまで人間のために尽くす理由が、よく分かりません』


氷幼女『奇遇だのう、わらわ自身よう分かっておらんわ』


考古学者『……くっく』


氷幼女『それにおぬしも大概じゃろうが』


考古学者『それはまぁ、確かに』



考古学者『面白いあなたの顔に免じて』


パシ


氷幼女『……ぐ』


ジュー


考古学者『魔力を差し上げましょう、たっぷりとね』

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