第14話

勇者「おー……なんか緑が見えてきた……」


魔法使い「やったー!やっと雪ともおさらばだね!」


氷幼女「ふむ……名残惜しいが、雪とお別れじゃな」


魔法使い「……ん」


僧侶「……敵」


勇者「……むっ!」


魔物「ギャギー!ギャギギー!」バサッ バサッ


魔法使い「空を飛んでるタイプの魔物……厄介だね」


氷幼女「ふむ……『ナゼ、ニンゲントマモノガ?』か」


僧侶「……分かるの?」


氷幼女「わらわも魔族であるからな。雪山の魔物と言葉の違いはあるが理解ぐらいは出来る」



氷幼女「『ニンゲン、クウ。オマエモ、クウ』か。ふん、真面目に聞き取って損したわ」


魔物「ゲギャギー」バサッ ヒュバッ


氷幼女「ふん、甘いわ!」クルン クルン ザシュ


魔物「グゲギャ……」ボトッ


氷幼女「ふん、次に頭を付けるならもっと大きな脳みそにするんじゃのう」


勇者(うわー……こっえー、この人……ほんと、味方にしててよかった)


魔物「グギギ……グガァ」ボバァ


氷幼女「こやつ、火を……使いおるか」ズザ



魔法使い「させないよっ!……巻き起これ!暴風!」ビュゴワワワワ


魔物「グギャッゴ……」バサ バサ


僧侶「……いまだ」シャキン


魔物「グ……ゲ」ドサッ


魔法使い「大丈夫だった?氷」


僧侶「……?」


氷幼女「……ふ、ふん」


氷幼女「……か、感謝はしておくぞ」


勇者(……なんか、補助呪文も必要なくなってるんですが……)



勇者「ここが、東の森か……初めて来た」


魔法使い「木の高さとか、故郷の森とは比べ物にならないねー」


僧侶「……暑い」ダラダラ


勇者「暖房の実食べ過ぎるからだろ……」


氷幼女「ぐ……ふぅ、ふぅ」ダラダラダラダラ


魔法使い(なんかこんまま溶けてもおかしくなさそう……)



氷幼女「く……氷を纏えればこんな暑さなど……」ダラダラ


勇者「ほいさ」ポイ


氷幼女「む、なんだこれは?」


勇者「冷房の実だよ。火山に行くなら必要なもんだしな」


勇者「少しは楽になるんじゃねぇかな、と」


氷幼女「ふむ……もぐもぐ」 


氷幼女「ほう、これは凄い……体がすっきりしよる」


魔法使い「……氷の魔族は貧弱だねぇ。このぐらいの暑さどうってことないでしょ?」


氷幼女「む、むむむむぅ……」



魔法使い「い、いてっ」


勇者「……」ポコ


氷幼女「な、なにをするのじゃ!」


勇者「喧嘩両成敗、ってやつだ。くだらない争いしてんじゃねーよ」


勇者「それぞれ弱点があって、それを補うのがパーティーなんだから」


勇者「弱みほじくってうじうじ言わないこと」


勇者(俺が言うと凄い説得力だ)


魔法使い「……ごめん」


氷幼女「……わらわこそ、すまんかった」


僧侶「……あつ」ダラ ダラ



僧侶「……ひんやり」モグモグ


勇者「……人が話してるときに、勝手に実を取って食うんじゃねぇっつの」ポコ


僧侶「……いたい」


勇者「で、こっから先はどう行けばいいんだ?火山まで」


氷幼女「……知らぬ」


勇者「え」


氷幼女「わらわは、ここを抜ければ火山があるということを知っているだけじゃ」


氷幼女「行きかたなんか知るかい」


勇者「そういうのは先に言ってくれよ……」



勇者「遠めに火山が見えてるとかだったらよかったんだけど……」ピギャー  ピギャー


魔法使い「見渡す限りの大森林だね……」


僧侶「……広い」


氷幼女「な、なんじゃ!わらわが悪いと言いたいのか!?」


氷幼女「どうせ、進まないことには話はすすまんじゃろうが!」


勇者「……まぁ、そうだよな。いっつも行き当たりばったりなんだし」


魔法使い「んー、とりあえずまっすぐ行ってみようか」


僧侶「……同意」



氷幼女「うう……さっきより軽くなったとはいえやはり暑いのう……」


勇者「そんなんで火山行って大丈夫なのか?」


氷幼女「……まぁ、その頃には魔力も戻ってるじゃろうて!ハハハ……」


勇者(魔力戻ってなかったらどうすんだろ……)


魔法使い「しっかし、なんか得体の知れないものがいっぱい生えてるねー」


勇者「魔物がまぎれてるかもしんないから気をつけろよー」


僧侶「……周辺警戒」



氷幼女「む……あれは……池か」


勇者「ん?池が珍しいのか、お前」


氷幼女「凍ってない状態の池を見るのは初めてじゃからのう。少々、物珍しい」ぴちゃ


氷幼女「……やはり、ぬくいのう」


勇者「ここらで、いっちょ休憩にするか。大分歩き疲れたし」


魔法使い「さんせー!むしむしして余計体力使うんだもん、ここ……」


僧侶「……疲れた」ぺたん


氷幼女「……なんだか、足止めしたようで悪いの」


勇者「んなこと気にするなって。疲れてたのはほんとなんだから」



氷幼女「もっと冷たかったら気持ちよかったのにのう……」ぱしゃぱしゃ


魔法使い「んー、結構冷たいと思うけどなー」ぴしゃぴしゃ


僧侶「……微妙?」ぱしぱし


勇者(なんかみんな水面叩いて遊んでるな……)


勇者(そこはかとなく男は混じりにくい雰囲気出てるよな、こういうのって)


勇者「……久々に釣りでも、するか」ガサゴソ

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