テレビ東京が臨時ニュースを放送する日、世界は終わる

にのい・しち

第1話 テレビ東京とは

 カルロス・ゴーンいわく

 ――――あなた方は、もっとも信頼できる報道機関です――――


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『新たな元号は……令和です』


 テレビ速報で元号改正の報道を見て思うところは「正直どうでもいい」だ。


 大学を卒業して就職したが、馴れない会社での仕事に精神を病んでしまい、会社と共に新社会人生活は早期退職となった。

 それ以来、自宅警備員ニートとして実家ほんぶのパソコンでネットを通じ、世の中を監視する日々。


 元号が変わり日本で様々なことが変わりつつあるが、やはり変わらない物もあるというのは、日本民族が感じる特有の美徳なのだろう。

 俺はリモコンのチャンネルボタン「7」を押す。


 他のテレビ局が中継で元号改正のニュースを流す中、ここだけはいつもと変わらず、旅番組を流していた。


               

             《テレビ東京》



 縮めて「テレ東」

 子供の頃から、夕方や深夜アニメ、朝の韓流ドラマに昼の映画などを見ていた為、好んでこのチャンネルを見ている。


 はぁ~、世の庶民共は元号ごときでドンチャン騒ぎをするのだな。

 これだから脆弱な日本の社会システムに取り込まれ、労働を強いる負け組たちは品格に欠ける。



 こんな愚民とは違い、高い次元で社会の矛盾を暴き、掲示板に書き込む俺の崇高な理念がいかに気高いか、よくわかる。

 さぁ、今日もユーチューバーのコメに誹謗中傷を書き、アイドルのSNSに卑猥なメッセを残して、こいつらの化けの皮を剥いでやるぞ!


 そうすることで、こいつらに騙されている愚民を正しき方向へ導く。

 言わば、俺は天より使わされた使者なのだ。

 これが炎上バズって、今の俺は2ちゃんねるの同じ同志ニート達からカリスマとして崇められている。


 何もテレ東は、衛星放送や専門チャンネルのように、四六時中、韓流ドラマやアニメ、映画を流してるわけではない。 

 ちゃんとニュース番組や株の情報番組はあるし、番組と番組の合間にニュース速報を流す。

 元号改正も他局より遅れをとったものの、夕方のニュースでちゃんと流した。

 でも、ニュース以外の番組に臨時ニュースを差し込むことはない。

 テレ東以外で通常の番組を変更しないのは、Eテレ。


 Eテレは子供向けの教育番組なのでニュースが入り込むことはないので、それは除外して、他の民法と比較しても、ここまで稀なテレビ局はないだろう。


「2ちゃんねる」では、このテレ東のブレない姿勢というかポリシーを、褒め称えるネット民までいる。


 何より、映画『大脱走』さながらの逃亡劇で、一躍世界のギャングスターになったカルロス・ゴーンが、日本の報道機関のインタビューを拒んだが、その中で唯一取材を許したのがテレ東だ。


 あのゴーン氏が認めたテレ東と言っても、過言ではない。


 そんなテレ東の歴史は戦後から始まる。

 敗戦後、GHQが占領下の日本へ駐在していた時、米軍のレーダー専用局として使われていたが、米軍が撤退後、同局は使われなくなり日本科学技術振興財団が譲る受けて開局。


 経営母体が科学財団ということもあり、科学番組や教育番組を主体としていた他、NHKと並び唯一CMを挟まない民放とされていたが、経営上の問題から他の民放と同じくスポンサーのCMを流すこととなった。

 ついでに言うと、パソコンが一般に普及し始めた時代、いち早くパソコン専門番組を取り入れたのは何を隠そう、テレ東だ。


 ウィキペディアの情報だから情報の信憑性は、お墨付きだぜ!

(※ウィキペディアの情報が100%正しいとは限りません)


 テレ東は令和に入り開局55周年という長い歴史を持つ、関東を代表する放送局。


 しかし、55年も続いていれば紆余曲折。

 科学番組からIT系番組を経て伝説の深夜番組、ギルガメッシュ・ナイトへつながるのだから、歴史の深さを感じる。


 そんなテレ東が平成に入り流した臨時ニュースは、3.11の大震災と隣国のミサイル発射らしい。


 ニートが続くと、社会のストレスから開放されることで、視野が広くなり、今まで気づかなかったことや見えなかったことが見えてくる。


 その一つが、各チャンネルの番組。

 俺のようにニートとして才覚ある人間は朝昼晩、ニュースやお子様番組、昼のドラマやバラエティ、午後の映画、ゴールデンタイムの裏番組など、全てを把握してしまう。


 さして面白くない番組ですら、なんとなく毎週見ているので、初回から最終回までの話を網羅。

 むしろ仕事の無いニートは毎日が日曜日、日々夏休み。

 1週間のサイクルが崩れ曜日感覚がわからなくなる。

 故に、テレビを見ることで曜日感覚を養っている。

 今では俺にとってテレ東は、マイ・フェイバリット・スピリッツ・テレビジョンさ。

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