億万長者への道

昆布 海胆

前編 和井帰ってくる

「よぅ、久しぶりだな」

「あぁ、元気か?」


突然学生時代の友人『和井 健太』から連絡が来たのが1週間前の事であった。

Facebookで俺の名前を検索して連絡を取ってきたのだ。

学生時代から頭の良かったこいつは想像の斜め上を行く事をしでかして俺たちを驚かせていたものだ。

そんなこいつが・・・


『儲け話が在るから手伝ってくれ、上手くいけば億万長者だぞ』


と言って連絡を取ってきたのだ。

勿論そんな美味しい話には裏があると考えるのが普通だ。

だがこいつは・・・


『大丈夫だ、合法で絶対に損はしない。そしてお前には絶対に損はさせない』


そう言い切ったのだ。




「まぁ入れよ」

「その前に、これを部屋に運ぶの手伝ってくれ」


そう言った和井は車のトランクから段ボール箱を幾つも運ぶように言い出した。

奇妙に思いながら俺はずっしりと思いそれを手に持つ・・・


(まさか麻薬?それとも密造?)


だが今の借金に追われる生活を終わらせる為にも俺は覚悟を決めてそれを手に取った。





部屋の隅に積み上げられた段ボールは全部で8つ。

俺は和井から語られる話に内心ドキドキしながら向かい合って座った。


「まずはこれは準備資金だ。3億円ある」

「・・・はっ?」

「お前には全部話すから落ち着いて聞いてくれ・・・」


そうして和井から語られた今までの経緯は恐るべき計画であった・・・









「なんでまたこんな田舎の整備工場で働きたいなんて言うんだい?」

「いや~都会にどうしても馴染めなくて、仕事が決まったのならこの村に引っ越そうかと思いまして。車の整備でしたら少し経験があるので即戦力になれるかと思いまして」

「怪しいが・・・まぁその若さは戦力になるしな・・・いつから来れる?」

「はい!来週にでも!」


山の中枢に在る国道の通り道から少しずれた田舎。

これといった名産物も無いこの田舎に和井は一人訪れていた。

この日、就職が決まった和井はこの村に住民票を移し生活を始めた。


若い人手というのは田舎では非常に重宝され、持ち前の明るさと社交性でみるみる村に受け入れられた和井。

僅か半年後には持ち前の頭脳で村長の相談役にまで上り詰めていた。


「村おこし・・・ですか?」

「あぁ、何か良い方法は無いものかのぉ?」


世間ではふるさと納税等様々な方法で成功事例があるので村長は和井に相談してきたのだ。

そこで和井は少し考える素振りを見せ・・・行動を開始した。


「では・・・この村の観光名所を作りましょう」









「はぁ?底なし沼?」

「そう、それを村の観光名所として手作りのホームページを作ったんだ」


和井の話に俺は声を上げる。

そんな観光名所なんて聞いたことないからだ。

だがしかし、目の前には3億の現金が実際に在る。

俺は和井の話に続けて耳を傾けた・・・

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