第16話 侵入者2


 「ここの本家の跡継ぎは女だと聞いてたんだけどなあ」


 乙葉が去った後、その侵入者はつぶやいた。脇にはじっとりとイヤな汗をかいていた。


  (まさかアレが分家ってことかいな。末恐ろしいやっちゃ)


 「アホンダラ!」


 「あが? いて、いてえよ!」


 茂みから現れた三毛猫が少年の首にかみついた。


 「近づきすぎるなと言っておいたのに、この未熟者が!」


 「すまん、すまんて。でもおかげでいいものが見れたぞ」


 「・・・霊力操作か?」


 「ああ、簡単に本家当主レベルまでできていた。それにそれ以上もできそうな様子だった」


 「・・・確かここの分家はあまり公開討伐に出てなかったはずだが」


 「隠してたってことか」


 「いや、ここは順位にこだわる家系ではない。単純に興味がないのだろう」


 三毛猫が軽やかに飛び上がり、塀の上で振り向いた。


 「ともかく行くぞ。その分家の情報はしっかり親父殿に伝えておけよ」


 「・・・失態は黙っててくれる?」


 「カカカカカ、なわけなかろう。たっぷりしごいてもらえ。当主」


 「笑うなよ。きついんだぞ、あれ」


 ーーーーーーーーーーーーーーーー


 「ど、どうしたの?」


 乙葉が生徒会室に戻ると、美咲が心配そうに聞いてきた。


 「・・・大方偵察の陰陽師だろ。敵ではないらしい」


 「そ、そう、なんだ」


 「もうそろそろ昼休みも終わるし、戻ろうか」


 「うん」


 乙葉は美咲と生徒会室を出て、廊下を歩きだした。


 (鴉、)


 «なんだ»


 (さっきの男、どう思う?)


 «お前の敵では無かろう。大概の陰陽師は対人戦に向いていない»


 (それはわかってる。神楽祭関係か、ってことだ)


 «わかっとるわい。まあ十中八九そうだろうな。地域によっては公開討伐の順位を重視するらしいからな»


 「乙葉?」

 

 「ん? なに?」


 「さっきの人って、神楽祭関係なの?」


 「・・・やっぱり気になる?」


 (正直かかわってほしくないんだがな)


 「うん、気になる、かな」


 「神楽祭ってさ、公開討伐があるだろ。簡単に言うと、そこでいいとこ見せるために精を出すやつらがいるらしいんだよ」


 「そ、そうなの⁉ 余裕だなあ、」


 「ああ。ま、でも活躍したからといって何かあるわけじゃない。ただ単に自分たちの力を誇示したいだけだ」


 「そ、そっか」


 「・・・だから特に気にしなくていいよ。公開討伐は辞退もできるし、神楽にだけ集中したほうがいい」


 「うん。そうだね。放課後さ、神楽の方も見てくれない?」


 「いいけど、俺はあまり型とか知らないぞ?」


 「そういう人たちに見せるんだからさ。感想が聞きたいかな」


 ※次回更新 4月1日 水曜日 0:00


















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