第10話 昼休み②


 「じゃ、まず右手の操作からやってみようか」


 「う、うん」


 乙葉と美咲は生徒会室で霊力操作の練習をしていた。まず、乙葉が具体的な霊力操作を伝えていく。


 「まず、腹式呼吸をしてみて」


 「腹式呼吸?」


 「ああ、深呼吸をして丹田に意識を集中させると、格段に操作しやすくなる」


 「わ、わかった」


 美咲は四苦八苦しながら、息を吐いたり、吸ったりしている。


 「ふう~。こ、こんな感じ?」


 「そうそう。そんな感じ。で、次に手の血管を意識する」


 「血管?」


 「霊力を血管に通すイメージをしてみて。それで少しは良くなるはずだから」


 美咲が右手に霊力を集中させ始めた。


 「あ、なんかできそう」


 (・・・結構順調だな)


 乙葉から見て美咲の操作している霊力は十分すぎるほどだ。これならうまくいくと思ったときだった。


 「ん~~、」


 「み、美咲?」


 「ん~~~」


 (こ、この霊力量は、まずい・・)


 美咲の霊力がどんどん上がってきている。正直操作しきれたとしても右手には収まりきらない。


 「あ、」


 「あ」


 (まったくもう!)


 ドン!


 右手に入りきらなかった霊力があふれだして、爆ぜたが、乙葉が障壁を作って封じ込める。

 

 「霊力込めすぎだ。集中するのはいいことだけど、夢中になりすぎ」


 「ご、ごめん。次はうまくやるから!」


 しかし、今度は霊力の量はよくても、捜査ができなていない。


 (ホントに信三さんとは正反対で、霊力感知が苦手なんだなあ)


 乙葉は美咲に後ろに回り、自分の右手を彼女の右手に添わせる。


 「ひゃう⁉」


 「いいか。俺がお前の波長に霊力合わせて少し流すから、それに従ってやってみて」

 

 一瞬美咲は肩を震わせたが、おとなしく乙葉の言うことに従っている。


 (頼むから、セクハラとか言わないでくれよ)


 乙葉は内心そんなことを考えながら、波長を合わせた。


 (珍しい波長だな。周りの影響が大きいのか?)


 波長を合わせ、霊力を流す。


 「お、おおお」


 美咲が感心したように声を上げた。未知の感覚だったのだろう。乙葉が少ししてから、霊力を止めてもそれなりにできるようになっていた。


 「で、できた! できたよ‼」


 「よし。それじゃ、次はそれを全身に巡らす練習を、と」

 

 キンコーン、カンコーン


 昼休み終了の鐘が鳴った。


 「じゃあ、教室に戻ろうか」

 

 「うん、そうだね」


 荷物をまとめ始めた美咲に乙葉は向き直りながら、続けた。


 「初日でここまで行けば大したものだ」


 「う、うん」


 「それでな、えっと」


 「?」


 「よく頑張ったと思うぞ。俺は」


 「!、うん!! ありがとう!!」


 ※次回更新 3月11日 水曜日 0:00

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