布石

「え?じゃああの事故は偶然起こったものじゃないってこと?」


「そうかもしれないってだけで、確証があるわけじゃないけどな」


 セレスから尋ねられ、オレはそう答えておいた。

 セレスは少し不安そうな顔をしている。


「ガゼルなら、なんとかできるんじゃない?」


 不安から誰かを頼りたくなったのか、オレに訊いてきた。


「いや、どうだろう。敵が誰なのか分からないのにどうにかするって言ってもな・・・」


「それでもなんとかできるのがガゼルなんじゃない?」


 えらく高く評価されているようで、そんな無茶ぶりをしてくる。


「買い被りすぎた。オレはそこまで万能じゃないぞ」


「そんなことないよ。僕を救ってくれた君ならきっとーーーーー」


 言いかけた言葉を途中で止める。

 何か思うところがあるようで途中で口を紡いでしまった。


「みなさん、こんなところにいたんですね」


 そんな話をしていると、クシェルとオリビアがやってくる。


「となり、いいかしら?」


「あぁ、どうぞ」


 オリビアがオレのとなりに、そのとなりにクシェルが座る。


「競技の準備をしてなくていいのか?」


「競技は明日だもの。それに準備ならもう済んでるわ。あとは本番で結果を残すだけよ」


 オリビアからは、熱い決意のようなものを感じる。

 よっぽどこの魔法競技会で勝ちたいんだろう。

 オレは、大切なことを伝えておくことにした。


「今回の魔法競技会、たとえ何があっても絶対に勝てよ」


「当たり前よ」


 オレの真意を知ってか知らずか、そう強く答えた。

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