王都

 悪魔を討伐したオレは、女子供を連れて村に帰ってきた。

 村では男達が心配そうにしていたが、オレが帰ってくるなり走って迎えてくれた。


「エレノアっ!レイモンドっ!」


 レイクも妻と子供を見つけると泣きながら抱きしめていた。


「ありがとうガゼル!本当になんて礼を言ったらいいか」


「あなた、この方は?」


 こっちを見つめながら、エレノアはレイクに尋ねた。


「こいつはガゼルって言ってな、魔法騎士志望で俺たちの傷を治してくれたんだ」


 そうだったんですか、と言うともう一度オレを見て、深々とお辞儀をしてくれた。


「みんな無事なようだな。本当にお前には助けられたよ、ありがとう。何か礼をしたいんだが?」


「だったら馬車を一台出してくれませんか?明日までに王都に行きたいんです。それから家も直しておきますよ」


 そう言うとオレは《時変魔法》エヴィを使った。

 《時変魔法》エヴィとは、対象物の時間を巻き戻したり進めたりする魔法である。

 半壊していた家の時間を巻き戻し、壊れる前の状態に復元する。


「ガゼル、お前こんなことまで出来るのか…すごいな。きっと魔法騎士になれるさ!」


 レイクに励まされて、オレは馬車に乗りチベット村を後にした。





 馬車に揺られて数時間、王都が見えてきた。


「でかいな」


 思わず声が漏れる。

 初めて見る王都は圧感の一言だった。

 山のようにそびえ立つ街並みに、その頂上には城らしい建物が見える。あれが恐らく王宮だろう。

 もう時間は夕方だった。そろそろ眠る宿探しをしないとな。

 ……と、その前に。

 オレは鍛冶屋を目指して歩き出した。

 王都に来たら剣を新しくしようと思っていたのだ。

 今の剣は、家に一本だけあった剣を父さんから譲り受けたもので、一級品だが古いものでサビがひどい。

 悪魔との一戦で、今にも折れそうなぐらいボロボロだった。

 今までは斬る直前に[鋭利化えいりか]や[硬質化こうしつか]、[魔力耐性まりょくたいせい]などをの魔法を込めて戦っていたが、そろそろ限界みたいだ。


 店にに着くとなにやら声が聞こえてきた。


「すいません、もう少し安くなりませんか?」


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