詩コン 3月号


『鍵』2020.3.6


開けられなくて

困っているの?

それとも

閉められなくて

困っているの?


◇ ◇ ◇

私が書くものって、セリフっぽいといいますか、問いかける系の詩が多いかもしれません。今後分析の価値ありですね。

哲学チックに見えなくもないですが、鍵がなくて困っている時って、まあだいたいどっちかだよね、という単純なものです。

鍵といえば、私の母校(高校)は自分のロッカーに頑丈な鍵をつけるという規則がありまして、頑張ってガシャンガシャンやったら外れそうな物をつけていた、とか、場合によっては買い換えさせられることもありました。私は買い換えた記憶があります。

◇ ◇ ◇


『鍵』2020.3.7


棺桶に入れて一緒に燃やすから


いつでも帰ってきて


◇ ◇ ◇

鍵、燃えるかわからないですけど。そうなった以上、鍵とか玄関とか関係ないんじゃないかとも思いますけど。この情勢では何を言っても不謹慎な気もいたしますけど。

火葬文化ならではの表現だよなと考えたまさにいま、火・炎・焔をイメージした詩を書きたい気持ちを見つけました。あまり書いたことないような……私の中に火と結びつけて出力できる熱いものがないのかも……。気分が上がった時にでも「燃えるぜ滾るぜ前進あるのみ超ポジティブ詩!!」にも挑戦したいです。

◇ ◇ ◇


『浮』2020.3.13


ただ、なんとなく、ね。


そう、それは


沈まないというだけで


なんの意思も意志もなく


あるとすれば遺志だけで


ただ、なんとなく、なんだ。


もしかしたら


多少の意識を持って


漂うのかもしれないし


揺蕩うのかもしれない


でも、それも、なんとなく、だよ。


◇ ◇ ◇

イメージ効果音:たららららぁ

抵抗や摩擦はなく、ぱたぱたぱたっと進むリズム感。風に押されてゆるゆるゆるっと流れていく感じ。です。

イメージ画像:水面に浮く水草

ちぎれて、浮いてる、水草。あるいは、どこからかやってきて水面に落ちた木の枝のような、植物の欠片。です。

……っていう情景の詩です。叙情詩の雰囲気が出てる気もいたしますが情景詩。

どこの行間を空けるかでちょっと迷ったんですが、ぽつんぽつんとした感じが良いなぁと思い、全ての行間を空けてみました。

◇ ◇ ◇


『沈』2020.3.21


ごぼごぼごぼ……

さからえず

すくわれず


ずずずずずず……

さからえず

すくわれず


すくわれず

すくいあげられず

下へ下へ


下へ


◇ ◇ ◇

どなたかの詩を読んだときに、「救う」と「掬う」を、こう、なんか、良い感じにどうにかこうにかした詩を書けるようになりたいなーと思いまして、その練習のようなものです。

物理的に沈む先は、水か土くらいしか思いつかなかったです。精神的にも沈む感覚はありますし、私個人の感覚かもしれませんが、物語の世界に入る時も沈む感覚があります。言葉の世界に、どっぶううぅん……ってダイブする感覚とも言いましょうか。

平仮名と漢字の使い分けは、詩を書くにあたって意識していることのひとつです。これは強調されるかなと思い「下」だけ漢字にしています。

◇ ◇ ◇


『沈』2020.3.21


太陽が

海へ沈みゆくさまを見て


「ああ、

 真っ赤な真っ赤な太陽が

 青い海へと飲み込まれ

 やっと一つになれるねぇ」


真っ赤な髪した

心臓ハートの魔女様


青い鱗をばらまいて

寂しそうに笑ったよ


◇ ◇ ◇

詩的童話シリーズに出てくる心臓ハートの魔女様です。彼女は青い物を蒐集しているのですが、鱗はコレクションのひとつです。そう、あの鱗です。

主宰者詩コンさんのツイートの「沈」の色味を見て、「あー、太陽も沈むって言うなーおーー? 赤×青っていったらこの人だよなぁ……」って流れで思い浮かんだシーンです。詩的童話にならってリズムを意識しました。

彼女の話も書き起こしたい気持ちはあります。なぜ青い物を蒐集するようになったのか、魔女としてどうなのか、とか。気持ちがあればいつか書く。

◇ ◇ ◇


『黒』2020.3.29


私は、たくさんの文字に触れてきました。


私は、たくさんの文字と触れていきます。


これからも、きっと、あなたと一緒に。


◇ ◇ ◇

これまで生きてきた中で大量の文字を目にしてきたわけですが、たぶん、黒い文字が一番多かっただろうなぁ……という発想です。

私はTwitterの画面を白背景・黒文字のままにしてあるのですが、黒背景・白文字にしてる方もいらっしゃるかしらと思いまして、カクヨムのスクショ画像を貼りました。この詩は黒い字で見てもらう必要がありましたので。

今更ですが、「あなた」あるいは「あなた」にした方がわかりやすかったですね。

◇ ◇ ◇


『黒』2020.3.29


万華鏡みいる瞳の色は黒


◇ ◇ ◇

十代の頃に書いたものを集めた詩集『言葉ことのは遊戯』の「十七音」(https://kakuyomu.jp/works/1177354054880500942/episodes/1177354054880501066)で既出なのですが、黒といえばこれだよな、と思い掘り出しました。

万華鏡って言葉も素敵ですけど、物としても素敵ですよね。残念ながら今は持ってませんが……。昔はぼえーと覗いていたもんです。すんごい高級な万華鏡もあるようで、なかなか奥が深い。

◇ ◇ ◇



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