第3話 登場人物に敢えてピンチの場面を与える。

 登場人物を敢えてピンチの場面に放り込んでみる。

 これも一流の作家がよく使う手ですね。


 筆が止まってしまった時、登場人物をピンチの場面にさらすことは多く(今は作家は万年筆で小説を書かないので、筆が止まるは死語ですね)。一般的に、起承転結の山高く、谷深くが小説創作のセオリーです。


 登場人物を天高く持ち上げ、思い切りヨイショしたあとで、谷底深く突き落とすのが優良な小説といわれる由縁で或る。


 そこからいかに主人公が這い上がるか、その道のり、過程、そこに至るまでの勾配の差が大きければ大きいほど、小説は奥行きを放つといわれていて、主人公に輝きを与えることが多い。


 俗にいう創作における光とかげがこれにあたり、光る場面ばかりにスポットを当てるのではなく、かげを演出することにより、光の当たる部分を浮き彫りにさせる、演出効果を伴わせるのがベストかなとも思う。


 なので主人公に対する脇役(恋敵など)は、いわゆる作品における影を演出する意味でとても重要な役割を担うことになる。


 陽気な主人公なら、脇役に暗めの、独特の雰囲気を放つ異性でキャラを立てるのもありかなと思うし、電極のプラスとマイナス、磁石のN極とS極のような両極端な登場人物を作中に用意すべきかなとも思う。


 もしも主人公の日常を小説のワンシーンとして切り取っていくのなら、単調な毎日を思い描くだけでは物語は膨らまないし、時に、ドラマチックな展開を加える意味でも、主人公の家族が病気になったり、恋人が交通事故で入院するもよし、様々な展開を受け入れるチャンスだと捉えるべきである。


 小説が行き詰る時、創作の現場で筆が進まない時というのは、小説の展開にどこか無理があることが多く、あなたの深層心理な部分で、自分が書いた小説のどこかを本能的に否定していることが多い。


 たとえば小説の設定に矛盾点があり、設定ミスがあったり、小説そのものを自己否定してることが多く、自分イチオシの名作というものは意外とスラスラと時間をかけずに書けてしまうものだ。


 よくできた小説というのは、プロットも優秀なことが多いですが、それだけでは語れない、次から次へと無意識に展開が進んでしまうような、神がかった卓越した何かがあるように思う。


 それはひとえにテーマが優れているからでもあり、小説における登場人物のキャラが立っているからでも或る。


 時間を多くかけたから必ずしも優れたものが書けるというのは大きな誤りであり、意外や意外、優れた小説というものは、すらすらと時間をかけることなく頭に浮かび、言葉を紡ぐことができるように思う。


 もしもあなたの思い描く小説が、いつものようにポンポンと話が展開しないなら、それは小説のどこかに矛盾を抱えていて、どこかに不自然さがあったり、心のどこかで次なる展開を求めている証でもある。


 もしも小説がエタってしまいそうになったなら、登場人物を敢えてピンチの場面に放り込んでください。そこからのドタバタ劇、復活劇で、小説はかなりの割合で四方八方、展開していくはずです。

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