第13話 朝から修羅場!?



 ――皆様、ごきげんよう。


 のっけから修羅場に巻き込まれ、頭が痛いヴィヴィアンです……。



 突然、前世の記憶が甦り、この世界が乙女ゲームに酷似していることに気づいてから早、一ヶ月。


 わたくしが悪役令嬢で、ヒロインさんが成り上がる為の踏み台にされるという、悲惨で過酷で散々な未来が待っていると知って愕然としたあの日から、全力で回避を目指して突っ走ってまいりました。


 昨日、魔法学院の入学式初日に一気に綻び始めてしまうまでは、順調そのものだったのです。


 何故か自分の婚約者とは別の攻略対象に構われたり、その方とヒロインさんまでが同じ記憶持ちの転生者だと判明したりと予想外な展開が待っていて……。


 只々、翻弄され続けていた一日がやっと終わったと思ったら、これですわ。


 恐れていた事態が起こってしまいました。



 迅速に対応出来なかった付けが翌日にもう、回ってきたようです……早すぎではありませんこと!?




「違うんだ、リリアンヌ。信じて欲しいっ。ヴィヴィアン譲とは本当に何でもないんです」


「フレデリック様、分かっていましてよ。こういう時、殿方は皆様そのようにおっしゃるそうですわ」


「な!? ちょっ、だ、誰がそんな余計なことを貴女に吹き込んだんだっ」


「シリル様ですわ……ヴィヴィアン様の婚約者の。同じ悩みを抱える者として、ご相談に乗っていただいておりました。 私情を挟まず客観的に物事を見れるシリル様のご意見は大変為になりますもの」


「いや、だから手紙にも書いた通り、僕達は本当に運命に立ち向かう同士として以外、やましいことは何もないんですっ」


「まあぁっ、運命に立ち向かう同士……とは。何ともロマンチックな間柄ですわねぇ?」


 ちょっ、フレデリック様!?


 リリアンヌ様を煽ってどうしますのっ……さすがに恋愛音痴のわたくしでも今のはまずいと分かりましてよっ。


 間違ってはいないですけれど、その言葉のチョイスは最悪ですわーー!? 




 それに、今のリリアンヌ様のお話ですと、シリル様もわたくしとフレデリック様の仲を誤解をなさっているような……?


 どうしましょう、やはりお手紙やり取りだけでは納得していただけなかったのかしら……。


 わたくしが思い悩んでいる間にも、お二人の話し合いは拗れたままですわね。


「そんなロマンチックだなんて……逆ですよ。もっと殺伐としたと言うか……深刻な問題を相談し合う間柄なんだ」


「深刻な問題……婚約者であるわたくしにも詳しく話せない程の?」


「……っ!? それはっ……君を守る為なんです。誓って嘘じゃありませんってばっ。ほら、ヴィヴィアン嬢からも彼女に誤解だと言ってやってください!」


「……今、わたくしから話しましたら、益々話がこじれると思うのですけれど……」


「そこをなんとか…… 僕を助けると思ってお願いします!」


「はぁ、分かりましたわ。リリアンヌ様、わたくしとフレデリック様は貴女様がお考えになっておられるような関係ではございません。彼がこの学園に来られたのは、わたくしを追ってではなく貴女様を愛するからこそなんですのよ?」


「……本当に?」


「ええ、神に誓って本当です」


「本当に本当のことをおっしゃっているのですのね?」


「本当ですってば!」


 ほら、やはりわたくしから申し上げても全然信じていただけないではありませんか!?




 リリアンヌ様は貴族令嬢らしく、とても優しくて思いやりのある完璧な方なんですけれども、婚約者のフレデリック様の事となると、少々周りが見えなくなってしまうと言いますか……思い込みが激しくって、時々暴走してしまわれるところがございますの。


 困ったものですわよねぇ。


 だから、最優先でしっかりと誤解を解いておいてくださいませと申し上げましたのに……。


 お二方は政略結婚が主流の貴族としては珍しく、家同士が決めた婚約者だというのに相思相愛でいらっしゃいますの。


 それなのに何故こう、いつも揉めることになるのか、わたくしには全く理由わけがわかりませんわ。




 ヒューシャ男爵令嬢の事や未来視の事などは迂闊に話せませんし、どう納得させれば良いかと困惑しているところへ救いの手が差し伸べられた。


 ヴィヴィアンの戦闘メイドであるアリスとセレスだ。






「リリアンヌ様、どうか落ち着いて聞いて下さいませ。こう申しては何ですが、ヴィヴィアンお嬢様の幼馴染でいらっしゃる貴女様は、よくご存知のはずですわ。お嬢様が嘘をつくのが下手で、すぐ顔に出ておしまいになる分かりやすい方だということが……?」


「まあ、アリス……わたくしったらつい我を忘れてしまって……そうでしたわね。ヴィヴィアン様が単純な方だというのは承知していてよ」


「そうでございましょう? お嬢様のおっしゃることに限って、裏表などありません。ここはお二人の友情に免じて、お嬢様のお言葉を信用していただけませんか?」


「…………っ!?」


 ……これは、リリアンヌ様とアリス達の、わたくしに対する挑戦状かしら!?


 リリアンヌ様が、わたくし自身をしてくださったのは良かったのですけれど、何だかモヤモヤしますわ~っ。





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