第2話 おっぱいの感触は最高

 料理が運ばれてきた。カナのハンバーグは子供用だ。なんでも、材料にすごく気を使って作っているのだとか。子供の食べ物にだけは気をつける人が多いので、このお店がお子様づれの客に大人気になっている。

 祥子がハンバーグをちいさく切って子供用の皿にいれる。よく冷ましてカナに与える。カナはちいさいフォークで不器用に口に運んだ。

「おいしいわ」

 カナは笑顔を見せるんだけど、本当かなと思ってしまう。大人は子供がなにかを食べると、おいしいかと必ず聞く。すると、子供はおいしいと答える。そういう癖でなにか食べるとおいしいと言ってしまうんではないかと思う。大人にいわされているんじゃないかと。大人はなにか食べたっておいしいとか言わないものだし。

「どうしたの、カズキ。疲れてしまったのかしら?」

「え?いや。カナのかわいさに見惚れていたんだよ」

「ふん、お上手になったものね。カズキはそんなこといえる人じゃなかったのに」

 まんざらでもなさすぎて、顔がほころんでいる。ぼくは娘にはかわいいよっていってあげられる。

 ぼくは豚肉のワイン煮を頬張る。祥子が選んでくれた。疲れた体に煮込み料理がよいと考えてのことだろう。

 ぼくはいつも祥子まかせで、だされたものを食べるだけだ。いつもおいしいものを食べさせてもらっている。自宅で食事するときも、祥子の料理の腕はたしかだ。ぼくが手伝うと、たいてい失敗するけど、よろこんでくれる。そんなときカナは苦い顔して食べる。ぼくの家族は最高だ。

 食事のあと水族館へきた。カナは水族館が気に入っている。イルカとシャチのショーも好きだし、アシカも、ペンギンも、クラゲも、小魚の大群も、みんな楽しんでくれる。植物園につれていったときより、水族館の方が楽しそうにする。エンタテインメント性があるからかな。水泳をやらせてもよろこぶかもしれないと、最近思う。まだ夏が終わったばかりだから、プールに連れていくのは来年になりそうだけど。


「カズキ、そろそろ帰りましょうか」

 ぼくは眠っていたようだ。あたりは薄暗くて、目の前に水槽があってその照明が一番明るい。クラゲの水槽だ。大きい。ぼくはクッションの効いたベンチでクラゲを眺めながら寝入っていたらしい。膝にはカナが抱きついて眠っている。

「あ、ごめん。寝てた」

「疲れたんでしょう?今日はありがとう」

「うん。カナをおんぶするから、いったんあずかって」

 カナを抱き起して祥子に抱えてもらう。ほっぺを指でぷにぷにする。中腰になって背中にカナをおんぶする。

 家についてもカナは起きそうにない。そのまま寝かせてしまう。ぼくは祥子にうながされて風呂にはいることにした。

 シャワーを浴びていたら、祥子が裸ではいってきた。

「ひさしぶりに、一緒にはいろうよ」

「うん。ひさしぶりだね」

 裸で抱き合う。体をお互い洗いあって、祥子が湯船につかる。ぼくは顔と頭を洗ってから湯船につかった。祥子のおっぱいに背中をつけてよりかかる。うしろから抱きつかれる。最高に気持ちいい。やっぱり風呂にはいると日本人に生まれてよかったと、しみじみする。祥子のおっぱいの感触も最高だ。

「あー。もういうことないね」

「でしょう?全部わたしのおかげ」

「うん。本当だね。おっぱいの感触は最高」

「そこなの?」

「えへへ」

「今日は疲れちゃったから、すぐ寝る?」

「祥子はセックスしたい?」

「うん。したいよ?」

「ぼくも」

「じゃあ、きみは寝っ転がってて。わたしが気持ちよくしてあげるから」

「すごい。今日はサービス満点だね」

「撮影ガンバったごほうびです」

「やった」

 祥子は、セックスについてオープンだ。はじめてセックスするときから、セックスしたいという気持ちを伝えてくれた。ぼくは女性にセックスしたいか聞くのはダメだと思っていた。以前仲の良かった山口という女の子にそう言われたからだけど。祥子がなにも言ってくれなかったら、ぼくはどうやって誘っていいかわからなくて、結局なにもできなかったと思う。ぼくたちがうまくいったのは、祥子のおかげだ。

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