6-3

 僕は、食料を買いだめして街を出発。次の街を目指した。

 途中で森を横切ってショートカット出来そうな時は、森を抜ける事にしラスに道案内を頼む。


 「ここら辺で休憩」


 「「はーい」」


 僕達は、イスとテーブルをセットする。

 食料用にラスにもう一つ劣化しない保存袋を作ってもらい、それを食糧庫して活用。なので今日からは、果実以外も食べれるんだ。

 ハムやパンも食べられる。


 「ねえ、ラス。そう言えばさ、金貨貯まっていくけど落としたり盗まれたりしないかな? こんな大金持ち歩いた事がないからドキドキだよ」


 『そうねぇ。だったら貯金箱作りましょうか。私が加護をつけてあげるわ。そうしたら奪われる事もない』


 「いいね! お願いするよ」


 そう言う事で、ただの四角い箱にコインを入れる口を付けただけの簡単な貯金箱を木で作った。


 『加護つけたわよ。金貨専用にしたわ。入れてみて』


 「うん」


 入れるとチャリーンと音がする。不思議だ。コトンじゃないんだね。あった金貨を全部入れた。


 「銀貨のも作ってもらおうかな」


 『あらいいの? 色々不便じゃない?』


 「なんで? 使う時出せばいいから」


 『あら……出せないわよ。チェック』


********************************

 金貨貯金箱【容量:1,000枚】

 制限:スラゼ

 耐久度:100%【達成後開封可】

 【ミミミラスの加護:容量指定/不可視/重量軽減/シールド保護】

********************************


 出せないってどうしてだろう?

 容量1,000枚って1,000枚まで貯められるって事だよね?


 「不可視って見えないって事?」


 『そうよ。私とスラゼにしか見えないわ。もし見えるとしたら私と同等以上の力の持ち主だけ。達成後開封可ってなっているでしょう。1,000枚貯まらないと開かないから誰も開けられないわ!』


 「それって僕もじゃないか!」


 『そうよ。だって貯金箱よ。貯めるのが目的でしょう?』


 「え……いやそうだけど。まあ銀貨あるからいいけど」


 まあ毎回銀貨8枚は手元に残ると思えばいいか。でも金貨1,000枚も貯めてどうすれと言うのだろうか?

 使い道を考えておこう。

 貯金箱は鞄の奥にしまった。


 暫くは、次の街に行くまでの間にちびちびと袋を生産し、商業協会に納め報酬を手に入れる。街にいる間に冒険者協会で仕事を受けてこなす。そういうサイクルにした。


 本当は、入っちゃいけないランクが高い森の中もラスの誘導のお蔭で、モンスターに会わずに切り抜けている。


 「次の街でニョロガラ領土の最後の街だ」


 「うん」


 『ねえスラゼ。相談なんだけど、毎回森を切り抜けるなら自分達で狩りもしてみない?』


 「狩り? モンスターをって事?」


 『違うわよ。動物よ。二人にも活躍してもらいましょう』


 「何をさせる気?」


 僕は、リアカーの上にいる二人に振り向いた。


 『あなたは過保護過ぎるのよ。彼女達、自分で何も出来なくなるわよ。だからモンスターじゃなくてもいいから狩りをさせるのよ。任せて!』


 「そうだね。過保護はよくないよね」


 そういう事で急きょ、狩りを実行する事になった。


 「さあ、二人共降りて」


 「「はーい」」


 『ではまずは、レンカに弓で狩ってもらいましょう。矢は落ちている枝を使えばいいわ。強化してあげる』


 僕は頷く。なるほど、それなら矢を消費しないね。


 「今日は、レンカに狩りをしてもらうよ」


 「え!?」


 「大丈夫。モンスターじゃないから。枝をラスに強化してもらって矢の代わりにするから減らないし。やってみよう!」


 「うん……やってみたい!」


 『武器はそれなりにいいものだから慣れればちゃんと命中する様になると思うの。まずは鳥を狙いましょう』


 「うん。鳥を狩ろう」


 「うん。やってみる」


 真面目な顔でレンカが頷いた。

 今いる森は、木がまばらで森と言うより林。空もよく見える。

 枝を矢の代わりにセットし、レンカは頭上に向けて弓を構えた。


 シュっと枝の矢が空に向かって飛んで行く。滑空していた鳥をかすめる。


 「もう少しだ!」


 「うん!」


 枝の矢をセットし、レンカがもう一度撃った。それは、鳥に命中だ!


 「やったぁ!」


 「レンカ凄い!」


 『ちゅごい。ちゅごい』


 紅葉も僕の頭で跳ねて喜んでいる。


 「どこら辺に落ちたかな?」


 『こっち!』


 と紅葉が僕の頭から滑空して飛んで行く。


 「待って!」


 僕達は、紅葉の後を追った。

 紅葉が降り立った所に、枝の矢が刺さった鳥が落ちていた。


 『さあこれを焼くわよ!』


 木だと一緒に燃えちゃうと言う事で、鍾乳石で棒を作り鳥を刺して丸焼きにする事にした。

 ラスの指導の元、モンスターキラーのロングナイフで鳥をさばく。


 『初めは気持ち悪いかもしれないけど、慣れれば平気になるわ』


 「はぁ……」


 ロングソードは、バケツの水をかけて綺麗にした。突っ込んで洗うのにためらいがあったからだ。


 『ではたき火をしましょう。木の枝を集めましょう』


 「たき火をするから枝集めをしよう!」


 「たき火!?」


 今まで野宿したけど一度もした事がなかったからね。

 ここは林だからか、あまり草が生えてない所もあり、そこに手ごろな石を持って来て丸く囲いを作り枝を置いた。


 『さあ次は、サツナにファイヤーボールをしてもらうのよ。火加減に気を付けてもらって!』


 「あ、なるほど。サツナ、ファイヤーできたよね? 火加減に気を付けてファイヤーボールしてみて」


 「え? ファイヤーボール? う、うん」


 深呼吸した後、サツナは枝に向かって小声で「ファイヤーボール」と呟いた。


 ボッと思ったより大きな火の玉が出たけど、まあ無事枝に火がつく。


 「できた!」


 「サツナすご~い」


 レンカは拍手している。僕も拍手を送る。この中で、魔法を使えるのはサツナだけだからね。火の上に鳥を吊るして丸焼きだ。


 「凄いね。わくわくするね!」


 「うん」


 レンカが言うと、サツナが頷く。

 塩は買ってあったので、もみ込んである。

 段々と焼けてきて、肉汁が落ちるとジュッと言っている。そして美味しい匂いも漂い始めた。


 お手製の木のお皿に、ロングナイフをナイフ程短くして、焼けた肉を剃り落としてそれぞれに乗せた。


 たき火の横にセットしたテーブルで、夜ごはんだ。

 自分達で狩って調理した料理は格別に美味しく感じる。


 「おいしい!」


 「うん。あったかいね!」


 レンカとサツナは、もぐもぐと食べ満足そうだ。

 確かに温かい食事なんて、泊まった時だけだった。こうやっていると、自分達でちゃんと冒険者している感じがする。


 「そうだ。明日の朝はキノコ焼いて食べてみようか」


 「うん!」


 レンカが嬉しそうに返事をした。

 食べ終わると、シート布団を敷いて横になる。

 これは、地面側がシートで上になる方が布で、間にはナテコロの実が熟したのを乾燥させた綿毛を入れてある。

 ラスの指導の元、みんなで作った。

 これを二人は、リアカーの板の上に敷いて、毛布に包まり寝ている。僕は、地面に敷いている。ラスに加護を付けてもらったので、どこに置いても平らでごつごつしない優れものシート布団。しかも綿毛でフワフワしていていい感じだ。


 そしてもう一つ。僕専用の鍾乳石ランプ。ただの鍾乳石の欠片なんだけど、木をランプの様な形に作り、鍾乳石を入れてある。ふんわり明るくていいんだ。

 そしと今日は、たき火の明かりもある。起きているラスに見張りを頼んだ。これで安心して寝れる。

 けど、いつも通り紅葉が僕の体で遊び始めた。出来れば、寝ついてからしてほしんだけどね。

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