4-2

 「待たせたな」


 待っていると、僕が持って来たチラシを手にごつい人が制服を着て現れた。ごつい人には、制服は似合わないかもしれない。


 横に並んで座っている僕達の前の席に、その人は腰を下ろした。


 「俺は、ガンジール。元冒険者だ。宜しくな」


 「はい。宜しくお願いします」


 うん? 二人を見れば固まっている。見た目怖いもんね。


 「実はお達しが来ていてな、君達施設の子が来たら面倒を見る様にと。たぶん領土を出て、隣の領土に来るだろうと言う事でな」


 そうだったんだ。


 「ご迷惑をおかけします」


 「いやいや。特段そんな事はないさ。まずチラシの事だが、ランク別にカウンターの所に貼らせてもらうよ」


 「よかった。ありがとうございます」


 「君達は、流れ冒険者になるつもりなんだろう?」


 「な、流れ?」


 聞き慣れない言葉に僕は聞き返した。


 「特定の所にとどまらず渡り歩く冒険者の事を言う。大抵の者は、ある程度になったら自分にあった場所に落ち着く。君達は、チラシを配って歩くならそうなるかなって事だ」


 「なるほど。一応、一年後一度領土に戻る事になっています」


 うむとガンジールさんが頷いた。


 「領土内で受けた仕事は、領土外可であれば受け付けた領土外でも報酬を受け取る事ができるが、Fランクには領土外はない。それだけは気を付けて欲しい。他に今聞いておきたい事があるか?」


 「あ、えーと。ハンドメイドを副業でやりたいなと思っているんですけど、ここに言わないといけないみたいな規約があるようなんですが」


 僕がそう言うと、二人がえっと呟いたのが聞こえた。何も話していなかったからね。


 「そうなるとだな。クラウンに所属しないとダメだな」


 「クラウン?」


 「パーティーは即席だろう? クラウンは登録制なんだ。評価も個人よりクラウンの評価になる。まあ評価と言うのは信頼度みたなもんだからな。で、クラウンは、居場所がわかる様にしなくてはいけないから例えば、どこの宿にしばらく寝泊りしているとか、冒険者だと連絡がとりづらいからな。こっちに連絡が来るからな。後は、呼び出しようのペンダントを渡している。呼び出されてから一日以内にここに来ることになっているな。遠出する時も連絡を入れるなどだ。だからそう言うのが煩わしい奴らは、クラウンに入らないで即席のパーティーでと言うのもいる」


 つまりは、クラウンに入らないとハンドメイドは出来ないって事か。うーん。三人を一緒に入れてくれる所ってあるかな?


 「あの、僕達三人一緒に行動したいんですけど、一緒に入れてくれる所ってありますか?」


 そう聞くとガンジールさんは、チラッと二人を見た。女性は入り辛いのかな?


 「二人はいくつだ?」


 「二人共十三歳ですけど」


 「そうか。だと入れてくれる所は少ないな。しかも女の子だからな。凄い特技とか持っているわけではないんだろう?」


 「まあ……そうですね」


 そっか。無理か。まあハンドメイドは二年後やってもいいわけだし。それまで作りだめでもして置くかな。


 「クラウンを設立する事も可能だが、せめてEランクにならないとな。変な話、三人で行動するならEランクになるのは大変だと思うぞ」


 「え? なんでですか?」


 「Eランクになるのには、Eランクの仕事をした事がないとなれない。パーティーに入れてもらうにしても、三人をとはならないだろうからな。Eランクの仕事を一緒にしてくれるEランク以上の人と組むのが大変だと言う事だ」


 そういう事か。チラッと二人を見ると項垂れている。

 あぁ落ち込んじゃってるよ。


 「すまないな。君達は生きていく為に冒険者を選んだだろうから厳しい事を言う様だけど、そういう世界だ。お金を稼ぎたいのならランクを上げる事だな。Dランクぐらいになれば、その日暮らしも楽になる。まあ、その分内容はハードになるけどな」


 「わかりました。色々考えてみます。ありがとうございます」


 僕達は、建物を出てリアカーに戻った。リアカーに乗り込んだ二人は元気がない。なんて言っていいかわからない。


 『ねえ、提案なんだけど、Eランクの仕事をスラゼだけパーティーに入れてもらって先にスラゼがEランクになったら? そうしたらEランクの仕事を自分達で受けられるでしょう? 二人もEランクになれる。ずっとあなたが傍にいてあげられるとも限らないのだから過保護にしてはダメよ』


 「うーん。そうだね。それが一番いいかもしれない。ねえ、二人共聞いて。さっきがガンジールさんが言っていたでしょう。Eランクの仕事を一緒にEランク以上の人と仕事をするって。それ僕が一人でしてまずは僕がEランクになる。だからリアカーでその仕事の間待っていて。出来るよね?」


 二人は、こくんと頷いた。

 よかったぁ。


 「じゃ僕は、一応仕事を見て来るから待っていて」


 「え? もう行くの?」


 レンカが驚いて言う。


 「うん。早い方がいいと思う。見てすぐにあるとは限らないけどね」


 「うん。わかった。待ってる……」


 「じゃ、くれぐれもリアカーから降りないでね。いつも通りシールドを張ってもらうからね」


 わかったと二人は頷いた。



 「あの、クリスタさん」


 「あら、えーと、スラゼさん」


 「ご相談があるのですが、Eランクの仕事をFランクの僕と一緒にやってくれる人をさがしているんだけど……」


 「わかりました。少しお待ちください」


 って、もしかしてそういう仕事があるか探してくれているの?


 「ありました。ランクは問わないと書いてありますが、サーチが出来る者という条件です。スラゼさん、サーチは出来ますか?」


 「はい!」


 「あら、凄いですね。それ武器になりますよ。もしよろしければ、冒険者カードに記載しますけどどうしますか?」


 「え? 記載ですか?」


 「はい。簡単なテストをしてになりますが、サーチが出来るとなれば記載できます。そうすれば、一緒について行きますっていう、逆の募集が出来るんですよ」


 「え! そうなんですか! じゃ、受けますそのテスト!」


 『よかったじゃない。私の腕の見せ所ね』


 「うん。宜しくね」


 僕は、ボソッとラスに返す。

 そういうわけで、試験場に連れて行かれた。そんな場所があるとは……。


 「試験担当のマトキと言います。宜しく」


 「はい。宜しくお願いします」


 僕は、マトキさんに深々と頭を下げた。試験場は、冒険者協会が買い取った森の一部だった。そこに僕とマトキさんの二人だけだ。彼も制服を着ている。


 「やり方を教えますね。リストを渡しますので、一時間以内に出来るだけ採取して下さい」


 「わかりました」


 僕は、採取のリスト、リュック、軍手、袋、ナイフを受け取った。つまり僕のナイフは使えないって事だ。不正を防ぐためらしいけど。


 「では、はじめ!」


 『ある程度奥に行ってもらっていいかしら? 自分を中心にサーチを掛けるの。後は、私にもリストを見せて』


 「うん」


 僕は、走りながら奥へ向かう。


 『ここら辺でいいわ』


 リストをラスにも見える様に持って見てみた。ってずらりと並んでいる。これ、サーチでわかっても一時間で採取出来る量じゃないと思う。


 『なるほどね。これ、ランクAの物からあるわね。どうする? Cぐらいまでのにしておく?』


 「え? どういう事?」


 『つまり採取する物にもランクづけしてあって、サーチのレベルによって、わかるものとわからないものもあるって事よ』


 「うーん。サーチならAの物がわかってもいいんじゃない? って、僕的には、固まっている方に採取に行って数を稼ぎたい」


 『わかったわ。サーチ。今回のはランクのサーチだから色分けはランクになってるわ。でも数を稼ぎたいのならランクを関係なく採取するといいわ』


 「うん。ありがとう!」


 見渡すと右側が多い。こっちで採取しよう!

 赤く光ってるものや青く光っているもの。それらを片っ端から採取していった。


 一時間後には、リュックはぱんぱんになった。よし!!

 これだけあれば、リストの……って、どれがどれだかわかんない!


 「ねえ、どれがどれってわかる?」


 『普通はサーチだけだと名称まではわからないわよ。あなたがそれを知っていれば別だけど。素直にそれは言った方がいいわね』


 無差別ですと言わないとだめなようだ。


 「あの、採取できたんですけど……。名称まではわからなくて……」


 って、マトキさんが険しい顔をしている。

 ダメだったんだろうか?


 「きみって、ある意味凄いね。Fランクでここまで採取した人いないよ。君のサーチは、凄いから知識をつけるといい。そうすれば、難易度が高い採取の依頼を受けられるようになる!」


 「え? それじゃ?」


 「あぁ。サーチは記入できるよ」


 「やったぁ!」


 無事、冒険者カードには、魔法・スキルの欄にサーチが加わった。

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