轟雷戦技サンダーボルト

小狗丸

巨人と雷を操る少年

 よく晴れた日の正午。とある平野に大勢の人達が集まっていた。集まっている人達の大半は、腰に剣をさして服の上からでも分かるくらい身体を鍛えている武人といった外見で、全員が興味深そうな表情である一方を見ている。


 平野に集まっている人達の視線の先には全高七、八メートルはある巨人の姿があった。その巨人は頭部が獅子で、更に全身が白い金属でできており、時折太陽の光を反射して輝いているように見えた。


 そして頭部が獅子の巨人の周りには、同じく全高七、八メートル程で全身が金属でできている巨人が三体、頭部が獅子の巨人を取り囲むように立っている。しかしこちらの巨人達は、三体とも頭部が兜を被った人間のもので、全身の色は灰色であった。


 頭部が獅子の白い巨人と、それを取り囲むように立つ三体の灰色の巨人達。どちらが印象的かと言えばそれは間違いなく前者であり、平野に集まった人達の視線は全て、頭部が獅子の巨人に向けられていた。


 やがて平野に集まった人達の中で、服装から最も立場が上だと思われる男が何かを指示すると、一人の男が一本の旗を取り出して頭上に掲げ……そして旗を勢い良く振り下ろした。


『『………!』』


 男の旗が振り下ろされた瞬間、三体の灰色の巨人達が一斉に頭部が獅子の巨人に襲いかかる。


 三体の灰色の巨人達はその手に巨大な剣を持っていてそれを振るおうとしているが、対する頭部が獅子の巨人は何の武器を持っていない素手の状態のまま微動だにしていなかった。このままでは頭部が獅子の巨人は、三体の灰色の巨人達の剣に切り刻まれると思われたのだが……。


「……雷装動サンダーボルト


『『………!?』』


 頭部が獅子の巨人が何かを呟いた次の瞬間、頭部が獅子の巨人の巨体がまるで幻であったかのようにその場から消えて無くなり、三体の灰色の巨人達の剣が虚しく空を切った。


 突然消えた頭部が獅子の巨人に、三体の灰色の巨人達だけでなく平野に集まっている人達も大いに驚き、頭部が獅子の巨人を探す。そしてついに三体の灰色の巨人の一体が頭部が獅子の巨人を見つけだす。


 頭部が獅子の巨人の姿は、三体の灰色の巨人達の後方の上空にあり、しかも頭部が獅子の巨人は先程まで持っていなかった光の弓矢を引きしぼり、矢の照準を三体の灰色の巨人達に向けていた。


雷光破・短弓三連サンダーボルト


 頭部が獅子の巨人がそう呟いて光の矢を放つと、光の矢は放たれた瞬間に一本から三本に分裂して三体の灰色の巨人達へと向かっていく。


『『………!』』


 三本に分裂した光の矢は、それぞれ三体の灰色の巨人達の足元に着弾すると大きな光の爆発を生み出し、三体の灰色の巨人達は光の爆発に吹き飛ばされ背中から地面に倒れるとそのまま動かなくなる。


 一対三の数の不利を無視してたった一撃で勝利した頭部が獅子の巨人の姿に、平野に集まった人達は全員驚愕の表情を浮かべていたが、驚いていたのは彼らだけではなかった。


 地面に倒れている三体の灰色の巨人達を頭部が獅子の巨人の体内から見ていた少年レオは思わず呟いた。


「……嘘だろ? いくら何でも弱すぎるだろ? これがこの国でベテランの『戦師』だって? 数百年の間でどれだけ弱くなっているんだよ?」


 あり得ない、信じられないといった表情で呟くレオは、この頭部が獅子の巨人を操縦する操縦士である。そして同時に、今から数百年前にあったこの惑星を守る為の大戦に参加して一度死に、数百年の時を経て現代に復活した存在でもあった。

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