手記/P5

 .?


 こんなSFじみたことが本当にあるとは。いや、ホラーか。


 母なる大地教団の神は実在した。ただし、連中も騙されていたらしい。

 今朝早く、映画撮影さながらに組まれた撮影設備の中心で、大地の裂け目の上に備えられた三脚にあの少女が座らされたのだ。信者たちの環視のなかで、教祖のセオドア・ドーソンは大地の裂け目に顔を突っ込んで奥へと呼び掛けた。

 するとまもなく、そこから蒸気が噴出してきた。まともに浴びたセオドアはなんらかの中毒症状を示して死亡。

 パニックになる教団をよそに、伝承通り少女には神が宿ったようだった。――恐ろしい神が。


 少女は瞬く間に、十歳にも満たないような幼女へと変身した。次いで周囲にいた人間を殺しだしたのだ。

 百人近くいた連中と我々を合わせた人員が、もはや十人にも満たない。

 すでに、教団も発掘作業員も関係なく一緒に逃げてきている。現在、岩陰で鳴りを静めているところだ。

 麓の町に着けばなんとかなるだろうか、しかしあの少女は遊んでいるようだった。狩りでも楽しむかのように、わたしたちをわざと逃がしたとしか思えない。

 見つかったらそれま で

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る