日記

 2004ねん 8がつ13日 (金)ようび


 今日も夏休み。やっとアテネ・オリンピックがはじまる日。

 かい会式は夜だから、お昼は家ぞくでアテネをかんこうした。だけど買い物ちゅうに人ごみにまきこまれて、ぼくは迷子になっちゃった。

 こういうときは、いろんな国のはたのワッペンをつけたかんこうおまわりさんに話せばだいじょぶって父さんは言ってたけど、なかなかみつからなかった。みんながしゃべってることばもわからないし、泣きそうになった。


 そしたら、いきなりだれかが手をつないでくれた。


 女の子だった。

 かたくらいの長さのぎん色のかみと灰色の目がキラキラしてて、日本にはいない感じのかわいい子だった。このギリシャだとあっちこっちにある古い絵とかちょうこくが着てる、キトンっていうふくを着てた。

 ぼくといっしょのとしで、フィリナっていう名前だって教えてくれた。「世界じゅうの神さまとなかよしだからなんでもできる」って言ってた。だから、日本の神さまにおねがいして、ぼくともしゃべれたんだって。

 フィリナはギリシャの神さまにもおねがいして、ぼくの家ぞくもさがしてくれた。

 そのあといつのまにかいなくなっちゃったけど、かい会式のときにまたどこからか来てくれた。それで、いっしょにオリンピックを見れたんだ。


 父さんたちは、フィリナが一人なのをふしぎがってたけど、あの子は「家ぞくが近くにいるからへいき」って言ってた。

 でも、ホントはあのまほうみたいな力で一人で来たって、ぼくにだけは教えてくれた。

 友だちになれたから、明日からこっちにいるあいだ時間があいたときに遊ぶやくそくもした。


 日本に帰るのがさびしくなりそうだ。それに、あのまほうみたいな力はひみつにしなきゃならないって注意された。

 でも、日記には書きたかった。あの子のことを忘れたくないから。

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