第23話 研究所
美鈴は、また宙に浮いている。
どこかのアパートっぽい部屋の中だ。
見覚えのある、大きな体の男を見つける。
あれは、シンか?
ノートPCに向かって、カチャカチャやっている。
と、いうことはここはシンの部屋?
それにしては、何にもない部屋だ。
そういえば前に捜査の途中、あぁそうだ。夏だった。
あの時忘れ物があるとかでこの部屋に来て、冷たい麦茶もらったな。うまかった。
ちらっと見たときは生活感のある感じがしたが……
ふわふわ浮きながら眺めていると、新堂が何かを感じたのか、周りをキョロキョロしている。
『おい』と声をかけてもわからないようだ。
そっか。私、幽霊になってるのか。
ミスズ……
ミスズ……
意識が遠のく
◇
翌朝。パチッと目が覚めた。
>オハヨウゴザイマス。ミスズ
ああ、おはよう。
>チャットに一件ノ通知ガアリマス
ん?
シンからだった。
≪班長の場所解りました。恐らく広島の『矢島』という小さな島です。大きな基地局がありました。
有馬さんにちょっと協力してもらって解りました。
調べても直接、篠原重工の名前は出てきませんでしたが、役員が個人的に別荘地として所有している様です。
恐らく、金自体は篠原から出ているんでしょう。
また連絡いれます≫
広島に島なんかあったんだ。
有馬さんも協力してくれたのか。無事出られたらお礼言わなきゃ。
しかし、逃げた先は広島か。お金も無いし、服も無いと目立つし、あとでシンに頼んだ方がいいな。
そうだ。
[エル]ちょっといい?
シンに一つだけ依頼をした
刑務所の飯沼に面会出来たら、声を録音してきてくれと。
潜入捜査する時に必要だし。
そういえば、声は変えたことが無い。
一回テストしといた方がいいな。
私の声を男性の声にできる?
>昨日ノ技師ノ音声デ、イイデスカ?
うん、いいよ
あれ、もしかして録音してた?
>ハイ。音声及ビ映像データハ、全テ記録シテイマス
目の前に映像のファイルリストが並ぶ。
>音声ヲ変更シマス
んー何を喋ろうか。急に振られると頭に思いつかないや。まぁ適当に。
『山本さん、ご気分いかがですか?』
自分で言っても似ているのか、似ていないのか。
>今ノボイスデータヲ再生シマス
なるほど。
録音したデータを再生する。
素晴らしい! 完コピじゃん。
[エル]いい子いい子
>ナンカ、嬉シイデス
さて、昨日お願いしていた件だけど、この建物の見取り図わかった?
>ハイ。篠原重工ノCADデータヲ、発見シマシタ
>データ展開シマス
目の前にCGが展開したが、ワイヤーフレーム状態で、美鈴には良く解らない。
>テクスチャ表示シマス
>シミュレーションモード、プレイ
目の前に建物の入口が表示された。
壁や窓もあり、現実そのままだ。
視点を移動させると、実際に移動できる。
美鈴は、自分がいる部屋の場所を探す。
>現在ノ電源管理システムヲリンクシマス
>展開。電力負荷ヲカケタ場所ガ、赤色ニ変化スル筈デス。確認シテ下サイ
>コノ部屋ノ照明ヲOFFニシマス
>ONニ、シマシタ
あ、解った。この部屋の照明を消すと、赤に変わる場所がここだ!
自分の位置が判ると全体が判るようになった。
元の映像に戻り、美鈴は建物の構造を把握した。
建物全体構成は地上4階と地下3階で構成されており、敷地面積だと都庁の半分ぐらいと広い。
屋上にはヘリポート。
4階のスペースは大会議室が三つ、ベランダ側の外階段でも屋上に登れる
3階は大中小の部屋がある。これも会議室と食堂リラクゼーション的な場所がある。
2階はLABOと書いてあるから研究施設か。小さな部屋がいくつもあるが、レベル2-3と書いてある。
1階は正面出口で会議室のような小間が周りにいくつか。
で、地下1階が今私がいるフロア。医療設備と奥に警備員室。
地下2階にはもっと広い警備員室と発電機や電源供給ユニットなんか置いてある。
地下3階は駐車場と倉庫かな。
水道とガスとかのライン表示もできる?
>ハイ。問題アリマセン
CGに赤色と青色のラインが表示されている。
今のフロアにこの部屋と同じサイズの部屋が五部屋。
奥にもレベル5-4の研究室がいくつかある。給仕室もあった。
非常階段は一つ、エレベータは二機あった。
エレベータ前の通路を挟んで、職員たちの部屋がある。
警備員室は非常階段とエレベータに挟まれたところにあった。
全面ガラスでフロアを見通せる状態になっている。
各階に行く方法は、非常階段かエレベータしか見当たらない。
警備員の数はこの広さだと、地下2階では多くて10~20人といったところか。
1階はそこまで多くない広さだ。
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