bless you!!

シィータソルト

序章・上:救いの場所 天国

ここは、生物の命が尽きた時辿りつく場所の1つ・天国。


現世での行いの良かったもの。不幸にも、天命をまっとうできなくても行いが良いこと。


これを達成さえしていれば現世での精神修行が認められる。


現世では、精神の成熟が行われなければならない。でなければ、翼が生えてこない。


現世では、さしずめサナギのようなもの。


死に至ることにより翼が生えてくれば、迎えの先代の天使達に天界で住む資格のある者であると証明できる。


そして、天国に昇り、天界における姿、すなわち精神が現世での姿をかたどったもの(天使)として、生活できる。


天国がどこにあるかは死んだ者にしかわからない。それは、命が尽きた時の楽しみにとっておくとしよう。


一応、この話では地球の空上の宇宙の近くにあるのではと推測している。


そして、天使になってからも精神修行というのは行ってもよい。だが、それは強制ではない。


天国では、現世での未練は解消できるようになっている。


それは、現世をより良く生きようとした者達への褒美である。


自由に生きたい者は、自分のやりたいことを好きなだけしていられる。


精神修行を行うと決意した者は、現世のように、勉強により知識を身に着け、鍛錬により体を自在に動かせるように務める。


では、精神修行とは何を行うのか。


人は現世で生きている者同士で影響を受け合う。だが、その影響は現世の者だけであるだろうか。


中には、こうした天界の者の影響を受けている者もいるかもしれない。


そう、それは、天使の精神修行である現世の人間へのあらゆることの手助けが行われているから。


精神修行では、天使ランクが定められている。


聖書で、書かれているランクの通り、上から、


熾天使・智天使・座天使・主天使・力天使・能天使・権天使・大天使・天使となっている。


だが、まず最下位である天使の前にクピドの恰好をしている。


天界に住むには天使にも似た姿であるが、天使として働くには未熟な存在として区別されている。


まず、クピドを卒業することが精神修行をするための登竜門となる。


各ランクを超えるには、それぞれのランクの試練を乗り越えなければならない。


それは、普段の精神修行をある程度行うと受ける資格ができる。


だが、いつ行われるかは知らせが来るまでどの者もわからない。


来たるべき試練を乗り越えた者は、ランクが昇格していき最終的には神になれる。


天使達はランクアップを目指して日々励んでいる。


生きとし生ける者すべてを愛し、愛するもの達の生きる世界を良くするために。


これは、精神修行に励む天使達の話。


今、この序章語りの最中、ランクアップし表彰されている者が現れた。


大天使ミカエルは、表彰台にその者を呼び、卒業証書を渡す。


ミカエル「クピド:優唯。あなたはこのランクを卒業し、天使へ昇格することをここに賞します。現状に満足せず日々精進してください」


証書は光を放ち、粒に姿を変えると天使がつけているアミュレットの中に吸い込まれていく。


優唯「はい! 大天使ミカエル様私頑張ります!」


ミカエル「良い返事ね。優唯、頑張ってね。あとで天使装束を纏う言葉唱えるの忘れないように」


優唯「はい!」


そこに、彼女のパートナーである元クピド猫の姿が現れた。


またたび「優唯ちゃ~ん。やったね! 僕たち天使に昇格だよ!!」


優唯「またたび、私達やっとなれたね!」


精神修行の際には、人間の天使1人と動物の天使1匹の組み合わせでパートナーを組まなければならない。


動物の天使も、パートナーの人間天使のランクと共有であり、互いに助けあう仲間となることで修行を優位にすることができる。


1人と1匹の天使が喜びあっている中、もう1人とそのパートナーの天使が現れた。


凛「やっと昇格したのね、優唯」


優唯「凛ちゃん! 昇格したよ!!」


マナー「おめっトゥー、ゆいたん♡」


凛と呼ばれる天使と彼女のパートナーである アスキーアートのマナーが祝福しに来てくれた。


優唯「マナー、ありがとう!」


凛「まったく……あんたはクピド卒業するまでどれだけかかっているのよ!! だから落ちこぼれと言われるのよ!!」


そう、優唯は、クピドは卒業するのにかけた時間の最高記録を叩き出していた。いや、この場合最低記録というべきか。


優唯「ひぅ~。凛ちゃんが怒った~」


凛「まぁ……、でも」


優唯「?」


もっと剣幕立てられるのかと身構えていたが、凛が急に静かに顔をそらし


凛「おめでとう……、優唯。早く私の実力に追いついてきてよね!」


マナー「キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! 凛たんのツンデレ!! オレっちにはツンしか見してくんないからなぁ~。くあぁ、久々に見たぜデレを! いいぞ! 優唯たん、どんどん大いに昇格してくれ!」


凛「ツンデレ言うな!」


優唯「……うん。頑張るね!」


怯え顔から、にこやかな笑顔で応えた。


そこへ、また人間天使とそのパートナーの狼天使が現れた。


紗理奈「優唯、昇格したんですってね。おめでとう」


ガオル「おめでとう、優唯。諦めない気持ちが結果に実ったな」


紗理奈「さぁ、優唯、もうあなたはクピドではなく天使になったのよ。その服も卒業。天使姿になってみせて?」


優唯「はい!」


優唯は、胸のアミュレットを祈りを捧げるように握り、目をつぶる。


しかし、何も起こらない。


優唯「……あれ、おかしいな?」


凛「もしかして、祈りながら心で唱える言葉忘れたんじゃないでしょうね?さっき、ミカエル様が教えてくださったでしょ!?」


優唯「あれ?言葉唱えるんだっけ?卒業できた喜びのあまり忘れちゃった☆」


凛「優唯のバカーーーーーーー!!!!!!」


先程抑えられた剣幕が爆発した。


優唯はミカエルに言葉をもう1度聞き直し、再びアミュレットを握り祈りを捧げる。


優唯「愛よ。私を取り巻く愛よ。愛のご加護により私は精進した。愛を渇望する者から、愛を運ぶ者となる。愛の循環者、天使に!!」


アミュレットから光が溢れだし、優唯を優しく包み込む。


光が落ち着くと、クピドのオーバーオール姿から白色の天使装束に袖を通した優唯の姿が現れた。


優唯「わぁ、これが天使装束かぁ。素敵だね!」


紗理奈「似合っているわよ。優唯。これであなたも天使ね」


凛「優唯、この装束を纏うのだから、もう人間でいう大人になったのよ。あなたはいつまでもクピドの頃みたく子供のままでいたらダメなんだからね! 天使として恥をかかぬようにするのよ! いいわね!」


優唯「凛ちゃんがまだ怒ってる~」


マナー「違うぜ! 優唯たん! これは、ツンデレのツン…」


凛「ツンデレ、ツンデレ言うなー!!」


紗理奈「ふふっ、凛だってまだまだ子供だと思うけどな。ね、ガオル」


ガオル「そうだな、紗理奈」


ミカエル「クピド卒業がそんなに嬉しいのかしら。みんなではしゃいじゃって」


優唯「ミカエル様~。凛ちゃんが怒るんですぅー」


ミカエル「あらあら、凛、優唯が可愛そうよ。慈愛の心で許してあげなさい」


凛「こんな調子じゃ心配だから叱咤をと……」


ミカエル「優唯が委縮しちゃっているじゃない。ありのままを認めてあげるの。優唯は褒めて伸びるタイプだと思うわ。激励も忘れずに」


凛「はい……。私もまだまだ未熟ですね」


ミカエル「自分の欠点を受け入れられる者は成長に繋がるわ。では、優唯、あなたに精神修行について教えます。今度は凛に怒られないように覚えるのよ?」


優唯「は~い」


ミカエル「まず、復習をしましょうか。クピドの頃、あなたは何のお仕事をしていたかしら?」


優唯「はい、キューピッド様を手伝って主に恋愛の手助けをしていました」


ミカエル「そうね、この時は、成就までとはいかなくとも人を好きになる気持ちを伝える者として働いていたわね。天使では、この恋愛の手助けの他、悪い道に進んでしまいそうな人に正しい道に示す仕事など、人間に幸福を運ぶの」


優唯「大変そうですね~。1人でやらなきゃいけないのですか?」


ミカエル「ふふっ、そういうと思ったわ。でも大丈夫。天使のお仕事は大変だから、誰かとチームを組んでお仕事ができるのよ。クピドの時は体力と心の両方の成長をしてもらうため、1人でやってもらってたけど。天使以上は、ランク関係なしに仲良しな友達と協力してお仕事してね。あ、別に1人でやりたいなら1人でやっても構わないけどね」


優唯「やった~、凛ちゃん。一緒にやってくれる?」


凛「いいわよ」


ミカエル「嬉しいでしょ、凛? 優唯が天使に昇格するのを待っていたものね」


凛「はっはい……/////」


マナー「おおっ!! 凛たんが素直に答えただと!? やべぇよぉ。これちょっと掲示板にスレ立ててこねえと。この感動をより多くの人に…」


凛「立てんでいい!!」


マナー「おお、怖い怖い」


その時、透き通った鐘の音が天界に響き渡る。


ミカエル「あら?ちょうどお仕事がきたみたいよ。このホーリーベルが鳴ったとき、人間界で何か起こった時なのよ。この音だと恋愛関係かしら」


優唯「あの、このお仕事は誰がやるとかミカエル様が決めないのですか?」


ミカエル「そうね。クピドの時はキューピッドの指示で動いたものね。このベルの音に気付いて、行きたい人がやればいいのよ。誰か、なんて決めたら喧嘩になってしまうもの。さぁ、早く行かないとお仕事取られちゃうわよ?」


優唯「そうですね! 凛ちゃん急ごう!!」


凛「言われなくとも準備は整っているわよ!」


優唯・凛「ミカエル様、行ってきます!!」


ミカエル「気をつけて、行ってらっしゃい」


またたび「優唯ちゃ~ん、待ってよ~」


マナー「オレっちを置いていくなんてひどいぜ、ハニー!!」


天使2人とそのパートナー2匹は地上へ降りて行った。


ミカエル「紗理奈、あなた達は優唯達と行かなくて良かったの?」


紗理奈「ええ、今回は見守る役に徹しますから」


ガオル「優唯のお手並み拝見といくか」


紗理奈、ガオルも地上へ降りて行った。

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