小説家になろう「書き出し祭り」 概要・感想・まとめ

第二十一回 書き出し祭り 本文感想(第二会場)

気になった作品の感想のみ書いています。

もちろん、私の感想が書いていないからといって駄作というわけではありません。


2-01 シナスタジアの聖女、今日も最前線を征く

なるほど。興味深く拝読しました。シナスタジアとは共感覚のこと。

色が見えるだけでなく形も変化するという点にオリジナリティが感じられます。

聖職者でありながら俗物の集まりと、純白の勇者との対比が印象的でした。



2-02 公爵令嬢はバックレる

話は面白そう。物語の背景がしっかりしていて安心感があります。今後の展開が気になる作品。

まったりしてるなあと思ったら後半でスピード展開。ただしそう見えるのは幾つかの説明を(意図的に?)省いているからかも。



2-05 虚界本紀 機神サカトケ

不穏な雰囲気をうっすら感じます。

ボーイ・ミーツ・ガールものって少年はどこにでもいるごく普通の少年なのに対し、少女のほうは謎めいていたり神秘的だったり不思議な能力を持っていることが多いよねとふと思いました。



2-06 勇者でしかなかった女は、孤独な魔王と結ばれない

めっっっっちゃ良!!!

好きな人、癖に刺さる人、絶対いると思います。

ここまで読んだ他の作品は展開がスピーディなのに対し、こちらの作品はじわじわと勇者の意識が変化してゆく様子を丁寧に描いていて、ゆっくりと逃げ道を塞いで行く様子がたまりません。

しかもループものとな!? 救いがあることを願わずにはいられません。

勇者という立場ゆえに失ったもの。取り上げられたもの。魔王という立場ゆえに失ったもの。「全てを手に入れたくなった」という動機に説得力があります。



2-09 グリモワールの愛し子

個性的な文体ですね。こそあど言葉が多い印象。

わかりやすく説明するよりは頭の中のイメージを書き出して並べることにウェイトを置くタイプ。見せたいものがいっぱいあるんだなと思いました。とりあえず、主人公以外の登場人物全員何者。詰め込みすぎだけど話は面白かったので投票候補。

ロード・オブ・ザ・リングの本版かな。猫はかわいい。



2-10 幼馴染のはだか、見えちゃうんですけど

とりあえず視点とキャラの漢字や表記は統一しよう(複数箇所)。

それはさておき、あらすじからはわかりやすい面白さを感じる。これはきっとエンタメ天才の所業。

「本文ここから始まるんだ!?」と少し意外だったけど、これもまたわかりやすくていいのかも。もも、さくらと花が咲き乱れるのが示唆的で実に良い。天才の発想かな。

タイトルに「目薬」の文字があるとたぶんもっと良かった。



2-11 鬼神と、その妻 ~滅びゆく王国に忠義を尽くす英雄とその愛妻が非業の死を遂げるまで

あまりの展開に呆然……。

新郎新婦とも、いったいどんな事情を抱えているのでしょうか。

そしてタイトルににじむ壮絶さが気になります。いったいどんな話になるのか。

丁稚について改めて調べてみましたが、その壮絶さに驚きました。「私は人の血なんて料理をしていて指先を切ってしまった時くらいしか見た事がありません」の部分の意味がわからずいろいろと考え込んでしまったのですが(主人公女性ですよね?)、もしかしたら「他人の」って意味かなあと。

文章は読みやすかったです。



2-13 島流しされた濡れ衣令嬢、絶海の孤島で赤竜と出会う。

絶海の孤島に島流し、というのがエグくて好きです。

スローライフになるのか、ドタバタ系か、コメディか、それともテイマー路線か、ざまぁ系か。この時点ではまだわかりませんが、スローライフならこの先面白くなりそうな可能性を秘めている作品だと思いました。

欲を言うならもう少し先まで、「こうしてアミュレットの第二の人生は奇妙な形で幕を開けたのである」あたりまで読みたかった。

そういう意味では会話のテンポや物語の進行などで勉強になる点が多かったです。



2-15 仙女の愛し子は嗤う

不穏さがとても良いですね!

文章も読みやすくわかりやすかったです。

「さて。〈仙女の愛し子〉はその名の通り仙女様の御子であられる。ゆえに人間の肉親など存在しない。存在していてはいけない」という部分にゾクリとしました。

こういう突き抜けた価値観、いいですよね〜。

李鴦と琉鴛が物語の中でどのようなキーとなってくるのか、そのあたりが気になりました。



2-19 自称カミサマと往くVRMMO終末紀行

センスの良い作品だなあ。

というか全体的にうまい。「読ませる」作品だと感じました。

まずコンセプトがはっきりしていて素晴らしい。

プログラムが自我を持つという話はどこにでもあるけれど、その「瞬間」を陳腐化させずにここまで読ませる筆力がすごい。

モブに過ぎないアントンがどういうきっかけで自我を得たのか、そこが気になるところ。



2-20 ミーミル、歯を食いしばって

話は面白そうだと感じました。展開のテンポが良く、切られているところも絶妙。展開のペースや情報量については完璧だと思ったほど。

キャラの配置やキャラ作りがうまいです。おねショタかな。

攻撃的なタイトルながら一応暴力シーンはないけれど、安心して読めるかというとそうではなく、今後どうなるかという保証もなく、それゆえ避けたい読者はいるだろうなとは思いましたが、書き手は納得ずくでこうしたのだろうなとも思いました。



2-21 人工魔女

少なくともこの書き出しだけでは「面白そう」「続きを読みたいかどうか」を判断する材料が自分には足りないなと感じました。2、3話読んでみて始めて判断できる類の作品のように思えます。同時にそこまで読者を引っ張れるかどうかが課題とも言えますね。

ただそれは決して作品としての欠点ではなく、配分やペースはこのままで何ら問題はなく、単に書き出し祭という場にそぐわないというだけのことだと思いました。



2-22 父の遺書が異世界転移ライトノベルだった件

面白かったです! 続きが気になりました。



2-23 鉄錆のモビーディック

(たぶん)世界観の作り込みがすごい……作品なのだろうけど、残念ながら(費やしている文字数の割に)なかなか設定を飲み込めなかった。感想は理解できた人に譲ります。

第1話で何を説明して何を説明しないのか。自分でも考えるきっかけになりました。



2-24 ガール・ミーツ・ミート

異色の作品。楽しく拝読しました。

絵文字で赤いダイヤ♦が使われているのが印象的で、なるほどこういうのもありだなと。

「肉を磨く」を「ルビー」に関連付ける発想の柔軟さが素晴らしい。

最後の一文がやや取ってつけた感あるなあ、と思ったけれど、最後に物語のテーマを一言でまとめているのだ思えば、これもまたありかな。

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