第10話 戦い
僕はアッシュとエルザと共に迷宮の通路を進んでいた。通路は横幅が広かったので三人で歩いても窮屈さを感じることはなかった。
視界も開けているし、壁には光を放つランプの様なものも取り付けられている。
これならどこからモンスターが現れても対処できる。
僕はアッシュから渡されたブロードソードを手にしながら、緊張気味の顔で歩いて行く。
自分には戦う力があると理解していても、相手は人間ではないモンスターだし、怖いものは怖いのだ。
まあ、アッシュとエルザは何度も迷宮に潜ってるって言うし、自分の力にも相当な自信を持っているみたいだから安心して頼って良いんだろうけど。
でも、二人の足を引っ張るのだけはご免だ。
僕が神経を研ぎ澄ましながら歩いていると、通路の向こうから何かが現れた。背丈は子供くらいしかないが、体に付いているのは小鬼の顔だ。
こいつはゴブリンで間違いない。
しかも、ぞろぞろと何匹も現れたし、その手には粗末な武器も握られている。ゴブリンの武器には毒が塗ってあることもあるし、油断はできない。
僕は鞘から剣を引き抜いた。
アッシュは既に剣を構えているし、エルザは杖を掲げている。
すると、ゴブリンたちは一斉に攻撃してきた。
アッシュは二の足を踏むことなく、剣を振り上げて突進していく。エルザはゴブリンの集団に炎の球を放った。
炎の球はゴブリンの足元で爆発する。その爆発をまともに食らったゴブリンたちは吹き飛ばされた上に火だるまになった。
それをアッシュが的確に切り伏せていく。
僕もアッシュの後ろに回り込もうとしたゴブリンを剣で切り裂いてやった。嫌な手応えが腕に伝わって来るが、躊躇ってはいられない。
僕は次々に血を求めているような剣を振るって、ゴブリンたちを仕留めていく。
そして、五分もすると、ゴブリンたちの集団はみな床に倒れて動かなくなる。
「やるなぁ、ユウヤ。ちょっと心配していたが、杞憂だったみたいだ」
アッシュは僕の背中をポンっと叩いた。
「たいしたことじゃありませんよ」
僕はゴブリンたちの屍を見ながら言った。
幾ら相手がモンスターとはいえ、その命を絶ってしまうのは気分の良いものではない。
もっとも、そんな甘いことを言っていたら死ぬのは自分だけど。
「謙遜するなって。それだけの剣の腕を持っているなら、俺も安心して背中を任せられるな」
「だと良いんですけど」
そんな風に信頼されると、それを裏切ってしまった時が怖い。
「もっと自信を持ちなさいよ。それに、戦いはこれからなんだから、もっと気合を入れてもらわないと」
エルザが僕の心を叱咤するように言った。
それから、僕たちは目的のゴブリンの姿を求めて更に迷宮の通路を進むことになった。
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