不登校からの8年の経緯

三男の始まり

 要領が良くて運動神経が良くて、成長発達になんの心配もない。

 そう思っていた三男が不登校になったのは小学校2年生の始めだった。


 2年生の始業式は金曜日だったと思う。普通に登校し、普通に帰宅した。新しいクラスについて聞いたかもしれないが、私の記憶には残っていない。

 とにかく始業式のその日、三男について私の記憶に残るような出来事や会話は一切なかったのだと思う。

 しかし週末の休み明け、三男は通学路に出た途端に立ち止まってしまった。青ざめて表情はなくただ立ち尽くしていた。

 

 なぜ行けなくなったのか全く心当たりがなかった。本人でさえ「今になってもわからない」らしい。

 

 不思議なのは春休み前のことだ。

「まだ学校行っちゃダメ〜?」

 インフルエンザに感染した三男は数日前からから出席出来ずにいた。

 高熱が出ていたときは、ハフハフと苦しそうに大人しくベッドに横になっていたのだが、薬が効いて熱が下がると退屈になったようで、何度も私に聞いてきた。そのたびに私は「まだダメよ。」「もう少し」と言い聞かせていた。

 医師の許可を得て登校したのは2学期の終業式だった。もちろん久しぶりの学校に楽しそうに「行ってきます」と言い、普通に帰宅していた。


 不登校になってからというもの、あの時の「まだ学校に行っちゃダメ?」と何度も聞き、早く学校に行きたい気持ちを目一杯表していた三男の姿を、たびたびおもいだしては何とも言えない気分になる。

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