エルアラメインのダンジョンにて 南との話

休息の間で休んだ


 俺は南に聞いてみたい事があった


「ねえ、南、聞いていい?」


南は教えてくれるだろうか?


 いや、教えてくれるなら、南は知っていて教えてくれなかった事になる


 だけど、俺は知りたい事があった


 俺には南しかいないのだから


 それは俺が激しく嫌われる人間だと言う事だ。何故なんだ?


「俺、なんで、こんなに嫌われるんだろう?」


「それは簡単な事よ。高野君、空気読めないから」


「そんなに読めないのかな」


「全然だめよ。高野君、西野君や私以外の人と10分以上喋れる?」


「無理」


「でしょ、普通の人は軽く1時間は話せるわよ。島村君なんか、


 しょっちゅう泉さんと1時間位喋っているわよ」


「す、凄い」


泉はクラスで南と人気を二分する美人女子だ


 学校始まって以来の才媛との噂も有名だ


「島村君は相手の好む会話を提供できるんの。


 相手を見て、相手を観察して、表情を伺い、


 相手の感情を読む。それが空気を読むってよ」


「俺、できない。相手が何考えているかなんて全然わからない」


「そんなに難しい事じゃないわよ


 ただ、人と毎日接していないといつまでたっても成長しないわよ」


「俺、友達いないから......」


「それに、ミリオタ話やアニオタ話を女の子の前でしたり、


 相手が喋っている間に違う事を話したりする事も駄目よ」


「俺、そんなの気にしないでいつも話てた」


「私も子供の頃そうだったわよ。でも、中学校に入る頃には変わったわよ」


「でも、それがそんなにみんなの気分を悪くする事なのかな?


 俺の受けた仕打ちはそんな事の対価だったの?」


「高野君のは違う、高野君はみんなのプライドを傷つけたんだよ


 島村君でさえ、高野君を嫌っていた。何故だかわかる?」


「わからない」


「すごく簡単な事なんだけど......


 高野君、1年の時の中間テストで全科目ほとんど100点だったでしょ?」


「う、うん。俺、勉強は子供の頃から好きだったから」


「それが島村君達のプライドを傷つけたの


 彼ら差別はしないわ、ただ、区別はする


 結局彼らは自分達が優秀な事を理解してそうでない人を蔑んでいるの


 でも、高野君はその彼らの重要な優秀なポイントを犯してしまった


 劣等な高野君がテストで100点。高野君、学校で勉強した事あるの?」


「ないよ。俺、勉強は趣味だから、学校であまり勉強はしない


 ちょっと前まで大学の勉強を家で少ししたけど、


 そんなに勉強しなくても、多分、大学でも100点取れる」


「高野君、今から大学の勉強してたの......


 じゃ、中学生の時は?」


「高校の勉強を少し」


「高野君、天才なんだね。銃の事や軍事の事だけじゃなくて、


 そこまでとはね。私も悔しい」


「でも、南だって、みんなだって、ほとんど100点じゃ無いか。何故俺はだめなんだよ」


「私達は今、必死に学校で勉強して、家で予習復習して、


 皆との会話をして優等生をした上で100点近い成績を出してる


 高野君、テストだけだと泉さんより点数高いんでしょ」


「それは知らない」


「事実だと思う。皆、高野君がインチキをしてるんだと言っていたから」


「そんな、俺そんな事しないよ」


「それは私が良く知っている。高野君は正義感が強い。絶対不正なんかしない」


「でも、解らないのは何故須田達は俺をいぢめるんだ


 勉強で負けたんなら、勉強で勝てばいいだけじゃ無いか?」


「それは簡単にできないの。泉さんでさえ負けちゃうのよ


 他の秀才は血の滲む様な努力をして高野君に簡単に負けたのよ


特に須田君が何故あんなに高野君をいぢめたのかわかる?


 須田君の両親は以外と教育熱心でね、


 勉強でなんとかお前に勝てといつも言われていてるの


 彼の両親も高野君に負ける事が許せなかったのよ


 要するに須田達は頼むから勉強するなと言いたかったのよ


 高野君はみんなからいぢめられたと思っていたかもしれないけど、


 優等生達は高野君にいぢめられている様な状態だったの


 高野君のおかげで、みんなの自信が崩壊したの


 高野君はいぢめられても一向にテストの点数変わらなんでしょ?」


「俺、孤独だったから、集中力がまして、


 勉強とミリオタとアニオタ位しか興味持てる事がなくて」


「本当に変わっているね、高野君、


 ただ、普通の優等生の様に振る舞えたら、


 島村君のポジションは高野君だよ」


「俺には無理だよ」


「まあ、それはそうなんだけどね


 高野君は優秀な点と残念な点のギャップが凄すぎるの」


「俺、変われるのかな?」


「私にはなんとも言えない。でも、高野君が変わろうとするなら」


「わかった。俺、普通の人になる」


「うん、頑張って、目指せ普通の人」


「うん」


俺は気分が晴れた。南との会話は南には全く易がない事だったけど


 南は親身に教えてくれた


 その日は南が料理をしてくれた


 たらふく食べて、疲れてそのまま寝てしまった

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