南が俺を呼び止めた


「高野君、どうして行ってしまうの?」


「......」


「高野君、戻ってきて」


「俺は須田に殺されかけた。怖くて一緒になんていられない」


「私達が守るから......」


俺は思わず笑みが溢れた。気持ちは嬉しいが、今の俺には無用だ


「南、さっきのドラゴンを見たろ、俺は一人で大丈夫だ」


「大丈夫じゃないわよ」


「......」


「あなたのその目、心を閉ざしてるでしょ」


「......」


確かに、そうだろう。それだけの事がおきた


 俺は南以外信じられない


「何があったの?」


「アルナロックの試練のダンジョンに落ちた。そして死線を彷徨った」


「だから心が荒んでしまったの?」


「いや、ダンジョンはそれ程でもなかったよ」


「じゃ、何が?


 あなたのその目、そんな目見た事がない


 あなたは変わってしまった。いぢめられている時とも違う


 冷たい目。高野君の目はそんなんじゃない」


「人は変わるだよ。俺がどうやって生きる糧を得ていたかわかるか?


 俺は体を売った。それしか方法がないからな、


 惨めだった。大切なものを売り飛ばしたんだろうな、俺」


南の目に涙が溢れる、そして彼女は俺の頬を平手で叩いた


 かなり大きな音がした


「何をしてるの高野君は、あなた自分が何をしたかわかってるの?」


「わかっているさ、プライドと引き換えに金をもらった」


もう一度南は俺を叩いた


「ひどいよ、何故戻ってくれなかったの?


 何故そんなに自分を追い詰めるの?」


「南にはわからないよ。俺の孤独も辛さも」


「分からないわよ。でも、あなたの事が心配なの」


「南みたいなリア充にはわからないよ


 俺の様な出来損ないの事なんか」


「ええ、解らないわよ。あなたみたいな天才の事は


 でも、あなたには友達がいるの。それはわかるの」


「......友達......」


俺だって欲しい、友達、かつての親友西野はいい奴だった


 いぢめられてから、あいつは俺から逃げたが


「私達と一緒に来なさい」


「いやだ」


俺ははっきり言った


「じゃ、じゃ、私を一緒に連れて行きなさい」


「死ぬかもしれんぞ」


「いいわよ。私はあなたが自殺した時、


 あなたを助けなかった事を後悔したの


 もう、私はあなたを見捨てない、だから」


「......」


「高野君には私が必要なの、そうなの」


俺は困ったが、実のところ嬉しかった


 幼馴染の南、今の南は駄々っ子みたいだ


 それは小学生の頃の南と同じだった


「わかった。来い」


俺は南を連れていく事にした

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