魔法少女アームドフォート~空かける魔装の少女~

月天下の旅人

魔法少女、大地に立つ

森島もりしま……森島ほむら君?」


そう呼ばれた青年は、名前を呼んだ少女の顔を見やりながらいった。


真由香まゆか……どうしたんだ?」


「最近発掘された遺跡の中に、今の技術じゃ作れない機械があったという話は知ってるわよね」


幼なじみらしき少女にそういわれ、焔はこう返す。


久留美くるみ母さんが海底から発掘したって奴か。でもそれがどうかしたのか?」


「その機械について分かったことがあるの」


焔は真由香に切り出された話題の意図が今一掴めないでいた。


「分かったことって何だ?」


「メッセージが残されていたのよ。しかも自動翻訳までされてるみたい」


そんな真由香に焔はまだ首をかしげていた。


「メッセージがどうしたってんだ?俺に何か関係あるのか」


「これは知るべき人間が限られているのよ。パニックを防ぐ必要があるから」


真由香はそういうと、スマホを取り出した。


「このメッセージを見ているということは、何かの切っ掛けでこの装置が発掘されたということだろう」


音に連動する音波の波だけが映像になっているため、声の主の姿は分からない。メッセージが間違って伝わらないよう、意図的にこうしたのだろうと思われる。


「これは……この遺跡に残されたメッセージなのか!?」


彼の声に反応した訳ではないが、メッセージはこう続けた。


「我々『ヤーファーブ』はかつて『ガイア』への移住権を巡って争った……特に『奴ら』は危険だ、どんな形で報復してくるか分からない」


「火星は既に滅びへと向かう……だが、地球へ降りることが容易でないのは『大気圏』があるからというだけだ。つまり『奴ら』が生き残っている可能性は大いにある」


そのメッセージを聞いて、焔は驚いた。


「『ヤーファーブ』だって!?もしかして聖書の神様って……」


「ええ。恐らく、火星移民の歴史を神話という形で残した物こそがいわゆる『聖書』だった可能性がある」


真由香の推測に、焔は驚きを隠せないといわんばかりにこういった。


「神として信仰されてた存在が人間の祖だった可能性……世界がひっくり返えるな」


「火星移民の神話に『ヤーファーブ』が居て、聖書にあるのはその神様の神話だって可能性もあるわ」


そんな真由香に焔は落胆の表情でこう返した。


「つまり真相は闇の中ってことか……まあともかく『ヤーファーブ』が恐れた『奴ら』が報復してくる、と?」


「そういうことよ。そして私達は祖先が恐れた『奴ら』……それに立ち向かう人を集めているのよ」


「でも『ヤーファーブ』との争いは移住権だろ?話せば分かったりしないのか?」


焔の疑問に真由香は頷きながらも、その目を見やりながらいった。


「その言葉は半分間違っていないわ。私達にアームドフォートの使い方を教えたのは」


その言葉を謎の女性が遮った。


「それ以上はいいわ。私はエイシェット、ヤーファーブの血を継ぐもの達に『奴ら』と呼ばれる者の一人」


「そんな君が何故僕達の味方をするんだ?」


焔の疑問に、エイシェットは首を横に振った。


「別にあなた達の味方をするわけじゃない。あなた達が戦わなければならないのは、怨みを今なお持ち続ける『災厄』といっていい」


そしてエイシェットは一呼吸置いてこう続けた。


「私達は静かに過ごしたいだけ、UFOの中も、意外と悪くないものよ」


「そういう物なのか」


今一合点がいかないという表情の焔を見やりながら、真由香は焔にブレスレットのような物を渡す。


「そしてこれがアームドフォート……あなたは久留美の息子である以上、戦う運命にある」


「何で……君はどうして戦えるんだ!いくら『奴ら』が人々を脅かしていても、納得できる理由があるのか?」


「誰かがやらなきゃいけないことなのよ。それが私か、他の誰かかってだけ」


真剣な表情の真由香に、電話が掛かってくる。


「真由香、『奴ら』が来たわよ!」


「イライザ……そうね、『奴ら』は待ってくれないわよね」


そういうと真由香はブレスレットを構える。


「甲着!」


それを見た焔もまたブレスレットを構え、真由香を真似する。


すると焔の身体が光に包まれ、徐々に女性の身体へと変化している。


身体付きが全体的に滑らかな感じへと変化し、筋肉が落ちて脂肪が付いていく。


バストとヒップが膨らみ、ウエストは引き締まっていく。


こう書くと身体能力は落ちていそうで、実際その通りではある。


しかし落ちた身体能力を『アームドフォート』がカバーできるので、

それは些細な問題になる。


男性器が消失すると同時にインナースーツがまず消失する。


そのため外部からは性器の変化は確認できないが、焔は感覚から性器までも変化していることを確信する。


そして男性としての焔の面影を残した女性に、パワードスーツが装置されていく。


ここまで書いたが、パワードスーツの装着は実際のところコンマ数秒の出来事である。


しかし異なる性別に変わるというのは負担が大きいことなので、その際に体感時間を長引かせているのだ。


「女の子になっている?どういうことなのか説明して」


大地に立った焔は、思わずそう問いただしたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る