第23話 試験会場での再会

アーシア試験会場


試験官3人で試験についての最終確認をしていた。


「しかし、エルマ、それいいのか?」

「エルマさんは第1次の時には異様に難しくしました、なのに今回は逆ですね」


カバムにオルイアは驚いている様子であった。


「良いんだ、何の問題もなく試験を終えるためだ」

「......それでいいのならエルマさんの考えを尊重しますよ」


◆◇◆◇



夜のネレイアイとの会話から日は昇りついにその日は来た。


試験当日少し早めになったがアーシア駅でみんなを待っていた。


「(戦いあうらしいが......細かいルールはどうなるんだ?)」


色々考えていると最初に現れたのはガルフだった。


「昨日電話で教えてくれて助かったぞ」

「家族の様子はどうだった?」

「第1次試験を突破したこと喜んでいた、我も含めて皆を応援していると言っていたぞ」


ガルフはリフレッシュできたようだった、そしてさらに待っていると......。


「クラトス、お待たせしてしまったかしら?」


アリスやグラデルといった宿屋組もドネイ以外は集まってくる。


「ドネイは?」

「会場見てくると、ははは、ドネイは真面目だよ!」

「ちゃんと休めたか?」

「ははは!クラトスのおかげだな!アリスも遊びをせがんだりしなかったぞ!」

「えらいでしょう?クラトス?」

「はいはい、えらいえらい」


アリスはクラトスに褒められるとほほ笑んだ。


「うぅむ、だいぶ板について来たな」

「ははは!まるで親子だな!」

「まだ結婚もしてないつっーの」


ガルフとグラデルが話しているとラナもひょっこりとグラデルの後ろから顔を出す。


「クラトスさん!私だっていい子だったんだからね!」

「ラナさん、もしかして妬いたんでしょうかぁ」

「ナイミアさん!」

「わわぁ!」


ナイミアはラナが妬いたことを言ったためにラナに睨みつけれてしまう。


「みんあ、会場に魔導師達がもう集まってるみたいだ!」


ドネイが走ってきたどうやらそろそろ試験の始まりらしい。


「おうし!行くか!」


クラトス一行は試験会場まで向かうのであった。



◆◇◆◇


試験会場には第2次試験を受けるための人でごった返している中


「魔道協会......」


ある魔導師がそんな試験を受けようとする魔導師達を見ていた。


「我が......いや我らが受けた苦しみ......」


拳を握りしめる。


「この時の為に様々なモノの力を借りたのだ.......」


男は静かに試験会場を見つめていた。


◆◇◆◇


アーシア試験会場


中央には巨大な円を描くような広場を見下ろすように周りには観客席があり、空からは日差しが照りかかる。

なお今回の試験では観客席に座る資格がある者は試験関係者のみである。



そんな試験会場の中央に魔導師達はぞろぞろと集まっていた、クラトス一行も同じである。


「最初の頃より大分魔導師の数は減ったな」

「うむ、第1次試験で魔導師は脱落していったからな」


エルマの制限時間変更は確かに魔導師達にとって予定外でその所為で脱落していった者も多い。


「ははは!さぁて第2次試験はどうなるかだな!」


色々と話していると


「何かきたぞ!」


とある魔導師は空に指をさす


そこより現れたのは......


「さぁ。第2次試験の詳細を説明しようか!」


エルマは緑色の巨大な鳥に乗りながら上空より現れた。


そしてゆっくりと会場まで降りて行く。


「実は君たちには、サプライズもある」


エルマのその言葉に魔導師達はどよめく。


「サプライズってなんだ」


クラトスは第1次試験の事もありエルマの言うサプライズが何かとピリピリとしていた、どうせロクなものでもないのだろうと考えていたのだが......


「今回の第2次試験で選考は終了とさせていただく、つまり今回やるのは最終試験であると考えもらって構わない!」

「っ!?」


全員がどよめく、全員がこの第2次試験の後に最終試験があるものだと考えていたからだ、だが実際は今回が最終試験であると言われた。


「ようしルール説明をする......がその前にだ、みんな出てきなさい」


魔導師達が立っていた向かい側から様々な魔導師が現れる。


「今回君たちの審判をする試験官達を紹介しようか、まずは坊主頭の大男、カバム=ウロン」


「かっカバムさんだ!」

「わぁぁ!」


魔導師達が何やら話している。


「カバムってそんなにすごい魔導師なのか?」


クラトスはガルフに聞くと、ガルフは少し驚いたような顔をする。


「なっクラトスは知らないのか?最近目立ってきた魔導師であるが」

「魔道協会に関する知識は疎いんだよ」

「カバム=ウロンは闇ギルド......魔導協会が認めていない違法行為を働くギルドを何件も潰してきたBランクの凄腕魔導師であるぞ」

「ふぅん、人気そうだな」

「それはそうだろうな、闇ギルドを潰しているのだから」


エルマに呼ばれると呼応するようにカバムが吠える。


「てめら、魔導師として恥じない戦いをしろよ!」


そして続いては髯を蓄えた男が歩いてくる。


「そして次はアンサ=イーア」

「ほほほ、お若い魔導師同士の戦い楽しみにしています」


「アンサはどんな魔導師なんだ?」

「うぅむ、確かCランクの魔導師であったな」


エルマは紹介し続ける。

「次はオルイア=ゲル」


獣人の男が前にでる、


「正々堂々と戦っていただければ幸いです」


オルイアの事は少しは知っているらしく話す。


「オルイアは......Cランク魔導師であるな、犬型獣人の特性を活かして潜んでいる魔物討伐が得意だとか」


エルマ紹介を続ける。


「続いてはユノ=ノエア」


紫のローブに紫の三角帽子を被った女性が歩いて行く。


「どうもです~、怪我とかしないようにね」


軽く会釈するユノ。


「ユノはどんな魔導師だ?」

「どんな魔導師なの?」

「「教えて!」」


クラトスとラナ、その他アリス達はガルフに聞く。


「いっいや......さすがに全員は知らぬぞ」


ガルフは困っているとグラデルが説明をした。


「ははは!ユノ=ノエアはCランクの魔導師で回復系魔法を使える魔導師だ!」

「うっうむ、助かったぞ、グラデル」

「グラデルはなんで知ってんだ?」

「実は昔、ユノに会ったことがあるんだ、今紹介されて思い出した!」

「「えっ?」」


クラトスの質問に以外な返答が帰ってきて全員が驚いている中でもエルマは紹介を続ける。


「次はユエルス=ミステイン」


豪華な装いで金髪の男がポケットに腕を突っ込みながら少々偉そうに歩いてきた。


「魔導師諸君、君たちがどのように戦おうとかまわないが、試験を破綻させるようなことはしないように」


ガルフとグラデルが首を振ると今度はナイミアが説明をした。


「えっええぇと、私は知ってます......あの方はミステイン家のお人ですねぇ、最近Cランクになったばかりの魔導師です。妹さんに実力で負けているらしいですよぉ、ちなみに逃走王とか言われてましてぇ、逃げる事とゴマをすることが得意だそうですぅ」

「なんでそんなクソどうでもいい事まで知ってんだ......」

「ひぃぃ、なんでドネイさんにそんなことを言われないとぉ」



エルマは最後の試験官を紹介しようとしていた

「もう最後だ、試験官最後の一人を紹介しよう」

「(最後......ネレイアイだな......)」


昨日の夜にネレイアイが語っていた、嘘でなければ試験官として紹介されることになるだろう、どのように人前で現れるのか、わくわくしていたのだが......


「しかし、本人のどうしてもという要望により今は紹介できない、名前もここでは伏せさせていただくよ、紹介はまた後程」

「ほう、気になるな......うむ?どうしたクラトス?」

「クラトス?何だかしょんぼりしているわ?」

「いや、俺も最後試験官は気になるなって思っただけだ......」


クラトスは肩透かしを食らった気分だった、これが意図的なものなのか偶然だったのかは知らない、ネレイアイに良いように扱われているなと内心思ってしまったクラトスであった。


「では第2次試験......いや最終試験の内容を説明しようか」


最終試験の説明と聞いて魔導師達は集中して内容を聞く。



「まぁ第1次試験の時ほど難しくはない、第1次試験中に集めたPポイントの近い者同士が戦うただそれだけだ」

「(やっぱりシンプルだ......4年前のと同じ感じだな)」


クラトスはそのように感じた。


「今回は僕を含んだ計7人の試験官がそれぞれ試合を担当して審判をする、また――」


エルマは指を鳴らす。すると観客席には魔導師達が現れた。


「そこの魔導師達も試験官はではないが審判として働いてもらうことになっている」


多くの魔導師達の中には見慣れた魔導師の姿もいる。


「ナシアもいるな」

「うむ、ナシアも他の魔導師に混じっていても違和感は......」

「いや、あるな......」

「うむ......固いな......」


ナシアーデは他の魔導師と同様に平然と立っている気ではあるものの、どこか固く、自然体とは程遠い石のように立っていた。


「今回は度が過ぎた戦いを行っていると審判が止めに入るからね?今後注意をするように」


エルマはそのように警告した、それは全員の魔導師への警告だが特定の存在での警告でもあった。


「アリス、対戦相手を殺してはいけないからな?」

「わかったわ、クラトス、殺さないように手加減すればいいのよね?」


クラトスがアリスと話をしていると。


「そしてだ、今回は対戦相手と一回勝利すれば最終試験を突破とする」


突然だった、まさか一度だけで良いとはだれも思わない、エルマは何かを企てているのではないか、そう考えるのが第1次試験を突破したものの総意であった。


「なんと!」

「っ!」


ガルフとラナは驚く、いやこの場にいる者全てが驚いている、どうあがいても第1次試験を考えたような男と同一人物は思えなかった。


「あぁ、後敗者復活戦もあるからチャンスは2度ある」


エルマがそのように言ったことでより会場は沸いた。


「わぁ、ここここんなのいいんですかねぇぇぇ」

「ははは!第1次試験を考えた者と同じとは本当に思えないな!」


ナイミアとグラデルが話している時。

クラトスはたまたま辺りの観客席を見ていた、そして


「ブッ!」

「む?」


クラトスは一瞬目を逸らしたが既に遅い、目をあわせてしまった。


「どっどうしたのだ?」

「なんでアイツ!あんなに切れてんだ!」


ガルフは突如驚いたクラトスが気になった。


「一体何が?」

「あの、紺色の髪の目つきの悪い男が俺を睨みつけているだろ?」

「......たっ確かにこちら側を見ているな......彼を知っているのか?クラトス?」


その男はすさまじい殺気と戦意をクラトスにぶつけていた。





クラトスを睨みつけている男ゼオス=マルウォルス。


「......クラトス、おのれ」


凄まじい殺気をクラトスに放つ。


「今度こそ......キサマを倒して見せるぞ!!」


固くなっていたナシアーデは少し慣れて自然体になっていた頃ゼオスを心配してチラチラと見ていた、ナシアーデは案の定ゼオスがクラトスに切れているの気が付き、急いで走り寄る。


「だっダメよ!ゼオス!」

「黙れ!キサマ奴がいること知っていて黙ってたのか!」

「あったり前でしょ!あんたに話したら試験がめちゃくちゃよ!」

「うるさい!黙れ!今すぐに――」

「わぁ!みんなゼオスを押さえつけて!」





ゼオスとナシアーデが何やら揉めていると他の魔導師もその場を納めようとゼオスを抑えようとする、そんな様をクラトスとガルフ他の魔導師も半ば困惑気味に見ていた。


「なっ何なのだ、奴は?」

「俺が4年前に受けた魔導師試験と同じ時期にアイツも受けていたんだ」

「4年前......というとナシアも受けていた試験であるか」


4年前にクラトスは当初はナシアーデの付き添いで試験会場まで行ったが、ナシアーデの願いで結局試験受けていた。


「アイツの名前はゼオス=マルウォルス、試験中、俺とは殺し合ったり、協力関係になったりと......色々あった」

「なっそんなことが!?しかし、なぜあそこまで敵視されているのだ?」

「知らん」

「知らないとは......しかしあれは常軌逸しているぞ、何か心当たりは?」

「心当たりか......」


「う~ん」


クラトスは考えるが......


「いや、何も思い浮かばんな」

「......本当であるか?」


ガルフは問い詰めるように聞くがクラトスが思いだせないのなら仕方がない、ガルフはクラトスとゼオスに何があったのか知るのを諦めることにした。


「何やら観客席の魔導師達が揉めていた様だが......大丈夫なようだね......では続きの話をさせていただく――」




最終試験はまだ始まってはいない――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る