6月14日の赤ずきんちゃん

狼さんと赤ずきんちゃんが居ました。

赤ずきんちゃんは、今日も狼さんに抱っこされてうとうとと気持ち良さそうに目を閉じています。狼さんの呼吸の音がまるで子守歌のようだわと赤ずきんちゃんは思っていました。


どれくらい経った頃でしょうか。赤ずきんちゃんは、首すじになにか温かいものがあたるのを感じて目を覚ましました。次に、鋭いものがたくさん、ちくんと首にあたります。

途端に赤ずきんちゃんは悟りました、これは狼さんの大きなお口です!狼さんは赤ずきんちゃんを食べようとしているのです!


まだ、食べられるわけにはいかないの!

赤ずきんちゃんは少し身動ぎをして、尋ねました。


「狼さん。なにをしているの?」


すると、狼さんは驚いて口を放しました。


「首を冷やすと風邪をひいてしまうから」


どうやら、赤ずきんちゃんが風邪をひかないように温めていたのだと言いたいようです。


「そうなの?ありがとう狼さん」


赤ずきんちゃんは、そう言ってまた目を閉じました。

すると、また狼さんのお口が首をくわえます。


「ねぇ狼さん、くすぐったいわ」


身体をぷるぷると震わせて笑うと、狼さんはまた放れました。


「ごめん」


狼さんは素直に謝ります。そうして、赤ずきんちゃんの背中を優しく撫でてくれました。もうお口は開かないようです。

大丈夫そうだわ。そう思った赤ずきんちゃんは、狼さんの手があんまり優しくて心地よいので、今度こそ寝入ってしまいました。


目を覚ますと、赤ずきんちゃんはやっぱり食べられていませんでした。狼さんは相変わらず抱っこしてくれたままです。


「起きた?」


狼さんは赤ずきんちゃんの耳元で訊きました。


「…ぅん」


赤ずきんちゃんは目をこすって、狼さんを見上げました。そこには、ちょっと気弱な優しい狼さんの顔。

そのうち……食べられちゃってもいいかな?そう赤ずきんちゃんが思ったことは、狼さんには当分の間、内緒です。



おしまい。

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