第10話 ジャヴェル村編 同居人

俺はあの状況を何事もなくやり過ごしながら案内をしてもらっていた。でも1日じゃ覚えきれん。っというわけで今日は解散となり自分の部屋に戻ってきた。そして先程支給してもらった服に着替えてベットに寝っ転がった。


あーなんか疲れた。天井を見つめて今この時この場所を確認する。やっぱ夢ではないんだな。たまにこれが現実かどうかわからない時がある。深いため息を吐いたのと同じタイミングでドアを開ける音がした。


「あー、あなたが新しくきた人ですか。今日から同居人のポルクです。よろしくお願いします。」


俺は急いでベッドから這い上がり、ポルクと向き合う。


「はじめまして。レイです。よろしく。」


見るからに年下?かな?身長がおそらく120くらいのぽっちゃり眼鏡君だ。


「失礼ですが、どこの種族ですか?普段は聞かないですが一緒に住むなら知っておいた方がいいとおもいまして。」


「あ…ああ。そうだね。確かに。えーとね。龍神族なんだ。」


「…それはまた。気高いおかたでしたか。私めはドワーフ族で…」


「気高い?なんで?俺はそんな大した事ないから。記憶喪失でこの村に来て初めて自分の種族を知ったばっかしだし。」


俺は慌てて説明した。


「そうでしたか。いろいろ訳ありなんですね。まあ、この村にいて訳ありじゃない人の方が少ないですがね。」


この子本当に子供か?


「ドワーフ族だっけ?じゃあ見た目と年齢は比例しない?」


「そうですね。私もまだ子供ですが、大概、下に見られます。私は今年で15です。」


「うそー!!俺より年上か。まあ、俺は実際の年齢わかんないんだけど12歳にしてる。」


「確かにそれぐらいに見えますね。」


「なら、喋り方もうちょいくだけない?なんかかたっ苦しいのは苦手で…。


「そうですか?初対面は誰にでも大概こんな感じなんで、慣れれば変えます。レン君しばらくは我慢して下さい。レン君は今の感じで気にしないので大丈夫ですよ。」


「名前レイです。とりあえずわかりました。」


なんかクセのある人だな……。ハァー。


「それは失敬。因みにその右眼は怪我か何かですか?魔法陣が書いてあるようですが?」


「ああー、これは気づいた時には着けてて、今は龍人の眼の力がまだ制御できないからしてるんだ。」


「そうですか。ところでレイ君は仕事はきまったんですか?」


「さっき狩組のテストして問題ないって言われたからそれに決まりそうだよ。ポルクは?」


「私は料理番見習いです。狩組ですか。なら仕事場でも会うでしょうね。血抜きちゃんとお願いしますよ。その辺の仕事は見習いが管理するんで。」


「そうなんだ。よろしく。血抜きは任せて。得意だから……じゃあさぁ、血抜きやる時ポルクにチェックするのお願いしようかな。他のみんなにやり方を言ったら気持ち悪いって言われて何処でやるか困ってたんだ。場所提供と、後は……慣れて!!」


「な…なな…何を急に!!場所提供!?それに他人からして気持ち悪いことをなんで僕が我慢して慣れないといけないの!?初対面だよ。初対面の人にするお願いじゃあないよ!!」


うん。良し。早速言葉使いがくずれたぞ!


「いいじゃん。同居人のよしみで頼むよ。先ずは最初見せるからさ!!」


「い・や・だ。見たくもない!!」


「まだやり方も言ってないじゃん。大丈夫だって!」


「根拠がない。まったくない。説得力ないよ!!」


すると、ドアノックの後にメグが訪ねてきた。


「入るぞ。やあ、ポルク。レイとは自己紹介はすんだのか?」


「やあ、メグさん。さっきしたよ。今は雑談してたんだ。」


ん?なんか態度が違うような……。


「よう!メグ。メグからも頼んでよ!!」


「ん?何がじゃ?」


「血抜きの話。」


「血抜き?普通に血抜き場でやればいいじゃろ。」


「それがさ、なんか俺のやり方だと気持ち悪いって言われて隠れて頼むって言われたんだ。」


「ああ。そうじゃったな。お前さんのは魔剣でできるんじゃったな。んー確かにあまり知られたくはないかの。…あーなるほど。それでポルクにお願いしていた訳じゃな?」


「そうなんだよ。血抜き具合も見てもらいたいし。最初にやった時は抜きすぎて味が悪かったからいろいろ見てもらいたいんだよね。…ポルクだけに。」


「だ・か・ら!!なんで僕だけ?」


「ポルク。すまんが頼めるかの?妾からも頼む。同居人のよしみじゃぁ。」


「んーーわかったよ。先ずは見てから決めるよ。それでどうやってやんのさ?」


「ん?簡単だよ。剣で血を吸うだけ。」


「え!?今なんて?」


「だから、剣で血を吸収するの!!血を食べる剣なんだよ。俺の剣は。」


「なんて非道な……。」


ポルクがものすごい顔で引いていた。


「便利なんだけどな〜。狩には。」


「た…確かにそうだけど…血を食べるなんて…。」


「いや殺して食べるんだからおなじでしょ!」


この価値観の差がよく分からない。


「そうだけど…そうだけど。」


うん。拉致が開かないな。俺はポルクに耳打ちをした。


「え!?なんで!わかった?………。」


ポルクは俯いてから了承してくれた。


「なんじゃ?解決したようじゃが…。」


「男同士のやり取りだから秘密。」


俺はポルクの肩に手をやってニヤついた。…してやったり!!


「ん?…そうか。まあ解決したのならいいんじゃが。…そうじゃ、そうじゃ。レイ、狩組に正式に決定じゃ。明日バルフに詳しい案内をさせるからそのつもりで頼むぞ。最初の狩は明後日くらいじゃろう。後、明日から勉強をギャルスが見る事になっておるから明日のどこかで会いにくるはずじゃ。実際、最初の授業でお前さんがどこまで常識を知っとるか次第で最初の狩は決まるからのう。」


「わかった。そうなるといつになるのかな……。」


「え!?そんな感じなの?最近の記憶がないとかじゃないの?」


「だから自分の種族すら忘れてるんだから、常識なんて全くだよ。」


ポルクがまた引き顔で俺を見つめる。


「じゃあ、何でそんなに明るいの?バガなの?」


「いや、失礼でしょ!!まあいいけど。だってわからないものは仕方ないじゃん。今こうして良い人達に巡り逢って、良くしてもらってこれ以上望めないでしょ?記憶ない奴面倒みてくれてんのに自分の殻に閉じこもってたら申し訳ないし迷惑かけたくないっしょ!!」


「良い人だなんて。なんか照れるのう。」


「いや、1番メグには本当に感謝してるよ。改めてありがとう。気絶させられたけど。不意打ちされたけど。連れ去るようにこの村に来たけど。」


俺はメグに頭を下げた。


「なんじゃあ!感謝の言葉だけで良かろうに!!あの時は仕方なくじゃ。」


「ごめん、ごめん。冗談。感謝は本当にしてる。」


「…まったく。別に良い。」


メグがなんか気恥ずかしそうに笑った。


「ポルク。なあ、こ奴、悪い奴ではないからのう。他のことも出来たら協力してやってくれ。なんかあったら相談に乗るからのう。」


「はい。任せてください。相談は逐一します!」


ありゃあ、いーねー。青春って感じ。逐一じゃなくても良い気はするが…。


「あ…ああ。頼むな。」


「じゃあ、食事行こうか!!ポルク、メグ、行ける?」


「妾は今日元々ここで食事じゃから大丈夫じゃぁ。」


「はい。僕も今日は終えてますから大丈夫です!!」


「なら、行こっか!」


3人で部屋を出て食堂に行った。


「あー!!レイだー!!」


聞き覚えのある声が食堂入ってすぐに聞こえた。目をやるとマリカ、バルフ、バギさんがご飯を貰う列の中にいた。……なんでこのタイミングで?


「やあ、マリカ。なんでこの時間にいんの?バルフも、バギさんも?」


マリカは躊躇なく俺たちのところに来て一緒に最後尾に並んだ。バギさんも呆れ顔でついてきた。バルフはため息を吐きながら睨みつきながら近づいてきた。俺が悪いんじゃないよー!


「メグもポルクもヤッホー!!」


マリカは迷いなく俺の隣にきて説明してくれた。


「私とバギは元々夜番だからだよ。夜番は夜食もでるんだよ!バルフは昼間レイのことで昼間抜けたから夜番にまわされたの。」


「なるほどね。じゃあ、これから仕事なの?」


「うん。そう。食べ終わって、準備してから休憩入れて出発するよ。」


「夜も狩に行くんだね。」


「それはそうだよ。夜行性の動物とか植物も夜しか採れないのがあるからね。」


「夜しか採れない植物?」


「やっぱそっからだよねー。成長して陽に当たるとすぐに実を作っちゃうのとかがいるんだよ。それだと栄養が減るから夜のうちに採っちゃうの。後は陽に当たると落ちちゃう実とかもね。」


「へー。そんな植物がいんだな。」


「ハァー。そっからかー。」


バルフがボヤき、バギさん、メグも一緒に肩を落としてため息を吐いた。マリカは呆れ笑いで見られた。


「し…しかたないんですよ。正直、動物だって良くわからないし。」


「じゃが、狩ったことはあるんじゃろ?」


「それは何種類かあるけど、名前わからないし。」


「え!?それだと毒があるのとかってどうしの?」 


「それはあれだよ。あれ!」


「あれ?」


「右眼。」


「そっか!そんな事もわかるんだね。便利だよねー!」


「確かに。この眼と刀のおかげで生き残れたようなもんだからね。」         


俺たちは雑談しながらご飯を注文して、ご飯を受け取り席についた。右からマリカ、俺、ポルク。向かいがバルフ、バギさん、メグの順で座った。うーん、どうしたもんか……。







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