定めに抗え——弱き者だからこそ持ち得る、ひたむきさという強さ

  • ★★★ Excellent!!!

『これは、今はまだ何者でもない少女レイネリア=レイ=ホーリーデイと、伝説を生きる神々の忘れ形見ミストリア=シン=ジェイドロザリーが、秘匿された世界の果てに至るまでの物語である』

こちらの作品のプロローグは、上に抜粋させていただいた文で締められています。

主人公であるレイニーことレイネリアは、ホーリーデイ家の次期当主。
貴族令嬢という立場にある彼女は、本来、定められた運命を全うする、籠の中で生きるような人生を歩むはずでした。
しかし彼女は、その運命に抗うことを決めます。
それはひとえに、大好きな人と共に在りたいという願いゆえのこと。
身を守る術を持たない彼女は、それでもたった一人で、先に旅立ったかけがえのない人を追いました。
やっとのことで追いついた彼女に、しかし大事な人はこう言い放つのです。
「なぜ来たの?」と——

腰を据えて、じっくり読んでいただきたい物語です。
読み応えあるストーリーはもちろんのこと、細部まで拘り抜かれた知的な文章、実在するのではと思わせるほど綿密に練られた世界観。
どこを取っても、読者さんを残らず満足させる完成度を誇るお話です。

個人的には、特に主人公レイニーの心理描写が秀逸だと感じており、移入を超えて彼女に転身してしまったかのような感覚をいつも味わっております。
レイニーは(今のところ)特別な力を持ちません。
ですがそんな彼女だからこそ、想いの成就のために何もかもを擲って走ってゆける。
それは間違いなく一つの強さであり、武に優れるとか知に恵まれているとか以上に、得難い能力ではないかと感じています。

これから二人がどんな旅路を往くのか、楽しみにしております。
皆さんも一緒に、彼女らの旅を見守りませんか?

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